「ファイリング事務」は書類の整理やチェック、データ処理をする専門職。
銀行のそれは、小切手の印字を2度間違えると始末書を書かされる厳しい世界だ。
あらかじめ「チェックしやすい」様式でサイズを統一された書類が作られていて、数千通単位の大量の文書を発送する作業では、ミスを防ぐために、封筒と文書を数えてとり揃える担当者と、文書を封筒に入れて封をする担当者が別にいたりした。
合理的で正確で迅速な事務処理作業。
「銀行並みの書類管理技術・図書館並みの情報整理技術」が理想なのだが。
自宅を仕事場にしていると、大きさも厚みも違う雑多な書類があふれかえる。
掃除機の取扱説明書、出金伝票、介護保険証……どんな書類でも1分程度で探し出したい。
しかし、夫に「去年の住民税決定通知の書類はどこや?」と訊かれて、「未分類ボックスの6月のクリアホルダーにあるはず」と答えて叱られているので、現実は理想とは程遠い。
だから、この本には非常に期待していた。
著者は担当者の月100時間の残業をゼロにした実績を持つ事務効率化コンサルタント。
その知恵とは……。
「付箋に期限を記入して期限管理」
「書類の原本誤使用防止のために黄色の蛍光ペンで『原本』と書く」
……基本じゃないか。
どこが「最強」なのか首をかしげながら読み進めると、驚くようなテクニックが……
「適当に切った厚紙にパンチで穴をあけて綴じ紐を通し、手製のファイルを作る」
「近所の文具屋に走って、一番安いコクヨのフラットファイル買え! 数冊作る手間時給換算したら、すごい損失や!」と思わず叫んでしまったが。
おそらく、私が自由に事務用品を買える事業主だから、そう考えるのであって、事務用品の経費が乏しく、人件費のコスト意識の低い会社に勤める人にとって、この本は『最強の文具活用術』なのだろう。
書類管理技術に対する私の理想は高すぎるのだろうか。
『ストレスゼロを実現する! 最強の文具活用術』 オダギリ展子 著 PHPビジネス新書
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