仕事ができるのに左遷される人がいる一方で、「なんであの人が?」と思うような人が出世していく。
人事は何を基準に行われているんだろう?
著者は大企業の人事労務関係の部署に勤める関西大学商学部非常勤講師。
そもそも人事部の主な仕事は……。
社員の異動や人事評価。
給与や勤務時間などの労働条件の策定。
労働組合との交渉。
将来に向けての新しい人事制度の企画立案。
給与管理や勤務管理などの総務。
新卒採用や中途採用。
社内研修全般。
再就職の斡旋。
うーむ。煩雑な仕事だ。
ちなみに「公平な人事異動をしても社員の7割は不満を持つ」そうだ。
評価される社員は、内心自分の実力を3割高く評価しているため、「私は○○さんより仕事ができるのに」と不満を感じるものらしい。
しかも、「公平」を心がけて評価するはずの人事部も、時々失敗するそうだ。
ひょっとして「公平な人事」というものは、この世に存在しないんじゃないか?
一般的に、課長職までは実力のある者が出世できるが、部長職以上の出世は「上からの引き」が必要で、派閥に入らなければ出世できない。
部長職以上の役員人事は経営陣自らが行うからだ。
個人が人を評価する時は「実力」よりも「相性」優先。
なるほど。
「なんであの人が?」の人事が起きるのは、そのせいなのか。
人事評価は時代とともに変る。
高度成長期の年功序列の「職能資格制度」。
90年代の停滞期には「成果主義」が登場。
今は社員の職務や役職で評価する「職務主義」と、社員自身に目標を設定させて評価する「目標管理制度」が主流だが、著者は「目標管理だけでは社員は評価できない」とコミュニケーションの重要性を主張する。
これからは仕事を撰ぶ時に「どんな仕事をするか」「どこで働くか」に加えて相性、「誰と働くか」も重要な条件になると著者は言うが、残念ながら、今のところ部下は上司を選べない。
働き方の多様化に対応した「公平な」人事制度が早く登場してほしい。
『人事部は見ている。』 楠木 新著 日本経済新聞出版社
ラベル:人事
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