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2012年05月15日

VS.文具検定

「ちょっと勉強したら、この資格取れるかも」
……数年前、文具検定の模擬試験を数問解いてみて、そう思ったんですが。
ずっとほったらかしでした。

文具検定、正式名称「文具知識能力検定」。
日本文具新聞、紙製品新聞、メイブンなどの文具業界紙を母体とした「文房具屋さんドットコム」が主催する、文具に対する基礎知識を試す検定。

元々は経験年数2年程度の文具販売専門職が対象ですが、文具の知識をいろんな人に知ってもらうためにと、一般人の参加も受けつけているのです。

長い間「文具店に勤めてるわけでもないのに、この資格取ってどないするねん」と思ってたんですね。

でも『文具大国ニッポン』の書籍化を目指すなら、「私は文具に詳しい」ということを、わかりやすい形で出版社に提示しなければなりません。
現在文具本を出している著者が誰も持ってない資格、『文具知識能力検定』に合格するのが早道かもしれない。

文具検定は4月20日から23日。
自宅からネット経由で受験する「web試験」形式で催されます。
自宅からネット経由で受ける試験は初体験。

「家で受けれるんやったら、カンニングし放題やんか」と思う方もおられたかもしれませんけど。
それは甘い。

出題は30分で50問。
1問あたり30秒ほどで解かなければなりません。
カンニングペーパーを見ながら解答を選んでいる余裕はないんです。
直感で答えなければ無理。

文具検定は年1度。模擬試験は年に2回あります。
ちょうど模擬試験期間中だったので、ネット上から挑戦。

それにしてもすごい問題数。
400問以上ある。

一般知識、規格・呼称・ブランド・海外など幅広い分野の問題がありますが、JIS規格や海外の高級筆記具の問題が苦手で、平均正答率は74%。
一般人としては合格圏内なんだけど、文具関係者だったら80%正解しなきゃいけないらしい。
合格までもう一息かな。

全国ランキングをチェックすると16位。

『文具検定模擬試験全国ランキング16位かあ。イマイチだなあ(‐_‐;)』とTwitterでつぶやいてみると『すごいじゃないですか』の返事が。

『どのような問題が出るんですか?』
『例えば4択問題で「エーワンの社是について答えなさい」とか。この問題に即答できるのはエーワンの社員だけだと思う』
『「責任者出てこい!」と叫びたくなるような気が』
『おそらく問題を作るプロとアマチュアが混在していて、アマチュアの数の方が多いので、こんなことになってしまったのでしょう』

……というようなやりとりをしていると、

『しまった!Σ(゜Д゜‖)文具検定主催者にフォロー(つぶやきを聞くこと)されてる。どうしよう。問題作りのプロとして手厳しい話をしてしまった。「全国ランキング16位は没収、もちろん本試験も不合格」になるんだろうか(iへi)』

とつぶやくはめになったりして。

最近「問いを作る・答えを作る」タイプの仕事もしているのですが、これは意外に手間がかかります。
まず、試験対象者をきちんと決め、その学力を見積もり、「問いを解かせることで何を学習させるか」を設定します。
その上で難易度を調整して一つの問題を作り上げる。
問題と解答解説を見れば、出題者がプロか素人か一目瞭然になる恐ろしい世界なんです。

模擬試験期間終了後、私は受験準備にかかりました。
400問以上ある模擬試験の解答解説を印刷して暗記。
文具検定過去問題集も購入。
文具雑誌に目を通し、大阪文具会で配られていた文具新製品情報誌の『bun2』もチェック。
『文具検定』サイトで、事前トレーニングページが開設されたので、携帯からアクセスして特訓したけど……

これでも危うい感じがする。
「エーワンの社是」みたいな問題を平気で出すような出題者だから、「なんでもあり」になる可能性が高い。

……こうなると、運を天に任せるしかなさそうです。

4月20日、第5回文具知識能力検定web試験期間開始。
同時に文具検定を主催している「文房具屋さんドットコム」から『島村由花様、文具検定試験が始まりました。よろしくお願いいたします』とのメール。

