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2011年05月07日

科戸の風−しなとのかぜ−(前編) 好機

「今年も、横浜の本部道場から、僕の先生が大阪に来られるんですよ」

 



出稽古先の先生は、うれしそうに言いました。

昨年、先生の所属する合気道団体の特別講習会にお招きを受け、とても楽しく稽古することができました。今年の稽古も楽しみです。

ちょうど夏用道着の襟がすりきれてきたので、これを機会に、夏用道着を新調することにしました。
東京の女性合気道家のフォロワー(Twitterの友人)のお勧めの京都・東山堂に夏用道着を発注。

ネームは自分の苗字ではなく、mixiやTwitterで使っているハンドルネーム『科戸の風(しなとのかぜ:日本古来の風神「級長戸辺神(しなとべのかみ)」が吹かせる風)』にしました。

昨年の道主特別研鑽会の合同稽古では、私の道着のネームが本名だったために、フォロワーは私を探し出すことができずに、稽古しそこなったのです。

その失敗をふまえ、一着だけ、ネット上の友人と稽古するための道着を作ってみたつもり。

『体育館で「科戸の風」のネーム入り道着に黒袴姿で右往左往している年寄りがいたら、それは私ですので、お気軽に声をかけてください』と、mixiとTwitterに書き込んでおきましたが……

もし、参加者の中に、マイミク(mixiの友人)やフォロワーがいたら、一緒に稽古できて楽しいだろうなあ。

講習会当日、私が受付のお手伝いをしていると、先生の所属団体の代表師範が、昨年もお会いした有段者と一緒に来られました。

「ごぶさたしております。ようこそ大阪へいらっしゃいました」と私が挨拶すると、代表師範は「あなたも、お元気そうで何よりですね」とおっしゃいました。

「昨年の10月、人工透析の義母を引き取りました。在宅介護状態になった段階で、もう合気道はできないのですが。先生のおかげで、合気道を続けることができました。本当にありがたいことだと思っています」

「いやいや。こちらこそ、受付のお手伝いまでしていただいて、申し訳ないぐらいですよ」

代表師範は、ビデオカメラ設置に余念のない先生を見ながらおっしゃいました。

「ところで、お姑さんの人工透析は何回ですか?」
「週3回です」
「それはきついね。透析が終わると、そのまま疲れて動けなくなるそうじゃないですか」

「そうです。いつも病院から帰った後、ずっとぐったりしていて心配です。今日も、義母が昼過ぎには帰宅しますので、半日だけ、稽古に参加させていただきますが」
「まあ、それはしかたがないことですね。せめて半日、稽古を楽しんでください」
「ありがとうございます」

代表師範が着替えに行かれた後、続々と講習会申し込み者が来ます。
去年お目にかかった方もおられますが、初めての方も多い。
これは、去年より参加人数が多そうだな。

「あ、○○さん、来られてますよ。よかったじゃないですか。稽古できますよ」

私と一緒に受付をしていた年配の有段者が、突然声をあげました。

参加者名簿の中に、昨年の道主特別研鑽会で稽古しそこねた吹田の女性高段者の名前があったのです。

しまった。

たくさんの方が同時に来られたので、受付にバタバタしていて、挨拶しそこねてしまったなあ。

「そろそろ時間なので、会場の方へ」

先生が呼びにきたので、私たちは大慌てで受付用具を片付け、体育館の柔道場へ。

稽古が始まる前に、全員が円陣を組んで、一人ずつ自己紹介。

遠くは群馬、愛知などから来られた方、和歌山、兵庫、大阪など関西の道場の師範の方々。
白帯の男性が二人、そして黄色の帯を占めた小学生の男の子。
ほとんどが有段者。

総勢40人近く。
やっぱり、去年よりも参加者が多いですね。

まず、先生の号令で、全員そろっての準備体操。

そして、東日本大震災で亡くなった方のために、全員で1分間の黙祷。

「この震災で、日本は大変なダメージを受けました。この難局を乗り切るために、日本中の人が力を一つに合わせてがんばらなければいけません。今こそ、人や自然と調和する合気道が、世の中に必要とされる時です。みんなで合気道を広めていきましょう」

代表師範の言葉に、参加者全員が大きくうなずきました。

稽古に入る前に、「気」を統一にするために、「船漕ぎ運動」。

全員が左足を一歩前に出し、両手を前方に伸ばして舟を漕ぐ姿勢をとりました。

「エイッ」と大声で出しながら、上体を後ろに引き、手は水平に胸の辺に引きつける。
「ホー」と声を出しながら元の姿勢に戻る。
これを繰り返します。

次に、右足を一歩前に踏み出し、同じ動作をします。
右側は掛け声が「エッサ」「エッサ」です。

別名「天の鳥船」とも呼ばれる動作で、気力を充実させ、「気」を丹田に集める効果があるそうです。

「船漕ぎ運動」の後は「振魂」の動作。

足を肩幅に開き、深呼吸の後、手を組み合わせえて丹田の前におきます。
この時、左手を上、右手が下。
そして、掌の中に玉があり、それを転がすようなイメージで、上下にはげしく振動させます。

雑念を取り、心を静める効果があるとされる動きです。

「振魂」が終わった時、柔道場全体にオレンジ色のエネルギーが満ちて、参加者全員の「気」が一つになるのが感じられました。

さて、いよいよ稽古に入ります。

……次回に続く……
ラベル:合気道 道着
posted by ゆか at 10:29| Comment(1) | TrackBack(0) | 武道系コラム | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「氣」を感じる、これは合気道を稽古する者にとってとても重要なことだと思っています。…ですが、鈍感な私はいまだにピンときません。身体のセンサーが鋭敏になるのではと、いつぞや紹介された「身体のホームポジション」のエクササイズにも取り組んでいますが。
島村さんは、どうやって氣を感じられるようになったのか、そんな記事も、そのうちお願いしますね。
Posted by sho at 2011年05月22日 20:15
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