第1回目の今年は、国内外の誰が見ても一目で「新日本様式」が理解できるものを選出したらしい。
今年選ばれた53件に「J」マークをつけて、国内外に情報発信、啓発普及させ、国際的な競争力を高めるそうな。
応募は公募せず、会員のみが応募できる。
条件は、日本企業。日本製。2006年10月30日時点で、購入・利用・体験・アクセスが可能。
プロダクト、コンテンツ、サービス、システム、空間などを対象とし、ジャンルは限定しない。
座長の福川伸次氏((財)機械産業記念事業財団会長)は、「今日的な日本らしさで選んだ」と語るけれど。
日清食品カップヌードル、TOTOのウォッシュレット……世界に冠たる大発明。
トヨタPRIUS、本田技研工業ASIMO……日本の先進技術。
サントリー緑茶「伊右衛門」、太宰府天満宮・季節ごとに色が変わるおみくじ……無難。
ニンテンドーDS Lite、ファイナルファンタジー]U……海外の「OTAKU」受け狙い?
ガンダムやポケモンじゃ、いけなかったのだろうか?
北条鉄道ボランティア駅長、日本カイロ工業会・使い捨てカイロ……うーむ。わからん。
経済産業省が提唱した新日本様式協議会は2006年1月に発足。
新しい日本ブランド形成の推進団体。
日本を代表する大手メーカー、映画会社、百貨店など企業51社、大学・機構・組合など21団体で構成。
外務省、経済産業省、国土交通省、文化庁がオブザーバー参加。
『後世に伝えるべき伝統文化や技術を「新日本様式」で再生し、育成します』とサイトに書いてあるけれど、本気かなあ?
なんだか急ごしらえのような感じ。
選定されたもののほとんどが、最初から有名なものに、ただお墨付きを与えたような……
私は国文卒なので、日本の伝統文化について、人より少し詳しいけれど、日本の名もない職人、特に江戸時代の人は、ものすごいものを作っています。
選考委員は、博物館で、もう少し日本の伝統文化を勉強してから、残りの47品を選んでほしいなあ。
さて、これと似て非なるものが、今年50周年を迎えたグッドデザイン賞。
『登竜門』(『ジャパンデザインネット』のコンペティション・ポータルサイト)に歴史が載っています。
Gマーク制度のスタートは、1957年3月。
特許庁に設置された意匠奨励審議会から。
グッドデザイン選定の目的は、デザイン振興と盗用防止と、そして、国民生活の向上。
当時は現在のような申請制度ではなく、業界団体や審議会、専門分科会委員などから推薦された商品が中心で、第1回目の選定商品は47点。
第21回(1977年)、Gマーク発足20周年記念行事として、初めて「賞」を導入。
ロングライフ賞もできました。
それまでは、デザイン水準を高める為に「選定」だったのが、デザインレベルが全体的に向上したので「賞」を設けたそうです。
1998年、G賞は民営化。
通商産業省(現経済産業省)主催から(財)日本産業デザイン振興会主催になったのですが、今再び、経済産業省が新日本様式を作ったのが不思議。
この謎が、グッドデザイン賞に30年以上関わっている(財)日本産業デザイン振興会のGマーク事業部部長、青木史郎氏へのインタビューで、ちょっとわかった気がします。
1957年当時、海外で日本製品が「模倣」と強く非難されていて、輸出振興のために、オリジナリティの高い商品を作らなければならなかったこと。
戦争に負けて文化まで失ってしまい、デザイナーに「自国の文化を再構築しなければ」という危機感があったこと。
この2つの切迫した事情が通産省の「グッドデザイン政策」を生み出したのです。
なるほど、現在の状況は50年前と似ていますね。
メイドイン・ジャパン商品は、アジア諸国の機能面で追いつかれそうになっている。
経済振興のため、国が乗り出してくるほど、切羽詰った状況なんですね。
……しかし、「新日本様式」。本当に大丈夫なのかなあ。
青木氏はさらに語ります。
『「グッドデザイン賞」は、いわゆるデザインのコンクールではありません。政策的なものを背景としてるという点。それと、デザインされた結果が“生活の質を向上させるのか、そのことによって産業の質が変わるのか”ということを論議しているので、普通の賞とは違った視点から出ている賞だと思っています。良いか悪いかを判断するのはユーザーの問題であって、ユーザーに参考になる、違いがわかる情報を的確に提供するのがGマークの役割と考えています』
私は、柳宗悦(日本民藝館館長・工業デザイナー柳宗理の父)の提唱した『用の美』(道具が、その機能を極限まで発揮できる形に完成された時、その道具は「美しい」)の思想を、そこはかとなく感じさせる、グッドデザイン賞商品が、昔から好きでした。
そして、美しく使いやすいものがたくさんあって、消費者が、その中から自由に選べる……それは、すばらしいことではないかと思うのです。
そういうわけで、私は今後も「G賞のまわし者(グッドデザイン・モニター)」として、活動していきたいと思います。
ラベル:グッドデザイン賞