世の中には、誤情報によって致命的な判断ミスが起きることがあります。
10年前、喘息薬の副作用事故が多発しました。
当時「喘息薬は規定量を守れば絶対に安全」と言われていましたが事故は規定量内でも起きるのです。
私はこの事故に遭いました。
「絶対に安全」との医者の言葉を疑い、薬の使用を中止した私は、後遺症を残しながらも自力で切り抜けましたが、医者の言葉を信じ、薬を使った多くの患者が亡くなりました。
現在では、喘息薬の副作用事故が起こった場合、即座に薬の使用を停止し、病院で酸素吸入などの措置を受けるよう、患者は指導されていますが……
もっと早く正しい情報が知られていたら、もっと犠牲者が少なくてすんだのに。悔やまれてなりません。
本当に自分で情報を判断するのは難しいです。
さて、情報の読み方として、私がよくやるのは、「統計の深読み」。
例えば、独立系PRコンサルティング会社エデルマン・ジャパン、2006年8月30日のニュースリリース
『テクノラティジャパンとの共同調査による日本のブロガーの動向』。
『2006年4月〜5月に、テクノラティジャパンのブロガーに対して行われたアンケートの結果。自主回答によるオンライン調査。回答者は213名。84.5%が企業(業界情報、サービス、製品)について書いたことがあると回答。70.4%が企業のHPを、62.9%が企業のニュースリリースを信頼できる情報源と回答』
……ふーん。
まず、電卓を叩いてみましょう。
企業情報について書くブロガーが、213名中の84.5%で179.985人。
企業のHPを信用する人が149.952人。
企業のニュースリリースを信用する人が133.977人。
……うーむ。
端数切り上げすると、妙にきりのいい人数。
なんとなく作為が感じられるような気もしないでもないか。
総評:大手ブログ検索サイト、テクノラティジャパンには、数万の登録ブログがあるにもかかわらず、回答者数213名というのは、設問や募集方法に問題があったのではないか。
この時点で今回の調査は「失敗」。
回答した213名のブロガーは、元々企業情報に好意的な人々である可能性が高く、この数字を公平なデータとするのは疑問。
文中に『調査内容の統計学的な正確性については保証していない』と断り書きを入れて、この調査結果を公表しなければならなかったエデルマン・ジャパンは、苦しい立場にあると思われる。
書いているうちに、ふと疑念を持ってしまいました。
……本当に、このやり方でいいのか……
私は、昔勉強した図書館司書課程の「参考業務(レファレンス、今、小中学校で行われている「調べ学習」にあたるもの)」の実習で、「優」だったのが、今も自慢ではありますが。
なにしろ、大昔の情報検索技術を元に、我流で技術をつけ加えただけで、本当にこれが正しいのかわからない。
基礎から勉強しなおした方がいいような気がしています。
そして、「学校で、ネットで調べる宿題出るねんけど、俺、あれ、嫌いやねん。ヒマかかってしんどい」と嘆く、高校1年生の甥に、何かいいアドバイスをしてあげたい。
Googleで「情報リテラシー教育の現状」で検索すると、検索結果の上位に並ぶのは、図書館と大学図書館ばかり。
子供の情報教育について、危機感を持っているのは図書館関係者。
子供の保護者でもなく教育現場の人でもないらしい……非常に心配。
前に、日常コラム『「調べ学習」って……』で、情報教育の現状について書きましたが、今も状況は、それほど変わっていないようです。
ラベル:情報リテラシー