加盟国間内ですべての関税が撤廃されるTPP。
農林水産省の試算では、TPPに参加した場合年間8兆5000億円の農業生産額が4兆1000億円に、食料自給率が40%から14%に低下……
日本の農業、私たちの食料はどうなってしまうんだろうか。
この本は、日本経済新聞で2009年8月から2010年10月まで連載された『ニッポンの農力』を加筆、再構成したもの。
企業が農業に参入する「農業ブーム」。
農業従事者の高齢化と耕作放棄地の増える中でも、「安全でおいしい作物を作りたい」と有機農法やトレサービリティを積極的に導入する農家。
農協に頼らぬ自立した経営をするためにITを活用する農家。
若者の力を借りて生産規模拡大と農作物安定供給を模索する農業法人。……
新しい農業の形を必死で探す現場を混乱させているのは、食料自給率の向上が目的で政府が導入した「コメの戸別所得補償制度」だ。
売れる見込みのない米を作っても高額な補償金がもらえる。
今まで自分で耕作せず、土地を大規模農家に貸していた零細農家が、補償金目当てに大規模農家に土地返還を迫り、農業効率化を妨げになっている。
そして、この本が出る直前の2011年3月11日、東日本大震災が起きた。
『農林水産省』サイトによると、被害は岩手、宮城をはじめ15の県で農地・農業用施設に7137億円。
農作物、家畜などは118億円の被害。
福島原発事故で飛散した放射性セシウム134は、最長で30年土壌に残り、農作物にも移行するので安全性が心配だ。
菅首相は震災の影響を理由にTPP交渉参加の判断時期を先送りする方針だが。
世界的な食糧不足が問題になりはじめている今、TPPに参加せずに国産農作物だけで全国民を養えるだろうか。
何かよい方法がないのだろうか。
『ニッポンの「農力」』 日本経済新聞社編 日本経済新聞出版社
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