「次の日曜、出かけるから。ネットの友達が桜祭りを主催するから、ちょっと挨拶してくる」
「何!祭りやと!俺も行く!」
ソファベッドに寝そべっていた夫は、がばっと、身を起こしました。
「え〜。ついてくるの?」
「あかんのか!」
どすのきいた声で夫は言いました。
うわぁ。難儀なことになった。
夫は祭りの屋台が大好きなのです。
「でも、忙しいよ。同じ日に別の場所で祭りが二つあるから。午前中、猪名川町の「いながわ桜まつり」。主催してるネットの友達に挨拶して、ここの屋台で軽く食べて、昼から川西市の「多田源氏まつり」の懐古行列に参加してるネットの友達をひやかして、多田神社に参拝して帰る」
「それは面白い。俺も行くからな」
今回お目にかかるのは、Facebookの「友達」で川西青年会議所の皆さん。
実際に会うのは初めてなので楽しみ。
午前中は兵庫県川辺郡猪名川町の「いながわ桜まつり」へ。
「能勢電鉄の終点で大阪北部の山中に最近開発された新興住宅地」が私の猪名川町のイメージでしたが。
『猪名川町』サイトによると、多田銀銅山から豊富に採れる銀や銅で奈良時代から栄えた町。
清酒と寒天と猪と椎茸と栗と松茸とそば粉が名物か。
阪急電車を川西能勢口駅で能勢電鉄に乗り換え、終点の日生中央まで。
ネットで手に入れた案内図によると、桜まつりの会場はいくつかのエリアに分かれていて、それをつなぐ無料バスが巡回しています。
駅に着くと、ピンク色のシャンパーを着た桜まつりスタッフから、地図入りのスタンプラリー用紙を手渡されました。
10箇所のうち5箇所のスタンプを集めると、先着1000名で限定グッズがもらえるらしい。
でも、スタンプがあるポイント同士の距離はかなり離れてるし、略地図だから道がわからない。
山間の起伏の多い道を何キロも歩いて回る体力もない。
それに「多田源氏まつり」も見に行かなきゃならないので、日生中央駅から巡回バスに乗り込み、「友達」のいるメイン会場へ。
「桜、一週間早かったな」
夫が呟きます。
バス道の右手は600本の桜並木。
でも、桜の花は一つも咲いてない。
「桜も桜の都合で咲いてるから、しょうがないで。まあ、屋台の料理でも食べれば。地場野菜の炊き込みご飯とか、地元産の蕎麦とか売ってるらしいで」
夫をなだめていると、道路の右手の歩道に、机とピンクのジャンパーの一団の姿が見えてきました。
スタンプ押印ポイントです。
でも、バスはそのまま通り過ぎる。
「あんなところにスタンプポイントあったんか」
悔しそうな夫。
バス停の場所とスタンプ押印ポイントが違うわけか。
となると、道を歩いた人の方がスタンプを集めやすいけど。
どれだけの人が歩くかなあ。
そんなことを考えているうちに、メイン会場に到着。
田んぼにテントとステージをしつらえた手作りの会場です。
ここにスタンプラリー賞品の受け渡し場所があったので、限定グッズを見せてもらいました。
猪名川町の猪のマスコットキャラクター「いなぼう」のついた、オリジナルクリアファイル。
「クリアファイルやったら別にええわ」
夫は気を取り直したようです。
どんな賞品を期待してたのか聞くのが怖い気もしますが。
とりあえず、ここの「友達」にご挨拶。
この祭りの実行委員長で、川西青年会議所で活躍していた地元工務店の社長。
「桜のつぼみまつりへようこそ。わざわざ豊中みたいな都会から来てくださったんですね」
「こういう機会がないと、ここまで来れないですよ」
猪名川町から大阪市内へは、阪急電車の急行を使えば1時間足らずの距離。
猪名川町民にとっての豊中市は「毎日通勤で通り過ぎる街」で、豊中市民にとっての猪名川町は「ハイキングに行くところ」。
だから、私が隣の川西市ではなく豊中市から来たことが、彼にとっては驚きだったらしい。
私も「川西市青年会議所で活躍する高校の後輩」がいなければ、この方や猪名川町とのご縁はなかったでしょう。
「生まれた時からこの町に住んでます。ニュータウンもできて開けてきましたが、いい町ですよ。桜まつりは、これまで商工祭だったものを、今年リニューアルしたんです。今回は第1回目で、商工会の店だけで開きました。これからは、もっと大規模な祭りにしたいですね」
