そうじゃない方法はないのかな。
こういうことを思うのは、たぶん私が子どものころから喧嘩ばかりしてきて、我流で護身技術を身につけて……いまだに、それを実戦で使うはめになっているからです。
実戦の場合は、「勝つか負けるか」どころか「殺すか殺されるか」という覚悟で立ち向かい、あらゆる禁じ手を使わないと切り抜けられない。
「小手返しがうまく極められた」とか「入り身投げがうまく投げられた」というレベルの話じゃないんです。
そういう特殊な事情があるので、「力ずくで技かけて、稽古仲間に痛い思いさせたくない」と思ってしまうのでしょう。
しかし、力はいらないにしても確実に技はかけたい。
ここは一つ、夫に相談してみましょう。
夫は空手4段剣道3段少林寺拳法3段大東流合気柔術2段柔道初段で、空手と剣道の指導の経験があります。
「合気道の技を力ずくで技をかけない方法ってないかな。2段、3段の女性で、力ずくで相手を投げたり極めたりする人が多いんだけど。私はそれは嫌だな」
「そりゃ、力の方向がズレとるから、無理に力でなんとかせんとあかんのやろ。コツさえつかめば、無理な力使わんと相手崩すのはたやすいことやで」
「たやすい?」
「四つ足の犬や猫と違って、人間は二本足で立っとるし、しかも頭が重い。力学的に、かなり危ういバランスで立っとるものやねん。だから、ポイントをうまく突けば、体勢を崩すのに、そんなに力はいらんはずや」
「ポイントをうまく突く……そこが難しいんだ」
「そりゃ稽古が足らんからやろ。まあ、女が大の男に腕つかまれてしもたら、なかなか動かせんけどな。人間は突っ立ってる時の方が移動してる時よりもバランスがとれてる。そやから腕つかまれる前に出るいうのも一つの手やで。こちらが主導権握る。大体、実戦の時、お前、おとなしく相手の攻撃待ってるか」
「すみません。かなりひどいことやってます……」
合気道の稽古の時は、相手が手首をつかんだところからはじまることが多いから、相手が手をつかんでくれるのを待ってることが多いけど。
それがいけないのかもしれない。
「コツがつかめんから力に頼る。コツさえつかんでしもたらええわけや。合気会では、力ずくで技かけないと昇段でけへん規定があるわけでもないやろ。力使っても使わんでも、とにかく技さえきっちり極めたらええんとちゃうんか。まあ、とりあえず、相手の力の方向をずらすことを意識して稽古してみ。お前は勘鋭いから、たぶん人よりコツつかむのは早いはずや」
夫は笑っていました。
そういえば女性有段者でも、4段以上になると、力ずくでない「柔らかい技」をかける方が多いです。
ひょっとしたら、「女性有段者の技が力ずくになる」というのは、上達する時に通過するプロセスの一つなのかもしれません。
ちなみに「技が効かない」という壁に突き当たった人に向けて、『佐々木合気道研究所』の佐々木貴7段は、こんなアドバイスをしています。
『ターニングポイントからの稽古は、それまでのものとは異質なものになるだろう。しかし、それまでの形稽古は続けていかなければならない。なぜならば、形稽古の形の中に、技があるからである。壁に突きあたったなら、形稽古のやり方を変えなければならない。相手を投げたりきめたりすることを目標にしないで、技をみつけ、見つけた技をつかっていくことである。自分をよく見、自分の動きや息遣いを注意して、稽古することである。受けを取ってくれる相手は、自分の技に応えてくれるありがたい稽古支援者なのである』
本当にありがたいアドバイスですね。
ヒントが見つかったことだし、地道に稽古を続けていきたいと思います。
ラベル:合気道
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