試験管の中に培養された歯が入っていて、入れ歯を口に入れるような感じでポンとはめ込む……そんな想像をして、早く実現すればいいと思っていた。
この本を編集したのは神戸のバイオ・ベンチャー、アルブラスト株式会社の起業家集団。
人工的に増殖させた自分の細胞を患部に移植、失われた組織や器官、臓器を機能回復させる……それが、この企業が研究している『再生医療』。
移植するのが患者本人の細胞を培養した皮膚や骨や内臓ならば、患者にとって人工臓器を使う時の不便さがなく、臓器移植のようなドナー不足や拒絶反応の心配もない。
『未来の治療』として注目を集めているもの。
理論的には60兆個ある人体すべての細胞が人工的に培養・再生が可能だそうだが、すでに実用化しているのは皮膚と骨の一部。
まもなく実用化するのが目の角膜と歯の土台となる歯槽骨だ。
歯本体は象牙質、エナメル質などの硬さや性質の違う細胞で構成されているため、「試験管の中で歯を丸ごと1本」は難しく、歯の象牙質だけ、エナメル質だけを再生する技術が進んでいる。
これは現在の金属の詰め物にとってかわる日も近いらしい。
この本は科学の本だが、文系頭の私にもわかりやすい。
歯槽骨移植手術と羊膜(胎盤の一部、細胞の増殖を促進)を使った再生角膜移植手術に成功した人の体験談も載っている。
気になる治療のお値段は……はっきりと書かれていないが、車1台分ぐらいかかるようだ。
よく考えると、この本の編者はバイオ・ベンチャー集団、つまり再生医療技術で儲けようとたくらむ人々なので、語られているバラ色の夢を、少々差し引いて読む必要がある。
それでも、再生医療技術の今後の動きには注目したい。
『ジブンサイセイのススメ。』 アルブラスト細胞イキイキプロジェクトチーム編 幻冬舎
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