何が「よろしくお願いいたします」なのかは、よくわからんけど。
変なプレッシャーかけんとってほしいなあ。
落ちたらどないするねんな。

試験当日。風邪気味で気力体力はいまひとつ。
しかし、ここまで努力してきて棄権するのは悔しい。

緊張と体調の悪さを緩和するために、仕事道具の「ビタミンCのど飴」をなめつつ、適度に集中できる「T−SQUARE」の軽快な音楽を流しながらパソコンに向かいます。
「音楽聴きながら飴なめて試験受けるやつがあるか」と叱られそうですが、受験規定では禁止されてなかったし。

では、『文房具屋さんドットコム』サイトから、文具検定試験会場へログイン。
緊張しながら、あらかじめメモしておいたログインパスワードを入力すると……

『パスワードが間違っています』

頭の中が一瞬真っ白になりましたが、気をとり直して『パスワードがわからない方へ』のボタンをクリックし、自分のメールアドレスへ再発行パスワードを送るように設定。
このトラブルのおかげで緊張が解けました。

いざ、受験開始。

出題は多種多様。
ただし模擬試験より問題のレベルが揃っている。
さすがに「エーワンの社是」のような問題は出てこないな。

しかし、出題範囲が広すぎて文具愛好家の手に負える代物じゃないわ。
万年筆ファンは文房四宝の問題にとまどうだろうし、手帳愛好家は太陰暦の問題に苦しむだろうし、デジタル文具マニアは水引の問題に狼狽しそうだ。

文具愛好家は忘れがちなことなんですが、硯もカレンダーも熨斗袋も「文具」なんですよ。
筆記具や手帳やノートだけが「文具」じゃない。
その上、今、文具の世界で取り組みが進んでいるCO2削減やリサイクル原料の話まで出てくると……。

はっきり言って、文具愛好家に文具検定受験はお勧めできません。
「私は文具に詳しい」というプライドを粉々にされます。

私は、「ventus」で200の文具コラムを書く時に、「余談」の形で文具の歴史や関連情報を調べていたので、解ける問題が多いのですが。
それでも大苦戦。

例えば「帆立貝の貝殻を再利用した文具」

……確か「チョーク」だったはず。
ところが解答の選択肢に「チョーク」の項目がない。
知らない間に帆立貝の貝殻を使った別の文具が発売されたらしい。
まずいな。

もし、この検定問題が「正答率30〜50%」、セオリー通りの設定で4択問題を作られているとしたら、「正解」以外に「明らかに間違った答え」が一つ、「ちょっと怪しい答え」が一つ、「正解に似た引っかけの答え」が一つ。
さて、どれが正解か……

ああ、こんなところで問題作成の仕事の経験を生かすことになろうとは。

文具検定の所要時間は30分。終了時間は迫る。
ところが、いくら考えても50問中12問の正解が確信できない。
合格点は80点、40問正解ですから、この12問が全部間違っていたら不合格。

文具検定は1年に1度、4月にしかありません。
ここで落ちたら来年再受験になる。
迷っているうちに、ストップウォッチの数字はどんどん減っていき、すでに残り時間2分30秒。

「もうええわ。来年受けたらええんやろ」と、やけになって『試験結果を見る』のボタンを押した瞬間、画面が白く反転。

『おめでとうございます!島村由花様 96点で合格です』

「よっしゃっああああ!」と、思わずパソコン前でガッツポーズをとってしまいました。

その場で合格認定書の申請を手続きし、連休明けに認定書が送られてきました。

アピカの赤と黄色のピーマンの写真柄のクリアホルダーに入ったA4の「文具知識能力検定合格認定証」。
ちょっとした宝物ですね。
ラベル:事務用品 文具
posted by ゆか at 15:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 文具コラム | 更新情報をチェックする
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