……苛立たしげに同業者の女性は私に言った。
執筆の世界では自分の専門分野を一つに絞って経験を積んでいくのがセオリーだ。
思いつくままに賞を獲ったりしたのは失敗だったのか。
しかし、出版業界は縮小しているので、「やりたいこと」として選んだ分野が不景気になったら失業してしまう。
もし「やりたいこと」が変わったらどうする?
それに「やりたいこと」が実現できなかった時も辛いかもしれない。
ちなみに、Twitterのフォロワーには甥と同じ年代の就職活動中の学生も多く、「自分がやりたいことが絞れなくて。やりたい仕事につけるか不安」と私と同じことで悩んでいる。
「やりたい仕事」って、いったいなんだろうか?
この本は「正しいキャリアの積み方」について、『「上から目線」の構造』などの著書で知られる心理学博士が書いているもの。
著者によると「やりたいこと」とは「時を忘れて没頭できること」らしい。
今「やりたいこと」がなくても、目の前の仕事に集中すれば充実した職業生活ができて、「自分にできること」が増え、いつかは「やりたい仕事」につけるかもしれない……
1955年生まれ、日本の社会がまだ柔軟性を失っていない時代に職業生活の大半を過ごした著者にとってはそうかもしれないが。
今はキャリアの方向転換が難しい時代だ。
結局、ペンネームも受賞歴も捨てられなかった私だが……
一見とりとめのない受賞歴が才能と得意分野を担保する形になって仕事が増えはじめた。
やりたいことを「専門」よりも緩やかな「領域」というくくりにして、一つの得意分野がダメになっても対応できるようにしている。
若い友人たちには先輩として「今、やりたいことがわからなくてもいいけど、自分に向いていないことだけは仕事にしないように」とだけはアドバイスしたい。
『「やりたい仕事」病』 榎本博明 著 日本経済新聞出版社
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