ひょんなことから、豊中市の起業支援施設『とよなかインキュベーションセンター』で、執筆事業起業者として起業支援を受けることになった私。
イベントのお誘いが届きました。
『平成23年度とよなか経営塾・経営者感覚を身につけるための経営基礎セミナー 第1回 経営者感覚を養うために 〜経営の戦略と戦術〜』という長々しいタイトルのイベントです。
「なんでライターが経営戦略やねん」と思われた方もいるでしょうが……。
「出版社から依頼を受けて文章を書いてお金を稼ぐ」というが、これまでのライターのイメージでしたが。
私は異業種から執筆の世界に参入することになったせいか、「不安定」という、これまでのライター像に違和感があるんですよ。
原稿料の振り込みが遅れたり、踏み倒されるのが日常茶飯事の状況は耐え難い。
そこで、きちんと報酬をもらえる形で、執筆を仕事にできないか模索しているわけです。
当日、会場に出かけてみると……
受付には、ノーネクタイのシャツにスーツのスラックス。
クールビズ姿の男性が大勢います。
実はこの催し、『とよなかインキュベーションセンター』と、『豊中市市民協働部くらしセンター地域経済課』の共催イベント。
市が起業をサポートするのは、事業が軌道に乗ったら、新たな雇用や税収が期待できるからです。
セミナー代500円を払おうとすると「後日、領収書を自宅へお送りしますので名刺を頂戴したい」と言われました。
そんな大げさな。
領収書の用意がないなら、こっちで出金伝票切って帳簿つけておくから別にいいんだけど。
このセミナーの参加条件が「豊中市在住の事業者および起業を考えておられる方」だから、後日領収書を郵送して、参加者が本当に豊中市民かチェックするのかもしれませんが。
セミナー会場の小ホールには、椅子と机が並んでいて、15人ほどの参加者が席についてました。
老人や主婦、大学生ぐらいの若者まで。
年齢は幅広い。
……ふうん。
この皆さんが「事業者および起業を考えておられる方」なのか。
みんな一見普通の人だなあ。
本当は会場の片隅で「経営セミナー」なるものを、こっそり見物しようと思ってましたが。
入口で顔見知りの事業マネージャーに声をかけられてしまったので、今回の潜入取材は断念。
それにしても、ホールの後ろに市の職員が、ずらりと並んで立ってると……
「セミナー」というより「小学校の父兄授業参観」みたいな雰囲気。
なんか苦手だなあ。
さて、セミナーが始まりました。
まず講師の自己紹介。
大手都市銀行出身で、現在は大阪市の企業支援施設『大阪産業創造館』の経営相談員。
配布された資料の順番通りにセミナーが進んでいきます。
まず、最近の日本の財政状態の話からはじまって、「10年前、世の中はどうだったのか? あなたは何をしていましたか?」という話になりました。
10年前……2001年は、アメリカで同時多発テロが起こった年。
私は……
心臓がおかしくなる喘息薬の副作用事故の後遺症が減って、夫の勧めで合気道を始めた頃。
著書の『アレルギーと生きる』が発売されて、執筆を仕事にできないか模索していた頃。
その10年後の2011年の私。
時々初心者を教える合気道初段。
執筆の仕事も少しずつ軌道に乗りはじめている……
10年前と今とで、やっていることが全然変ってないのが意外でした。
「大抵の人が、なんらかの形で10年前にしていたことと同じことか、関連のあることをしているものです。つまり、それが、その人の「やりたいこと」だからです。なぜ、その事業をするのか。迷った時は原点に還るとよいでしょう。「それは実現したいことか、やりたいことか?」「世の中に提供すべきものか?」「事業として成立するものか?」を考えると道が開けてきます」
ううう。「事業として成立するものか?」の問いは耳痛いなあ。
なにしろ、ライターの平均年収は400万。
5年以内に新規開業者の半数が廃業する世界ですから。
講義は進んで「経営者感覚のテスト」。
出題されたのは「ブタと牛のどちらを買うと儲かるか?」。
牛1頭の仕入れ価格5万円、2年後に25万で売れる。
餌代は2年間で8万4千円。
ブタ1頭は仕入れ価格1万円、1年後4万円で売れる。
餌代は1年で1万2千円。
……どちらを買うと儲かるか?
私の直感の回答。
「どちらも選ばない」もしくは「1年後に30万で売れる馬を買う」。
ルールが曖昧すぎるのです。
「牛かブタ、どちらか1頭しか買ってはいけない」だと、牛の方が儲かりますが。
「資金5万円、期間2年。5万円でブタは5頭買って、転売してもよい」だと、ブタを買った方が儲かるんです。
講師の回答は……
「売上総利益を比較すると牛が11万6千円。ブタが1万8千円で、牛の方が儲かりますけど、粗利益率では牛が46%、ブタが45%で、それほど変らないのです。それと別に、5万円でブタを5頭買い、1年後に5頭を20万円で売却。それを元手にブタ20頭を買って、さらに1年後は儲けが80万。そういう考え方もできるわけです」
受講者の大半は呆然としていました。
こりゃ不親切だわ。
私が講師だったら、3人ほど受講者を当てて、どんな条件をイメージしてるか聞いて、講義を進めていくでしょう。
その後、
「回転資金は、事業そのものにかかるお金に事業者の生活費を含めたもので、意外にお金がかかる」
「これからの時代は「大きく儲ける」ことよりも「生き残ること」を」
「これからの経営に必要なのは、パートナーシップ、リーダーシップ、フレンドシップ」
……最後に「がんばろう、NIPPON! がんばろう関西の経営者!」で、講座は締めくくられました。
なるほど。
2時間の長いセミナーなのに、受講者を飽きさせないあたりは構成がうまくできている。
でも、「ブタと牛のどちらが儲かる?」の部分が、どうしてもひっかかるので、感想質疑応答の時間に、講師に疑問をぶつけてみました。
「ブタと牛の利益の問題ですが、元手や飼育期間のルールが、もう少しはっきりしていれば、わかりやすかったと思います。一瞬「5万円でブタを5頭買うのはルール違反か?」と迷ってしまいました」
「あなたが抱いた疑問、実はそこで、経営感覚がわかるのです。これは儲けを計算する問題ではなく、経営感覚を試す問題だったのですが。そういう意味では、与えられた条件以外のことを一瞬想像した、あなたは経営感覚の鋭い人です」
ふうん。計算問題じゃなくて適性検査だったのか。
でも、ここで起業して成功するか失敗するかが分かれるんですね。
厳しい世界だなあ。
ちなみに、このセミナーの2回目は、経営課題の本質を知り、根本的な課題解決の糸口を見つける「経営課題の本質とは〜企業の成長過程と問題発生パターン〜」。
3回目が資金繰りとリスク管理」。
銀行から借金して工場を建てなきゃならない事業でもないし、経営課題は「執筆できちんと儲けられるか」だとわかってるし……。
参加しないつもりだったけど。
グループ討論だと聞いて興味が出てきたので、3回とも出てみることにしました。
それにしても起業の世界って、面白いですね。
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2011年07月30日
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