ある武術系の人に出会った話……
『ほんの一言二言会話しただけだったが、おっかない人だった。いや見た目は朴訥な感じだが、異様に正中線が細い。下っ端ですとか言ってたが、歩き方がどう見ても違うので嘘つけ…と内心ツッコんでしまった。稽古風景覗いてみたい…』
なんだか腕の立つ侍同士がすれ違って、お互いに「むむ。できる」とつぶやいているような光景が頭に浮かびますが。
それにしてもなんだろう?
『異様に正中線が細い』って?
正中線……そういえば、時々武道の世界で聞く言葉だけど。
はっきりした意味は知らないや。
しかも武術の修行を極めると「細くなる」ものらしい。
すごく気になるので、とりあえず「正中線」について調べてみました。
『デジタル大辞泉』の解説によると『左右対称形の生物体で、前面・背面の中央を頭から縦にまっすぐ通る線。』
……ううう。大雑把過ぎてわからんがな。
もしかしたら、この言葉は、最近の稽古のテーマになっている「体の中心」と関係がある言葉かもしれない。
「ほら、また斜に構える。相手に自分の中心をきちんと向ける。そうでないと、技は生きてこないですよ。……やり直し」
先生は「心は体の動きに現れる」という考え方の人。
ひょっとしたら、私も日常生活で、ちゃんと相手と向き合っていないかもしれない……
稽古をしながら、そんなことを思ったりしますが。
この「自分の中心」は、「丹田」なのか「ハラ」をさしているのか。
体のどこを基点に動けば「自分の中心を相手に向ける」ことができるのか。
今ひとつつかみかねている上に、「正中線」まで登場してきて大混乱。
ああ、難儀なことになった……
さらに「正中線」について調べると、この言葉は合気道でも出てきます。
『正中線とは体の中心軸で、頭頂部から鼻筋、あご先、喉、胸中、丹田、会陰と流れる身体の前の中心線である』
大阪北部にある『合気道眞武館』のサイト。
なるほど。これならわかる。
『正中線を守るとは、徒手技や武器技に限らず、左右の手を正中線上から大きく左右に外した位置で技を施さない事を言う』
そういえば、最近「ほら、体の中心から手足を離さない。すぐに肘が開くのは悪い癖ですよ。」と注意されてるなあ。
ということは、「体の中心=正中線」なのかな。
それはいいとして……
『異様に正中線が細い』。
この謎がとけない。
つぶやきの印象では武術の修行を積むと正中線が細くなるらしい。
では正中線の実物は?
『西郷派大東流合気柔術』サイトに『正中線と正安定』の図があります。
正座した人型に正中線と、重要な経絡が書き込まれているものですが。
泥丸(上丹田)、印堂、人中、玉枕、天突、膻中位(中丹田)、命門、真丹田(下丹田)、尾閭、会陰……
正中線って、ひょっとして急所の密集地帯?
図では単なる一本の線にしか描かれてないんですが。
武術の修行をすると、これがどう「細くなる」んだろう?
どうしよう。
ますます謎が深まってしまった。
……次回に続く……
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大阪の高槻市やサントリー本社のある島本町で合気道眞武館を主催致しております江見と申します。
この度は私のつたない文章をこちらのサイトでご紹介頂きありがとうございます。
さて、件の「正中線の細さ」ですが、私どもでは正中線を守る為にビギナーの方には「両腕は体側の幅(肩幅)より外にはみ出さない事」と「脇を空けない事」を指導いたしております。
この事は、ビギナーの方の正中線の太さが体側より広いので、最低限、体側の幅まで狭めようとしての指導です。つまりこの幅が上級者ほど狭まって参ります。上級者の正中線は、正中線の定義通り身体の中心線となり、細い線になります。ビギナーの方はどうしても腕力で引っ張っる動作等が多く、正中線が乱れて守れないものだと思います。
武芸者への褒め言葉は「正中線が細いですね」と言う言葉が最高の褒め言葉とも言われる所以です。
また、気が向かれたら「眞武館」のサイトにお立ち寄り下さい。
雑文失礼致しました。
眞武館 江見