「手加減? なんのための寸止めやねん。瓦5枚割る手刀で本気で殴ったら相手死ぬで」
空手四段剣道三段少林寺拳法三段大東流合気柔術二段柔道初段の夫は、そう言いきりました。
空手では、最初に人体の急所、狙ってはいけない部分を教えるそうです。
基本的に「危なくない武道」は存在しないんです。
だから、武道家は常に自分や相手がケガをしないように神経を使うわけですが。
相手に合わせて手加減しすぎるのもいけないし、手加減しないのもいけない。
もっとも手加減の難しい武道……。
それは柔道じゃないかと思います。
以前、私は柔道初段の夫に背負い投げをかけられた経験がありますが。
柔道の投げ技は、合気道の投げ技と違って、相手が受身を取りやすいように、ゆっくりと投げれば、相手の全体重が背中や腰にかかってきて、取り(技をかける側)にとって大変な負担になりますから、難しいでしょう。
でも、「生徒の安全」と「武道の固有の動き」を天秤にかけたら、「生徒の安全」の方が優先。
2012年3月30日付の『産経新聞』によると、静岡県教育委員会は、非常に厳しい柔道の安全指導指針を定めて各市町に通達したそうです。
頭部外傷などの事故が予想される大外刈り禁止。
試合は寝技などの座った状態のものだけで、投げ技を使う試合は行わない。
体格や技能の異なる生徒同士を組ませない。
1、2年生の投げ技は、互いに約束した動きの中で行うだけで、乱取りは禁止……。
文部科学省の学習指導要領では、中学1、2年で「体落とし」「大腰」「膝車」「大外刈り」「支え釣り込み足」「小内刈り」の6種類だけが指定されていますが。
「どうしても6つ全部やらなあかんわけでもないんやで」という但し書きもついているから、静岡県教育委員会は「大外刈り」を禁止したんでしょう。
『県教委では「中学校では柔道の試合を全く行わないこともあり得る。礼に始まり礼に終わる柔道の精神は十分に学ぶことができる」と強調した』
……すごいことになったなあ。
試合をしないって、なんのための柔道なんだろう。
ちなみに『文部科学省』サイトでは、武道必修化の意義と目的について、こう書かれています。
『武道は、我が国固有の文化であり、相手の動きに応じて、基本動作や基本となる技を身に付け、相手を攻撃したり相手の技を防御したりすることによって、勝敗を競い合う楽しさや喜びを味わうことのできる運動です』
うーむ。こういうことを書かれると、合気道や居合道のように試合のない武道は、どうしたらいいんでしょうね。
『相手を攻撃したり相手の技を防御したりすることによって、勝敗を競い合う楽しさや喜びを味わうことのできる運動』だったら、ボクシングやプロレスでもいいことになってしまう。
文部科学省、本当に武道のことわかってるのかなあ。
『武道を学ぶことによって礼に代表される伝統的な考え方などを理解することが期待さ
れます。また、相手の動きに応じて対応する中で、相手を尊重する態度がはぐくまれる
ことも期待できます』
……ある「向上心フォロワー(向上心の強い努力家の若者のTwitterの友人)」から、「どうして、日本の伝統を教育するのが武道なんですか? 茶道を必修化した方が「礼」や「もてなしの心」を学べるのではないですか?」という質問のつぶやきがありました。
私は「武道と茶道、両方必修化するのがベストだと思います。心は茶道で学び、動きは武道で学ぶという形式がいいのでは」と返答しましたが。
実は多くの武道家は、武道の必修化には反対していました。
あまりにも授業時間が少なく、しかも指導者の数も経験も不足している。
静岡県の場合、武道の授業は、中学1、2年で計約20時間、選択制となる3年でさらに約10時間……3年間で30時間は、どう考えても少なすぎます。
あるニュースで、武道必修化に備えて、体育教師たちが柔道の講習を受ける様子を紹介していましたが。
ジャージ姿でマットの上を「でんぐりがえり」してる教師たち。
……うーん。合気道初心者が学ぶ、手と頭を地面につける「一番低い受身の稽古」とそっくりだ。
「柔道は初めてですが、やっぱり武道っていいですよね」と、うれしそうにインタビューに答えてるのはいいけど。
生徒じゃなくて、先生がそのありさまではあかんやろ。
文部科学省は、生徒の安全を守るために、「生徒の体調等に注意」「受身の練習をしっかりとさせる」「受け身が低い位置の衝撃の少ない技から、徐々に高い位置で衝撃の大きな受け身を必要とする技を扱うなどの工夫が必要」など、いろいろと注文をつけてますが。
この先生たちに、ちゃんと指導できるのか心配です。
2012年3月16日付『MSN産経ニュース』で、文部科学省の必修化される武道についての統計結果が発表されました。
一つの学校で複数種目を実施する学校もあるので、合計は100%を超えますが、柔道を選択した学校が64・1%。
2位が剣道で37・6%、相撲3・4%。
やっぱり、体育選択科目時代に行われていた「柔道」「剣道」「相撲」が強いですね。
地域別では、柔道を選んだ学校が最多の33都道府県。
栃木や愛知、佐賀など12県では柔道より剣道が強く、岡山では柔道と剣道が同数。
沖縄は空手道がトップ。
……なるほど。地域差はあるにしても、柔道の授業が失敗したら、武道教育自体に深刻な影響が出てくるなあ。
文部科学省は「安全対策が徹底するまで、授業の開始を遅らせてもいい」と通達していますから、この4月から授業をスタートできる学校は少ないかもしれない。
3年間で30時間しかない授業時間が、もっと減ってしまって、まともに武道のすばらしさを伝えることができないかもしれませんが。
それでも安全の方が大事。
私は武道家として、子供たちが武道をすることで不幸になってほしくないので、今はただ、子供たちの無事を祈るばかりです。
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