それにしても妙な展開になったなあ……。
事の始まりは3月初旬のあるイベント。
知人のメッセージブックを作る起業家が出店するので、私は応援に駆けつけました。
その時、イベントを運営していたのは「とよなかインキュベーションセンター」。
「インキュベーション」とは「孵化器」のこと。
起業家を支援する豊中市の施設です。
「毎週水曜日、誰でも参加できる昼食会がありますよ。よろしかったら、ゆっくり話しませんか?」と、職員に誘われました。
せっかくのご招待なので、節税ブログ『ふうかさんとくもいさん』のイラストを描くかたわら、手作り雑貨をネットショップで売っている友人を誘って、昼食会に出かけました。
「起業家の昼食会」。
ドキドキしながら出かけた二人でしたが。
ロビーに椅子とテーブル、お茶が置いてあるだけ。
施設を事務所にしている会員の起業家たちが次々にやってきて、それぞれにお弁当を食べて談笑する。
そんな気楽な雰囲気。
……でも、会員たちは、審査を通って入居している優秀な起業家だから、なんとなく近寄りがたい。
とりあえず、友人と節税ブログの更新の打ち合わせをしていると……。
「君ら、ここ、初めてやね」
突然、声をかけてきた人がいました。
柔道家のような体格の日焼けした男性。
名刺は『事業マネージャー』。
地域活性化のために起業家を支援するアドバイザーだそうです。
私はプロフィールと作品が入ったファイルを見せました。
在宅介護を機に、事務職との兼業から執筆専業になろうと模索中で、青色申告本を作る計画があることを説明すると、事業マネージャーは思いがけぬことを言いました。
「青色申告者やいうことは、君は、執筆事業の起業家なわけやね」
「は?」
「一昨年に青色申告の開業届出したいうことは、その時点で起業したわけやんか。豊中市の起業家の君は、この施設の支援対象になる。ついでやから、今後の事業展開の相談してみんか?」
「起業=今までにない仕事を始めること」だと思ってましたが。
私も起業家なのか。
ということで「一昨年うっかり起業しちゃってた執筆事業者」は、起業相談をすることに。
5日後、机と椅子が並ぶホールで、なぜか事業マネージャーと二人きりで起業相談。
「まず、君は、執筆で月にいくら収入を得たい? それによって、業態や規模は変わるで」
「月○○万円程度。家が仕事場ですし、倉庫や設備はいらないので、経費はかかりません」
マネージャーは、ホワイトボードに『何かしたい人』『節税』『文具』『時間のやりくり』『将来のお金』と書き、それぞれを線で結びました。
「ブログ分析させてもろたけど、武道と本以外の文章は、こんな配分になっとるわけや」
そうなのか。武道系コラムや本読みコラムと違って、日常コラムは、いきあたりばったりで書いてるから、内容の配分なんか、考えてもみなかったな。
「で、これを読みに人が集まるいうことは、ニーズがあるわけや。これを組み合わせて、何かビジネスできんか考えるべきやろ。「風花」のペンネームを使ってビジネス関連で稼いで、「島村由花」は創作や伝統文化方面の仕事やる。俺はライターのことはわからんが、経営的に見て、今、このタイミングで、分社化みたいなことする判断は正しいと思う」
……「経営的判断」「分社化」なんて、大層なことやってたんだ。私。
「確かに、青色申告本企画は勝てるやろ。……その後、君はどうするつもりやねん?」
「それを起点に、いくつかのプロダクションへの売り込みを予定していますが」
そう答えると、マネージャーは不敵な笑みを浮かべました。
「執筆はええやろけど。そやけど、それでいけるか? あんまり詳しく知らんけど。原稿料、どんどん下がってるらしいやんか。君の必要な月収、コンスタントに稼げるやろか?」
むむむ。痛いところを突かれましたね。
執筆の世界では「執筆だけで食べていくこと」が最上。
でも、東京ライターズバンクの故・児玉進理事長は「ライターは二束三束のわらじが必要」と仰っていました。
「安定収入と広い見聞のためには兼業が望ましい」と。
「俺は、執筆と何かを組み合わせたビジネスを勧めるわ。……君は、ほんまは執筆専業になるのをためらってるんとちがうか。そやから、今、ここで起業相談しとるんやろ?」
……うーむ。そうかもしれない。
専業ライターなら、こうしてる間にも一軒でも多く出版社やプロダクションに出向いて、一つでも多く仕事を取ろうと走り回ってるはずだから。
「とりあえず、これ、ちょっと記入してみて……まあ、自分を見つめるのは辛いやろけど」
渡されたのは『事業計画シート』。
「あっ、これだったら、毎年やってます。15分ほどで書きますよ」
「ほほう。君、こういうものも書くんか」
マネージャーは笑いました。
「そやけど、いつもやっとるのは、「執筆」の事業計画やろ。今回は「執筆+アルファのビジネス」、3つアイデア出して。それで、明後日の昼食会にでも持ってきて」
うへぇ。宿題が出るとは。
マネージャーは、私のファイルをながめて言いました。
「それにしても、コクヨの「ノビータ」持ってるあたりは、さすがに文具マニアやな……。俺も文具好きなんやわ。新商品見たら、すぐ買うてまう」
うわぁ。ここにもいたか文具愛好家。
「ノビータ」は、昨年秋、コクヨS&T株式会社から発売された新商品。
普通、たくさんの書類をクリアファイルに入れると、中の書類に曲がったり、ファイルがふくらんで表紙が閉じなかったりします。
ところが「ノビータ」は、ポケット固定式のクリアファイルなのに、書類の厚みに合わせて5mmから40mmまで背幅を変えられます。
20ポケットでも1冊あたり400枚の書類が入れられる優れもの。
これに目をつけるとは、さすがに文具マニアですね。
帰宅した私は、さっそく宿題「執筆+アルファのビジネス3つ」のアイデアをまとめました。
翌々日の昼食会。
事業マネージャーは、レポートに目を通して言いました。
「なるほど。とりあえず方向は見出せたわけやな」
「やっぱり、真面目に仕事をがんばってる人を、何らかの形で応援したいですね。特に、今、若い世代は、かなりしんどい。……ですが、いずれにしても、異業種の優秀なパートナーが必要です。見つかるでしょうか?」
「心配せんでええわ。ここは、いろんな人間が出入りしとる。商工会議所とも連携しとるし。人材は多いよ。とりあえず、君に紹介したい相手が二人いてる。会うてみるか?」
「はい。よろしくお願いします」
「ここも商工会議所も、いろんなセミナーや交流会やっとる。勉強しながら人脈作ったらええねん。大体、起業していきなり大儲けできるもんやないし。あせらんとやっていったらええ。君が成功することは、豊中のためにもなるんやからな」
私は、子供の頃から「文才がある」と言われてきたために、「自分には文章を書くことしかできない」と思い込んでいましたが。
「文才を生かしてできること」は、意外にたくさんあるようです。
「ビジネスの風花・カルチャーの島村由花」。
二つの顔を持つ執筆者兼起業家として、これからじっくりと取り組んでいこうかなあ……と思っています。
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2011年04月05日
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