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2012年12月15日

型稽古(前編) 躊躇

「ところで、その「小手返し」とかいう技がうまくなると、何の役に立つんや?」


唐突な母の言葉に私は驚きました。

実家で母とお茶を飲みながら、合気道の関節技……「小手返しがうまくいかへんねん」という話をしていた時のこと。

喘息で走ることをはじめ、あらゆる過激な運動にドクターストップがかかっている状態の娘が、なぜか「合気道」という、なんだか今ひとつわからない武道を続けている。

……「合気道ってなんやろか」と、母は素朴な疑問を持っていたようです。

この時、茶帯(上級者)になったばかりの私は答えました。

「……まだ茶帯になったばかりやから、ようわからんけど、その技がうまくならないと昇段審査で初段なられへんねん。喘息が軽くなる丹田呼吸法の習得のスタートラインが初段やから、この技をクリアできんことには、どうにもならん」

そう答えたけど……あんまりいい答えじゃなかったような気がする。

ところが、念願の初段になった今も、きちんと母の問いに答えられないんです。
いまだに「小手返し」をかけて、うまく相手の体勢を崩せる時もあれば、失敗する時もあるので。

しかし……「崩せりゃいい」……のかなあ。

『佐々木合気道研究所』の佐々木貴所長は、このように警告しています。

『長年稽古を続けていくと、力がつくし、要領もよくなるので、相手を倒すことは容易になる。また、自分より後に始めた後輩も増えるわけだから、倒すことができる相手も多くなってくる。ここが、ひとつのターニングポイント(分岐点)になる。この時点では、相手を倒したり抑えることができれば上手であると考えるから、相手を倒すことが第一となってしまう。相手が倒れなければなんとか倒そう、きめようと、体勢をを崩してまで足をかけたり、しがみついたりしてくる。 これで、相手をなんとか倒したりきめたりできればよいが、相手が倒れないと、自分がこれまで稽古してきたことはなんだったのかと、考え込んでしまうだろう。この時点で稽古を断念する人が多いようだが、残念である』

相手を倒すことに集中すると、どうしても力に頼った技になってしまう。
稽古している最中に、技をかけられて「ここまで無理やり押さえ込まんでも」と思う相手とあたることがあります。

不思議と二段、三段クラスの女性有段者に多く、男性で手首が痛くなるほど関節技を極めたりする有段者はめったにいません。
男性より女性の方が非力だから、確実に相手に関節技をかけたり、投げ飛ばしたりするために強い力がいるのかなあ。

「合気道の組手の相手は仲間やねんから、くれぐれも反射的に迎撃したりしてケガさせんようにな」

合気道をはじめる前に武道十三段の夫に、そんなふうに釘を刺されているので、初心者の頃から、稽古相手を傷つけないように神経を使ってきました。
それは今も変わらない。

それに力で押さえ込むのは、私が理想としている「柔らかい合気道」に反する。

「もし、相手が悲鳴をあげるほど関節技をかけたり、力任せに相手を押さえ込まなければ二段に昇段できないんだったら、そんな二段なんかいりません」

そう口走って「そんなこと言っちゃいけません。そうじゃない方法もあるはずです」と先生に叱られたりしましたが。

「とりあえず相手を確実に崩せること。力をそれほど使わずに崩せるポイントは必ずありますから、そこを見つけましょう」

……ということで、稽古を続けているわけですが。何か釈然としないなあ

……次回に続く……
ラベル:合気道
posted by ゆか at 10:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 武道系コラム | 更新情報をチェックする
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