さて、合気道の奉納演武のはじまりです。
打ち合わせの通り、演武者4人が横一列に並んで、神前に礼、観客席に礼。
ここで先生が、観客に合気道の説明をするので、私たち3人は舞台の後方へ下がります。
マイクを握って、合気道の説明をはじめようとしている先生。
そこへ司会者が先生に近づいてきて、何事か小声で言った途端、先生の顔色が変りました。
しばらく途方に暮れたような表情をしていた先生ですが、やがて、普段の顔に戻って、合気道の説明をはじめました。
演武開始です。
去年と同じように、極真会館大阪中央支部の皆さんが、演武中に畳が動かないように押さえてくださっているので助かります。
ただ、去年は、舞台の四方に橋の欄干のような赤く塗られた柵があったのですが、それが今年はない。
受身をするたびに、極真の皆さんとぶつかりそうになるので気を使います。
打ち合わせ通り「片手取り四方投げ」が終って、名前を呼ばれた私は舞台の中央へ出ました。
予定通り「正面打ち一教」に入るのかな……と思いきや。
「後ろ両手取り三教。始め!」
えっ?
予定の技と違う。
でも、演武を止めるわけにもいきません。
指定された技を演武しますが、どうしても動揺が技に現れる。
相手の年配の有段者も、そうらしいですが……
関節が音をたてて鳴るほど、力任せに関節技を極めなくてもいいのに。
痛いやんか。
その後、打ち合わせ通り、「正面打ち一教」「正面打ち二教」「正面打ち三教」と進んだまではよかったのですが。
その次の技は「片手取り呼吸投げ」。
また打ち合わせにない技。
でも、こうなったらやるしかない。
先生に投げられた私は前回り受身をとります。
勢いよく前回り受身をすれば、舞台から飛び出して、固い地面の上に落ちかねないので、どうしても、いつものように、のびのびと受身ができません。
もちろん合気道の見せ場の一つ「華麗なる飛び受身(宙返りのような受身)」もできません。
……不利だなあ。
それにしても、「始め!」から「止め!」までの時間が妙に長い。
舞台の狭さを意識しながら、一つの技を長時間演武し続けるのは疲れるし、年配の有段者も他道場から来ている若者も、動揺しているせいか技が荒っぽい。
せっかくの晴れ舞台なのに。
今ひとつの演武だなあ。
一通りの演武が終って、最後は先生の代表演武。
さすがに先生は、舞台の狭さをものともせず、豪快な投げ技を披露。
……しかし、なんだか演武時間が長いような気がする。
代表演武終了後は、打ち合わせ通り、神前に礼、観客席に礼で、演武終了。
司会者が「すばらしい演武でしたね。合気道は無駄な力を使わず、相手の力を利用して投げ飛ばせる、女性の護身術に向いた武道です。合気道に興味を持たれた方は、後で先生のところまで」と解説してくれましたが。
今年の演武は納得のいく出来じゃないなあ。
合気道の演武が終わると、私は観覧席に座りました。
「お疲れ様でした」
先生が声をかけてきて、私の隣に座りました。
「今年は空手のお手伝いはいいんですか?」
「大勢なので自分たちで全部やるそうですよ。極真の皆さんにはお世話になりっぱなしで」
演武を助けてもらった上に、撮影までしていただいて、本当に申し訳ない気がします。
「それにしても、今年の演武はしんどかったですよ。時間が長くて。予想外の技も入ってたし。思ったように演武できませんでした」
先生は苦笑しました。
「僕も、あの場で、司会者に「倍の40分でお願いします」って言われた時は、一瞬、どうしようかと思いましたよ。がんばって引き伸ばしてみたけど、30分が限界で」
「えっ! 40分も! ひどいなあ。打ち合わせと違う技言われて、なんだか変だと思ったけど。演武がはじまってから、「倍の時間に」って言われても」
演武は「時間が倍になったから技を倍の時間やればいい」というような単純なものではありません。
演武者の技量や体力や集中力、技の種類、見せ場などを考えて、あらかじめ技を選んで演目を作っているわけですから。
その場での演武時間延長は非常に困るのです。
「まあ、終った演武のことはさておいて、後は気楽に祭りを楽しむとしますか」
