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2012年01月14日

走る武道・歩く武道(前編) 相太刀

「おい、今から「てっぺん」の剣道の決勝あるけど、見んか?」
 

夫が書斎にいた私を呼びにきました。

てっぺん……『芸能界特技王決定戦 TEPPEN』は、フジテレビ系のバラエティ特別番組。
芸能人が、ピアノやアームレスリング、卓球などで特技日本一を競う番組ですが、その中に「芸能人剣道日本一」というのがあります。

時々剣道の試合をテレビで見ますが。
なにしろルールがわからない。
選手がお互いに激しく竹刀で打ち合って、なんだかわからないうちに勝負が決まってしまうので、いつ見ても納得いかなかったんですが。

今日は空手四段剣道三段少林寺拳法三段大東流合気柔術二段柔道初段の夫が、試合の解説をしてくれるので助かります。

リビングのテレビの前に座ると、ちょうど剣道の決勝戦が始まったところでした。

『赤 原口あきまさ 剣道歴7年 二段 得意技面』『白 敦士 剣道歴11年 二段 得意技刺し面』とテロップがテレビの画面に出ました。

夫はがっかりしたような表情。

「なんや。日本一いうても二段同士か。四段五段やったら、面白い勝負やのに」
「???」
「二段同士やったら、試合としては、あんまり面白くないかもしれんで」
「そうなん? ……ところで、この「面」と「刺し面」はどう違うの?」
「「面」は合気道で言う「正面打ち」や。「刺し面」は、剣を振りかぶらずに、突きに近い形で面を打つ。違う技や」

夫は剣道三段ですが、師範代として剣道を教えていたこともある人。
解説が的確です。

赤旗と白旗を持った審判の合図で試合開始。

開始と同時に、原口に走り寄る敦士。
激しく打ち合った後、一旦離れる二人。

仕掛けていく敦士、おされ気味の原口。
しかし、原口も敦士の面を打ち、押し返す。

「今の原口の「面」は、決まったの?」
「いや、甘かったな。「気」が追いついてない」

夫の言葉に同意するかのように、『3人の審判のうち2人旗を上げれば一本 気・剣・体が一致しなければ上がらない』のテロップが画面に現れました。

固唾を呑んで観客が見守る中、すさまじい勢いで打ち合う二人。
原口は敦士の間合いに飛び込んで打ちかかるけれど、審判の旗は上がらない。

「3本勝負やったら、難しいかもしれんな。こう有効打突が入らんとなると」

夫はつぶやきました。

『全日本剣道連盟』によると、試合時間の基準は5分。
原則は3本勝負で、試合時間内に有効打突を2本先取した方が勝ち。
でも、どちらも有効打突を取れてない。

仕切りなおしの後、再び向かい合う二人。

「この「とりゃー!」とか「しゃーっ!」とか叫んでるのは、相手を威嚇してるの?」
「あほ。猫のケンカとちゃうねんで。自分を奮い立たせるための気合や」

原口が進み出て剣先を上下させて誘いをかける。
しかし、敦士は警戒して後ろへ下がる。

再び敦士が走り、ぶつかり合う二人。
審判は動かない。

相手に駆け寄って打ち、間合いをとるためにまた走る。
競技場を所狭しと走り、打ち合う二人。

うーむ。こうしてみると、剣道って「走る武道」ですね。
「歩くように動け」と言われる合気道とは全然違う。

敦士の面をすりぬけるように、原口の胴が決まったように見えたのに、旗は上がらない。
離れてにらみ合う、駆け寄って激突するを繰り返す二人。

「このままやと時間切れやな。一本取った方が勝ちや」

2本有効打突が取れなくても、どちらかが1本を取ったまま試合時間終了になった時、先に有効打突を取った方が勝ちになります。

一度間合いをとって、今度は原口が仕掛ける。
敦士の面、原口の胴、激しい攻防。

ここで敦士のマイクが外れたので、審判が赤白の旗をあげて試合中断。
荒い息の二人。

「やっぱり二段の技量やと、なかなか有効が取れんな」

『全日本剣道連盟』によると、有効打突とは、『充実した気勢、適正な姿勢を持って、竹刀の打突部(弦の反対側の物打ちを中心とした刃部)で打突部位を刃筋正しく打突し、残心あるものをいいます』

高段者同士の組み合わせだと、もっと緊迫した勝負で、さらに鮮やかな技の応酬が見られるそう。
私は今の試合でも、すごい勝負だと思うんだけどなあ。

試合再開。

原口が竹刀の先を振って誘いをかける。
飛び込む敦士、そのわき腹をかいくぐるようにして原口が体当たり。
競技場に倒れる敦士。

すぐに立ち上がったけれども、ダメージだったらしく、しきりに頭を振る敦士。

「敦士、しんどくなってきたな」

こうなると、スタミナの問題になるらしい。
ハードな武道ですね。

先に仕掛けた敦士の鋭い刺し面を交わし、原口が敦士の胴を打つ。

審判が3人とも赤旗をあげ、画面には「原口胴あり1本」金色のテロップが踊ります。

「胴は若干「気」が浅かったけど。二段同士やったら、そんなもんか」

技量のある高段者になれば、審判の判定はもっと厳しくなり、なかなか有効を取らせてくれない。
それだけハイレベルな試合になるんだそうです。

別の角度からの再生画像が出ました。
敦士の面はわずかにはずれて原口の肩を打ち、原口の胴は、見事に敦士に決まっている。
……なるほど。

両者立礼で試合は終了。

解説者が横にいたので、楽しく観戦できましたが……。

よく考えると、剣道って、相手を誘ったり隙を突いたりする「合わせない武道」なんですね。
その駆け引きや激しい攻防が剣道の魅力でもありますが。

今、「相手に合わせること」をテーマに合気道の稽古をしているので、ふとそんなことを思ったのです。
「和の武道」の異名がある合気道ですが、厳密に「相手に合わせる」のは大変なことなんです。

……次回に続く……
ラベル:剣道 合気道
posted by ゆか at 10:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 武道系コラム | 更新情報をチェックする
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