文具好きなら誰でも参加できるイベントで、Twitterで大阪文具会の方と知り合ってご招待を受けたのです。
「大阪文具会」……別名「どや文具会」。
参加者が、ご自慢の文具を持ち寄って、「この文具、どや?」と言い合う会なのかしらん。
面白いから会場の片隅で見物しよう。
ということで……気分はすっかり「潜入者」。
事前に「テーマは『お気に入りの筆記具を披露』。各自試し書き用の紙を用意してください」と、主催者から連絡がありました。
「お気に入りの筆記具」なあ……。
私の使っているのは、どこででも手に入る鉛筆やボールペン。
ブランドの万年筆や高級なシャープペンじゃないし、限定モデルのサインペンでもない。
うーむ。ここは笑われても、いつも使ってるやつを持っていくか。
どうせ部外者だし。
しかも、事前に発表されたスケジュールでは『気の済むまで文具トーク』
……4時間も!
うーん。4時間も高級万年筆の薀蓄を語られたら辛いぞ。
あんまり辛かったら途中退席するか。
どうせ部外者だし。
……あああ、だんだん悲壮な話になっていく。
当日は、あいにくの雨でしたが、参加者16名が大阪市の地下鉄淀屋橋駅に集まりました。
それにしても、みんな若い。
20代半ばから30代半ば。
たぶん、私が最年長じゃないかな。
昼食をとる店に行く途中、主催者の『おーるまいてぃー(ハンドルネーム)』さんと話をしながら歩きました。
『おーるまいてぃー』さんは名古屋の人。
東京でも文具会を主催している忙しい身らしい。
「大阪文具会」は4回目で、参加者の半分が初参加の人と聞いて、ちょっとほっとしました。
まず、串かつ屋で昼食。
参加者の中には、神奈川や岐阜、名古屋など、遠方から駆けつけた人もいるということは、この文具会は、すごいものらしい。
昼食後は、大阪市立中央公会堂の会議室へ移動。
ここで二組のテーブルに分かれます。
私のハンドルネーム『科戸の風 @sinatonokaze』と書かれた名札をもらい、文具会の第1部『お気に入りの筆記具を披露』へ突入。
と、その前に……名刺交換。
いつもの名刺を出して、いつものように、「ベストエッセイ!知恵蔵!受賞出版されてるんですか!」と後ずさりされてもかなわないから、文具会用名刺を作りました。
肩書きは冗談半分で『文具術評論家』。
名前と『ventus』のアドレスとTwitterのアドレスだけのもの。
やはり「潜入者」は目立ちすぎてはいけない。
「ブログで文具の悪口ばっかり言ってます」とだけ自己紹介しました。
「そのブログは文具雑誌に紹介されましたか?」と訊く人もいて、「いや、別に」と答えると、露骨に「たいしたことないや」という顔をされましたが。
すんませんなあ。
確かに『ventus』って、文具雑誌には紹介されてないけど。
武道雑誌に紹介されたし、それがご縁で『月刊武道』に寄稿させていただいたりしてるんですけどね。
今のところ、文具は複数の月刊誌が出るほどメジャーな分野じゃないから、これからでしょう。
集まった名刺を見ると……。
ほとんどの人は名前やハンドルネーム、TwitterのIDやメールアドレスだけなので正体不明。
ナガサワ文具センターの支店「エンヌ」の店員や、「呉竹」「キングジム」などのメーカーの人。
文具店開業を目指す主婦や、手作りブックカバーをネット販売する会社員。
『文具アドバイザー』なる肩書きの男性……
文具愛好家って、さまざまなタイプの人がいるんだなあ。
『おーるまいてぃー』さんや、「どや文具会」の自称広報部長のハンドルネーム『なおこ』さんは、『すごい文房具リターンズ』の編集長の知り合いで、東京の文具マニアの間でも知られているらしい。
……うーむ。謎が多いな。
