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2006年08月19日

最大の敵(前編) 迫り来る凶意

かつて私が遭遇した、最も危険な経験の話です。


今から十数年前、まだ、私が大阪市内の会社に勤めていた頃のこと。
新入社員が入社してきたので、総務兼経理事務員だった私は、労務上の手続き申請をしに、某所の社会保険事務所に行くことになりました。

初めて行く場所だったので、社会保険事務所の位置を地図で確認して、最寄り駅からの最短ルートを選択。

駅から出て、駅前商店街をはずれて数百メートル歩いたところで、私は異変に気づきました。

平日の昼間の大阪市内、通りやすい高速道路横の道なのに、誰一人歩いていない。

どうやら、まずい場所に来てしまったらしい。先を急ごう。

初夏の強い日差しが照りつける中、なんとなく薄ら寒い、嫌な気分で歩いているうちに、一瞬、頭の中を黒い影がよぎり、私は思わず立ち止まりました。

……何かが近づいている。しかも、悪意に満ちたものが……

軽く目を閉じて眉間と両方のこめかみに意識を集中させました。
自分を中心に眉間の「第3の目」を中心に120度、右120度を右のこめかみ、左120度を左のこめかみで、周囲の状況を「読み取る」のが私のやり方。

その「何か」が近づいてくるのは前方。
数は1つ。
灰色の影の大きさは、それほど大きくない……問題なのは、そのスピード。

時速40キロから50キロ。車に近い速度……ということは、バイクか。

目を開けて周囲を確認。
今私がいるのは、高速道路に沿って続く道。
20メートル先で道路は大きく左に蛇行し、その先は見えない。
左の高速道路を走る車の轟音で、周りの音は全然聞こえない。

今、立っている位置は道路の中央。
道幅は1.5車線分で約4メートル強。
右側にはビルの灰色の壁がそびえ、右に曲がれる横道はない。
左は高架下のペンペン草がまばらに生える空き地。
しかし、高さ3メートルの金網が道路と空き地を隔てている。

何百メートルも続く金網には、錆びて赤茶けた有刺鉄線が、びっしりと横縞模様に30センチ間隔で巻かれている。
金網の一番上には鉄串のように天を刺す、太く尖った茶色の針金。
金網を登って逃げることは不可能。

……まずいな。逃げ場がまったくない……

後方もビルが連なり、次の横道までの距離は170メートル。
左手は有刺鉄線。
今から走っても、相手の速度の方がはるかに早く、逃げきれない。
それに、私が持っているのは書類鞄だけ。
武器になるものは何もない。

絶体絶命。

再び前方を見ると、もう意識を集中させるまでもなく、相手の気配がびりびりと伝わってくる。
「偏見」「憎悪」とは違う感情……青黒い「殺意」のようなものをみなぎらせ、すさまじい速度で近づいてくる。

この場所で相手をやり過ごすことに決めて、私は有刺鉄線に近づきました。

おそらく相手は、ゲームのように人を轢き逃げするバイク。
ビル側に立つと、はねられた時にコンクリートで頭を強打する恐れがある。
有刺鉄線側なら、金網がクッションになる確率が高い。
私はジャケットを着ているので、有刺鉄線が体に刺さる心配はない。

それに、有刺鉄線のそばにいる人間を轢こうとすれば、猛スピードでバイクごと有刺鉄線の中に突っ込んで大怪我。
相手も、それだけは避けたいだろう……そう計算したのです。

私が有刺鉄線を背にして立つと同時に、相手は姿を現しました。

……次回に続く……

posted by ゆか at 12:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 武道系コラム | 更新情報をチェックする
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