コンビニの店頭に並ぶ弁当やスイーツを見ていて、いつもそう思う。
この本の著者は、飲食業界のコンサルタント。
この本は、多くの「流行の店」を立ち上げてきた著者が、「食の現在」から時代の空気、今の消費者の心の変化を読み解いたもの。
表題の「ラー油」は「かける調味料」から「食べるもの」に「ずらし」たことで大ヒットした「食べるラー油」。
「ハイボール(ウィスキーのソーダ割)」は、「ビールで乾杯した後飲むものが、今ひとつ決まらない」という、居酒屋での客のニーズをうまくつかんだヒット商品だ。
著者は「商品が飽和している現在、いかにして魅力的な商品を売るか」についての鋭いアドバイスを文中にちりばめ、「食のヒット商品」を例に「時代の空気」を読み解いていく。
「自分が描いた理想のシナリオから外れたくない心理」が支持する「食べログ」。
消費者と生産者が「ストーリーを共有」してヒットした「奇跡のリンゴ」。
コーヒーの本質をあえて「覚醒」に限定し、「元気」や「健康」をイメージする「朝専用」と銘打って大ヒットした「ワンダ モーニングショット」。
……消費者にとって「大当たり」を引くより「はずれ」を引かないことの方が重要らしい。
面白いことに、自らが「仕掛け人」でありながら、著者は、この情報先行型消費に強い危機感を持っている。
メディアで語られ、あふれかえる飲食関連の定説「食べてダイエット」「コラーゲンで美肌効果」。
「トクホ」「究極」「天然」「無添加」がついた食品の効力などについて疑問を投げかけながら、情報との「ほどよい距離感」を保つことを提案している。
『「事実」とは一つの「視点」にすぎない』
……「「事実」を「普遍的な真実」と決めつけず、あくまで誰かの「視点」だと考え、物事を多面的に捉える習慣」は、著者の言う通り、これからの複雑な世界で生きていくのに必要だと思う。
『ラー油とハイボール』 子安大輔 著 新潮新書
ラベル:飲食店
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