うれしそうに彼は語っていましたが……どうだろう。
例えば2日で15万人を動員する市民祭りの「豊中まつり」。
今はかなり削減したけれども、当初の経費が3000万円だったと、祭りのボランティアだった父から聞きました。
祭りの規模が大きくなればなるほど町も地元も負担が増える。
今回の桜まつりは費用678万円のうち、猪名川町負担は367万円。
予算が少なくても、地元高校の吹奏楽部や猪名川町観光協会がステージで楽しい催しをやっているし、地元の飲食店が出す屋台はボリュームもあっておいしく、普通の相場より100円から200円安いので、屋台好きの夫は大喜び。
肝心の桜の花はつぼみなのに大盛況なのは、運営スタッフの努力によるものでしょう。
帰りは再び巡回バスで日生中央駅へ。
ところがバス停は長蛇の列。
バスが来ても、中には他の会場からの乗客が半分ぐらいいて、すぐに満員。
なかなか乗れないのです。
「なんでバス増便せんねん」
「難しいやろ。経費増えるし。これだけ歩かない人が来るのは予想外やったやろね」
豊中まつりの会場は最寄駅から徒歩3分の市営公園だから、夫の不満もわからなくないけど。
これからの「町おこし」は、「費用対効果」も考えなければいけないでしょう。
地元の魅力を知ってもらいたい相手は、地元の人なのか、隣接する都市なのか、全国なのか。
それをはっきりさせずにお金を出しても、町おこしはうまくいきません。
「まずニュータウンの人に地元の魅力を知ってもらう」、「いながわ桜まつり」の方向は正しいと思います。
予定より1時間半遅れて能勢電鉄で日生中央駅から多田駅へ。
多田神社で開かれる「源氏まつり・懐古行列」で、高校の後輩が甲斐源氏の子孫、武田信玄に扮し、川西青年会議所の「友達」の息子さんが少年武者で参加しているはずですが……。
駅についた時には、懐古行列は通り過ぎた後。
しょうがない。
多田神社に先回りして戻ってくるのを待とう。
多田神社は970年創建。
清和天皇の曾孫で源氏の祖の源満仲をはじめ、大江山の鬼退治で有名な源頼光、平忠常を討伐して関東を平定した源頼信、奥羽地方で起きた前九年、後三年で活躍した源頼義、源義家。
5人の武将が祀られています。
この神社の春季例大祭で行われるのが「懐古行列」。
鎧兜で身を固めた源氏の武将たちが馬で多田神社周辺を巡行するほか、少年少女武者や子供みこしも出て壮観なものらしい。
多田神社参道の桜の木は5分咲き。
屋台でたこ焼きとビールを買って、ここでも祭りを満喫する夫。
まあ、しょうがないか。
このところ義母の体調がいいから、今日は2人で出かけられたけど。
次に一緒に出かける機会は、いつになるかわからないし。
重要文化財の桧皮葺の荘厳な拝殿をお参りして、奉納射会を見学。
的を狙う学生たちの厳しい表情は、武士道の原点、平安末期の「もののふの道」を彷彿とさせます。
多田駅前で配られていたパンフレットによると、午前中に神道夢想流杖術(杖道)の奉納演武もあったらしい。
しまった。丸一日かければよかったな。
そうこうするうちに「懐古行列」が戻ってきたらしく、鎧兜姿の鎌倉武将が続々と境内に入ってきます。
源義経や弁慶。
酒呑童子、坂田金時や渡辺綱などの四天王。
公募で選ばれた美女の静御前や巴御前。
武田信玄役の後輩が通りかかったので、名前を呼んで手を振ると、軽く会釈してくれました。
数十キロある鎧兜を身につけ、慣れない馬に乗っての巡行。
本当にお疲れさまです。
少年武者は境内に入ってこなかったので会えなくて残念。
その父親の「友達」から、「また来年きてくださいね」とのメッセージが入りました。
また来年、お目にかかれたらいいですね。
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2012年04月10日
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