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2011年05月10日

科戸の風−しなとのかぜ−(後編) 柔らかい合気道

40人近くの参加者が円陣を組んで、その中心におられるのが代表師範。

 
「私たちの体には、長年稽古してきた「型」がメモリーされていて、それが抜けきらず「入り身投げはこうじゃなきゃいけない」とか「一教はこう」だとか、そこにとらわれてしまいがちです。確かに「型」も大事ですが、「「型」の先にあるもの」も、合気道の世界にはあるのではないでしょうか。私もまだ研究中ですが。今日の稽古が、参加された皆さんの何かの参考になれば、と思っています」

代表師範は、そうおっしゃった後、先生のほか、数人の名前を呼びました。

先生をはじめ、男性有段者が5人出てきて、代表師範の前に先生を先頭に縦一列に並びます。

「動かないように、みんなでがんばってみてください」

立っている先生の腰の部分を後ろにいる人が、がっちりと抱え、そのまた後ろの人がその人の腰を抱え……

5人がムカデのように連なった状態になりました。

「普通こうなると、動かせないように思えるでしょうが……人が5人いる、と考えずに一つのエネルギーの塊と考える」

代表師範が先頭の先生を押す動作をすると、5人が一塊になって吹き飛びました。

「1人でも5人でも、10人でも関係がありません」

……うーむ。不思議だ。

昨年の講習会では、「手を取りに来なさい」と言われて、代表師範の腕をつかみにいったのに、なぜか私の手は代表師範に届かなかった……

あれも不思議だったけれども。
今度の稽古も不思議だ。

合気道には、まだまだ私にわからない世界がありますね。

正面打ち入り身投げ(自分の眉間を狙ってきた相手の手刀をさばき、相手の側面に入って投げる技)の稽古では……。

「力でおさえようとすれば、相手も力で反発します。結局、力と力のぶつかり合いになって力の強い方が勝ちます。……相手の手や足を意識せず、一つのエネルギー体としてとらえる。エネルギーは一箇所にとどまることはできません。必ずどこかへ動こうとする。だから、相手を包み込んで、相手の動きたい方向にエネルギーを逃がす。この時、ちょっと位置をずらすと、相手は崩れるわけです」

代表師範は、猛烈な勢いで突進してきた男性有段者を、ひょいとさばいて、そのまま投げました。

合気道の「技」というよりは、「風になびく柳」のような自然な動きでした。

「こんな感じでもかまわないわけです。合気道は「型」の武道ですから、受け(技をかけられる方)も取り(技をかける方)も、どうしても「こうきたら、こうしなければ」という思い込みがありますが。「型」を徹底的に学んだ後、今度は「型」にとらわれずに稽古してみる。……何か新しい発見があるかもしれませんよ」

……うーむ。すごく高レベルな話になってきたなあ。

「型にこだわらずに、力のぶつかり合いにならない稽古」

……やってみようとするけれども。
どうしても普段の稽古の癖が出て、型にこだわってしまいがちです。

……難しいなあ。

それにしても、新道着『科戸の風』……。

時々、稽古相手に「そのネームは何と読むのですか?」と聞かれて、そのたびに「しなとのかぜ、と読みます。大祓詞に出てくる風の神の名前からとりました」と答えなければならないので、結構面倒だな。

ふりがなをつけるとか『@sinatonokaze(Twitterのハンドルネーム)』も一緒につけるとか、もうちょっと工夫しておけばよかった。

片手取り呼吸投げ(片手を取りにきた相手の側面に入り「呼吸力」を使って投げる技)では、黄帯の小学生が稽古相手になりました。

相手は小学4年生ぐらいの男の子。

危なくないように力を加減して、ゆっくりふんわり投げてやると、男の子は自分から前に飛んで転がり、きれいな前受身をとりました。

……やるなあ。
普段から、しっかり稽古しているのでしょう。

しばらく男の子を投げた後、私が受けになりました。

ちょっと抵抗した後、「やられたぁ」と言いながら、大げさに受身をとって投げられてやると、男の子は大喜びで飛び跳ねてる。

やっぱり子供だ。
かわいいなあ。

先生のところの少年部の子供も、いずれ、こんなふうに成長するのかなあ……
そんなことを頭の片隅で考えながら、小学生と楽しく稽古しました。

しばらくして同じ技で相手が変わり、吹田の女性高段者。

「うちの少年部の子の相手をしてくださって、ありがとうございます」
「基礎がしっかりした子供さんですね。将来が楽しみでしょう」
「いえいえ。まだまだですよ」

そんな話をしながら、稽古をはじめました。

女性が自分より体格の大きな男性と稽古する時、技をかけようとあせって、どうしても力を込めて相手をおさえてしまいがちで。

私も「しまった!また力ずくになった!」と反省することが多く、「相手を力で制さない、柔らかい合気道」を模索しているところですが。

この女性高段者の技は、さすがに柔らかい。
ゴムまりのように相手の力を柔らかく受け止め、ぽんっ、と弾き返す。

……なるほど「柔らかい合気道」にも、いろいろなスタイルがあるんだなあ。
私は、どんな「柔らかい合気道」がしたいんだろう……。

さすがに年配の有段者が「ぜひ稽古しなさい」と勧めただけのことはある方。
よい勉強になりました。

その後、何人かの有段者と稽古しているうちに講習会の終了時刻に。

「いつもとは違う稽古だったとは思いますが、今日の稽古が、皆さんの参考になれば幸いです。ご縁があったら、また一緒に稽古しましょう」

そう言って代表師範は講習会を締めくくられました。

講習会の後、体育館横の公園で、飲み物だけの簡素な懇親会が開かれました。

よく晴れた青空の下、まぶしい新緑の木々をながめながら、思い思いに合気道について語り合う楽しいひとときが過ぎ……透析を受けている義母が病院から戻る時刻になりました。

一緒に稽古した皆さんにお別れのご挨拶をすると、「がんばって稽古続けてくださいね」「来年も一緒に稽古しましょう」と、口々に励ましてくださり、とてもうれしかったです。

代表師範はおっしゃいました。

「介護は長期間にわたることが多いですから。体に気をつけて。無理をせず、ご自分のペースで稽古を続けてください。また、一緒に稽古できるといいですね」

「ありがとうございます。これからも合気道を続けていきたいと思います。また来年、稽古に参加できるとうれしいのですが。……それでは失礼します」

今年も楽しかった特別講習会。
来年も参加できればいいんですが。
タグ:合気道
posted by ゆか at 14:19| Comment(1) | TrackBack(0) | 武道系コラム | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
いつも素敵なコラムを有り難うございます。
特に今回は私も稽古に参加しているような、その場にいるような感じで、読みました。
講習会の楽しさが伝わってきました。
Posted by コハント at 2011年05月10日 18:50
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