下手をすると70歳になるかもしれない。
ところが私たちの定年は60歳だ。
年金支給年齢までの5年から10年、どうやって暮らしていこう。
この本の前半の著者は元JAL客室マネージャー。
後半の著者はキャリアカウンセラー。
前半の著者は破綻した日本航空を54歳で早期退職したものの、一人暮らしの老後に不安を感じながらも、再就職に奮闘する「50代女子」の赤裸々な心情をつづっている。
立ちふさがる年齢の壁。
砕かれるプライド。
再就職の理想と現実にうちのめされながらも、退職の8ヶ月後、著者は知人のレストラン経営に関わることになった。
しかし契約期間は2年。
これが50代の「再就職の成功」の現実なのか。
めまいがする。
著者は「おひとりさま50代女子」の老後の不安を訴えていたが、実は失業に関しては家族がいる方が、はるかにリスキーなのだ。
昨年、私たちはマンションを購入したが、その時、融資担当者は言った。
「お子さんがおられないので安心してご融資できます」と。
最近は子供が中学生になる手前で突然教育費が増えて返済が滞るケースが多く、その上失業のリスクもある。
子育て世帯への融資は最初から破綻を想定して、物件を差し押さえて競売にかける時の価格なども考えて金額を決めるそうだ。
一人暮らしなら、いくらでも倹約できるが、家族がいると、そうもいかない。
義母の介護で何かと物入りな我が家もそうだ。
後半の著者のキャリアカウンセラーは、『見えない明日を信じて「自分らしく生きるためのチャンス」をつかみませんか?』と、カウンセラーらしい柔らかい口調で語る。
中年期特有の体や心の変調を労わりつつ、現実との折り合いをつけての再就職は大変だが。
わかりやすい生涯の生活費の計算方法や自己分析シート。
効果的な職務経歴書や添え状など、役に立つ資料が豊富に載っているので、再就職への不安が少し薄れる。
お勧めの本だ。
『54歳のハローワーク+アラウンド定年の就活ハンドブック』吉川紀子・竹内康代 著 集英社
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