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2006年08月26日

『クジラと日本人』

私は常々鯨を疑っていた。商業捕鯨が1982年に禁止されてからも、恐ろしく値段は上がったが、スーパーや百貨店には鯨肉が並び、鯨料理専門店も健在だ。

私は給食で出た「鯨の南蛮漬け」が嫌いで、おでん種のコロ(鯨の皮)も脂が強くて苦手なのだが、夫は、スーパーで鯨ベーコンをながめては「高いなあ」と溜息をつく。

「やっぱり、密漁やから高いんやろか」という話になるのだが、真実はどうなのだろう。

この本の著者は、水産庁参事官でIWC(国際捕鯨委員会)日本代表代理。

現在市場に出回る鯨肉は、調査捕鯨で捕獲した鯨、偶然定置網にかかった鯨、IWCが捕鯨を禁止したシロナガスクジラなどの13種類の鯨以外の鯨、イルカ肉の4種。

調査捕鯨と定置網捕獲の鯨は、すべてDNA標本があり、肉を鑑定すれば密漁鯨か識別できる。

日本の捕鯨の起源は縄文時代。
日本が鯨に感謝しつつ肉、皮、骨など体全部を利用するのに対し、鯨油が必要な欧米は、油分を含んだ皮や骨を採るためだけに鯨を乱獲した。

乱獲されて鯨が減り、世界各国で「クジラを守ろう」という声が高まる中、商業捕鯨は全面的に禁止される。
しかし、日本にとって、鯨を食べることは重要な「伝統文化」だ。

日本は捕獲量規定を守って調査捕鯨を続けてきた。
捕鯨禁止13種の鯨のうち、ミンククジラは異常増殖。
そして、世界の年間漁獲量の3〜5倍の魚を、鯨が食べていることが判明。
他の水産資源を守るために「鯨を適正に間引く」ことを、IWCに提案している。

鯨を含めて自国の水産資源を守るために、水産庁がIWCの規定に従いながら、丹念に資料を集め、欧米の反捕鯨国と粘り強く交渉している様子には頭が下がる。

日本経済新聞2006年8月18日付の記事によると、今年6月のIWC年次総会で捕鯨理解国は半数を超え、商業捕鯨再開決議に必要な4分の3議席に迫っている。

がんばれ。

『クジラと日本人』 小松正之 著 青春出版社
posted by ゆか at 14:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 本読みコラム | 更新情報をチェックする
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