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2012年01月17日

走る武道・歩く武道(後編) 組太刀

「合わせることは、相手に支配されることでも負けることでもあらへん。相手に合わせといて主導権を握る。それが「合気」いうもんやろ」


先日、そう夫に言われて、私は反省しました。

それまで「相手に合わせる」ことは、「相手に支配される危険なこと」ととらえていたからです。

かつてアレルギー患者が少なかった頃。
この「相手に合わせる」は「身の危険」とイコールでした。

給食で、教師にジンマシンが出る青魚を食べることを強要されたり、喘息が出る埃っぽい体育用具室の掃除を無理強いされたり。
経験上、体によくないことがわかっていて、それを拒否すると、今度は内申書に「協調性がない」と書かれて、進学に不利になったりもしました。

どんなに相手に合わせようとしても、相手と同じにはなれないし、「同じじゃない」と相手に責められる。
どうせ合わせられないんだから、「合わせる努力」なんて無駄なことだ。

……いつしかそう思うようになりました。

今は、アレルギーに対する世間の人の認識も変わったし、これからの日本は国際化、価値観の多様化が進まざるを得ないので、私のように「ちょっと変わった人」にとっても生きやすい時代になるでしょうが。
子供の頃の「相手に合わせてひどい目にあった経験」が、いまだに尾を引いていて、たとえ「相手に合わせられる部分」があっても、「相手に合わせること」そのものにためらいを感じていたりするわけです。

しかし、今のままではいけないのはわかっているので、当分、合気道を通して「人と合わせること」の修行をしたいと思います。

ちなみに、合気道にも剣道のように、二人一組で木刀を使った稽古「組太刀」をしますが。
他の武道とは性質が違います。

『合気道の剣の合わせは、打つこと、受けることにとらわれないで気を合わせ、相手との調和をとるようにすることが大切である』

合気道開祖の剣と杖の技術を継承した故斉藤守弘師範は、著書の『合気道 剣・杖・体術の理合 第一巻(港リサーチ)』で、こう述べられています。

相手の隙を誘い隙を突く……剣道とは違う目的で、剣の稽古をしているのです。
気迫と駆け引きの剣道と比べて、合気道の木刀の動きは、もっと緩やかな遅い動き。
「相手を攻撃する」ためではなくて「相手に合わせる」ための動きです。

「ちょっと、剣の合わせをやってみますか。今から僕が上段から面を打ちますから、それをしのいで受け流しながら、刀を返して僕の剣を上から押さえてください」

私と先生は木刀を構えて向き合いました。

素振りの稽古でも、木刀の重さに翻弄されているのに、剣を合わせるなんて、とてもじゃないけど無理……と思うけど。
先生はおかまいなし。

「じゃあ、打っていきますよ。えいっ!」

私の体が勝手に動いて、先生の剣を左へ払いのけ、自分の剣の切っ先を、先生の喉元に突きつけてしまいました。

うわぁ。またやってしまった。

「ダメじゃないですか。剣道ならそれでもいいかもしれませんけど。これは合気道なんだから」
「……すみません」

「外すモード」に慣れた私の体が、「相手が剣で切りつけてくる」状態に、反射的に対応してしまったのです。

……合わせるって、本当に難しいなあ……

体術の稽古の時もそうです。

「ほら、また合わせないで、自分で勝手に受けを取る。まだ体勢を崩すのは早いでしょう。反撃だってできるはずなのに。……やりなおし」

実は、相手に投げられる前に、自分から受身を取ってしまった方が安全なのです。

「次の動きに入るのが早すぎます。もうちょっとねばる。相手に合わせて待つ。隙があれば反撃するだけの余裕を持つ。……僕の稽古では楽させませんからね」

にこにこしながら先生は言います。

「合わせられて、なおかつ外せたら、最高の状態やで」

……夫は「合わせることは、相手に支配されることでも負けることでもあらへん」と言った後、そう付け加えてました。

確かに、「合わせること」と「あえて外すこと」ができたら、武道だけでなくて、人間関係をはじめ、いろいろなことに応用できそうです。

なかなか大変ですけど。
ラベル:合気道
posted by ゆか at 14:30| Comment(1) | TrackBack(0) | 武道系コラム | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
偶然ですね。先日自分のブログのコメントの返事に同じようなことを書きました。コメントをいただいたかたは、以前僕が精神的に参っていたときに、ブログつながりで知り合ったかたです。武道についてはほとんど知らないと思います。島村様の今回のブログの後半に書かれていた内容をもっと簡単にした感じで、このかたに「合気」の説明をしました。柳生宗矩の兵法家伝書にも同じようなことが書いてありますね。今は僕も「合気」はそういうふうに解釈しています。今後また変わるかもしれませんが。
Posted by 小山合気会管理人 at 2012年01月19日 11:30
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