その時注意しているのは病院の受付。
カルテや問診票、領収書や請求書といった膨大な書類の山を、わかりやすく検索・保存しやすくしている。
その整理術を学んで自宅の仕事場で役立てたいのです。
ある診療科の受付で、次々と運び込まれる問診票に、延々とチェックマークを入れ続けてる女性がいました。
使っている筆記具は赤鉛筆と青鉛筆。
なんで、蛍光マーカーじゃないんだろう?
……あ、ひょっとして「退色」の問題か。
学生時代、よく教科書に黄色の蛍光ペンでアンダーラインを入れたけど。
いつのまにか色がうすくなったり消えたりしていました。
確かに色鉛筆の方が、保存性がいいかもしれない。
『ゼブラ株式会社 お客様相談室』によると、蛍光ペンのインクには染料タイプと顔料タイプの二種類があり、長期保存に向いているのは顔料タイプのインク。
新聞・雑誌などの酸性紙や再生紙退色しやすく、教科書やノートなどの中性紙は退色しにくい。
なるほど。
ちなみに「退色問題」について、『株式会社資料保存器材』に興味深いことが書かれています。
この会社は、図書、雑誌、新聞、地図、図面、写真などの紙媒体記録資料のコンサベーション (利用のための修復)と、文化財を長期保存するためのアーカイバル容器の製造の専門会社。
「資料保全のスペシャリスト」集団です。
このサイトによると、耐光性で顔料系の黒インクの水性ペンなら、かなり長期保管できるらしい。
では、カラーインクはどうでしょう。
実は「公文書作成の総本山」こと法務省が、昭和59年に「使ってもよし」と太鼓判を押しているペンがあるんですね。
……それは、サクラクレパス「ピグマ」
『サインペン「ピグマ」により戸籍簿等に記載することの可否について (昭和五十九年三月十六日付け戸第一八三号宮崎地方法務局長照会、同年七月十六日付け法務省民二号第三五九九号民事局長第二課長回答、同日付け法務省民二、第三、六〇〇号各法務局民事行政部長、地方法務局長あて民事局第二課長通知)』
……なんかたいそうな表題だな。
『(通知) 標記の件について別紙甲号のとおり宮崎地方法務局長から照会があり、別紙乙号のとおり回答しましたので、この旨貴管下支局長及び市区町村長に周知取り計らい願います』
『(別紙乙号) 本年三月十六日付け戸籍第一八三号をもって照会のあった標記の件については、照会の用具による戸籍簿等の記載を認容して差し支えないものと考えます』
難しそうな記述ですが、要するに「戸籍簿のチェックに「ピグマ」使ってかまへんか?」「かまへんで」という話です。
いつもながら法務省は、やることが大がかりですなあ。
この「ピグマ」は、1982年、世界で初めて開発された顔料インキのサインペンで、海外の資料保存分野では有名らしい。
アメリカ国立公文書館や、アメリカ自然科学博物館が、耐久性テストをすませて使っています。
でも、なぜ日本では「耐久性」の検査結果が公表されていないんでしょうね。
文具各メーカーは開発時にインクの耐久性をテストしているらしいけど。
その結果は公表されていないので、ユーザーには「耐久性でペンを選ぶ」ことができません。
病院で、書類のチェックに赤鉛筆と青鉛筆が使われていたのは、「すばやく書けるか」と「価格」の問題じゃないかと思います。
サインペンは、書くたびにキャップの取り外しが必要ですからね。
それに赤鉛筆の方が安いし。
でも、「ピグマ」だって色は豊富。
太さも色々あるので、書類チェック用ペンとして検討しようかと思っています。
ラベル:サインペン
むかしのロシア人は、樹皮を紙のように使っていたそうです。しかし、インクを使って書くことは少なく、たいていは太い針で文字をほりこんでいたそうです。そのため数百年たっても判読が可能で、捨てられてのこった樹皮の手紙が当時の生活を伝える貴重な資料になっているそうです。