不機嫌な私をとりなすように、先生はにこにこしながら言いました。
合気道の次の演武は居合道「五倫之会」の演武。
立派な顎鬚をたくわえた羽織袴姿の男性指導者が、宮本武蔵からはじまる居合の伝統について解説した後、演武開始。
最初は、居合刀を持った道着袴姿の若い男女の一組ずつ、交代で出てきて、ゆっくりと演武します。
「やっぱり、10人が交代で演武すると間がもてますね。僕ら4人ではきつかったな」
「しょうがないですよ。演武直前に持ち時間が倍になって、しかも一番手だったし」
居合刀の演武の後、木刀を持った男女が出てきて組太刀(木刀を打ち合わせる)演武。
「ずいぶんゆっくりした太刀さばきですね。僕らの組太刀だと、もっと速いですが」
「私が見た居合は、もっと速かったですよ。立った状態で、勢いよく木刀を振り上げれば、天井が低いし舞台も狭いし、危ないからでしょう。ゆっくりすれば間ももたせられるし」
最後は指導者の演武。
観客が固唾を飲む中、舞台に片膝をつき、白刃をひらめかせてのスピードと迫力のある演武。
なるほど……地面に片膝をついた高さからなら、刀を思いきり振り上げても天井には当たらない。
さすが地元の道場。
奉納舞台が演武に不利な点を承知の上で、それをカバーして、居合の魅力を発揮できる型を選んだようです。
居合の演武が終ると、今度は空手「極真会館大阪中央支部」の演武。
空手着姿の子供から順番に、「押忍!」と大声で挨拶をしながら、一人ずつ舞台に上がります。
空手の演武者も10人以上います。
やっぱり合気道の4人は少なすぎましたね。
最初は全員で正拳突きや前蹴りなどの空手の型を披露。
その後は、瓦割り、板割り、ブロック割り、バット折りなどのデモンストレーション。
例えば、瓦割りは破片の飛散を防ぐため、舞台にビニールシートを敷いた上に瓦を置き、瓦を割った後シートを片付ける。
板割りも、舞台後方から板を持った若者が3人出てきて、並んでから板割りがはじまる。
……集中力と一瞬の気合が勝負の空手は、演武の準備と後片付けで間をもたせるようです。
坊主頭の小学生が、鋭い気合とともに、気迫のこもった正拳突きで板を割ると、観覧席から拍手が巻き起こります。
私も拍手をしながら先生に言いました。
「あれは難しいんですよ。「どんなに鍛えた拳でも、わずかでも迷いがあると板は割れないし、ケガする」と夫が言ってました」
「そういえば、ご主人も極真の4段でしたね。……合気道で、こういう一般向けの、わかりやすいデモンストレーションって……難しいですよね」
来年は武道必修化の年なので、一般の人に合気道の魅力を、どうわかりやすくアピールするか。
それは、すごく大切なことになってくるでしょうが……
「まあ、そこのところもふまえて、来年は、大勢で楽しく演武したいですね」
先生は明るい表情で言いました。
来年は、のびのびと楽しく、合気道の魅力を最大限に引き出せる演武をやりたいですね。
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2011年08月16日
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4人で40分は大変でしたね。しかも、急きょ変更とは。
それにしても、こういう演武会があるのはうらやましいです。私の稽古している道場ではこういう機会は今のところないです。全日本合気道演武大会に参加するくらいです。
演武の前のあの緊張感と終わったあとの充実感、いいですよね。
僕も以前、空手を修行していたときは、演武に何回か出させていただきました。道場長の受けを命ぜられたときは、かなり緊張しました。短刀取りをやったのですが(古流空手なので)、本物のいわゆるドスを使いました(大きな声では言えませんが)。そのときは受けを冷静を装ってやりましたが、内心ドキドキもんでしたよ。
自分自身、板割りや石割りもやりましたが、板割りなどは受けのほうも技術がいりますね。
こちらのブログを読み、昔の記憶を思い出し、そのうち、今の合気道の道場でも、小さい演武大会でも開いてみようと思いました。