文具愛好家界。
お気に入りの筆記具を披露する前に、なぜか文具が配られました。
名刺と鉛筆をセットで配る女性や、ハワイ土産の文具を配る青年。
初対面なのに「地球鉛筆」やら「mead」のメモ帳をいただいてしまいました。
私も何か持ってくればよかったかな。
『お気に入りの筆記具』は、それぞれ違っていて、「エナージェル」や「ジェットストリーム」といった定番の油性ボールペンを愛用する人、万年筆一辺倒の人。
筆ペンに蛍光ペンの「ZIGチェック」を組み込んで改造した人。
パイロットの加圧式ボールペン「ダウンフォース」の芯を別のメーカーのものに代えて、インクの出がよい加圧式ボールペンに変身させた人。
ウィスキーの酒樽から作られた「ピュアモルト・ジェットストリーム」を推す人。
レイメイ藤井のペン型コンパス「ペンパス」愛用者……
うーむ。コンパスって、よく考えると、確かに「筆記具」だなあ。
私が持っていったのは三菱鉛筆「uni硬筆書写用」。
『新日本様式100選』に選ばれた日本屈指の鉛筆です。
高級万年筆やら限定もののボールペンやらが集まるだろうから、「鉛筆?」と冷笑されるかと思ったけど。
「これ、芯太くないですか?」「6Bなのに8Bみたいに芯が黒い」「試してもいいですか?」と大騒ぎ。
「芯が柔らかい」「字が濃くてくっきりしてる」……参加者は興味津々。
持っていった鉛筆削りのDUXも「革ケース付属で渋いですねえ」「かっこいい!」と大評判。
みんな意外に感覚が柔軟です。
主催者の『おーるまいてぃー』さんによると、これまで東京・大阪の文具会に鉛筆が持ち込まれた例はないらしい。
やっぱり変わってるか。私は。
一通り『お気に入りの筆記具を披露』が終わると、第2部の『第1回OKB48総選挙』。
「OKB」とは「お気に入りボールペン」の略。
48種類の市販ボールペンを、実際に試し書きして人気投票。
「日本一のボールペン」を選ぶ……というイベント。
東京と大阪の文具会とネット投票を集計して、その結果は、10月発売の『すごい文房具リターンズ』で発表される予定。
おやおや。
妙なことに巻き込まれたな。
番号のついたボールペンを、参加者が1本ずつ試し書きして、インクの色、濃さ、書き味、裏写りなどをチェックしていくんですが……
こうなると全員無言。
筆圧が高い私も、愛用の「ジェットストリーム」を超えるボールペンがないか真剣に試しましたが。
これより相性がいいボールペンはなかったですね。
1時間弱で投票は終わり、集計の間、有志による文具交換会「わらしべ長者祭り」が始まりました。
テーブルの上に広げられたのは様々な文具。
旅先のご当地ボールペンや、ショップ限定のマスキングテープ。
販促用オリジナルクリアファイルなど、珍しいものばかり。
自分の文具を出した人が、別の人の文具をもらうのがルールらしく、今回初参加の人は交換用文具を持ってこなかったので、参加できず。
事前に知らされていたら、全員が参加できて、もっと面白かったかもしれない。
交換会が終わる頃、大阪文具会の人気投票の集計結果が出ました。
「5位 ぺんてる・エナージェル」
「4位 パイロット・アクロボール」
「3位 ゼブラ・スラリ」
「2位 スタビロ・バイオニックワーカー ローラーボール」
「1位 三菱鉛筆・ジェットストリーム」
……これが順当な結果のか予想外な結果なのか。
私にはわかりかねるけど。
参加者全員で色紙に寄せ書きしたり、「どや文具」オリジナルスタンプが配られたり。
あっという間に過ぎた楽しい4時間でした。
ちなみに、私は24人目の「どや文具会」会員です。
次回は5月開催予定だそうですが、都合がつけば、また参加したいですね。
ラベル:ボールペン