新着記事

2007年01月20日

『遺品整理屋は見た!』 

「天国へのお引越しのお手伝い」。
全国展開する遺品整理専門会社・キーパーズのキャッチフレーズだ。

遺品整理から形見分けの全国配送、葬儀社紹介。
部屋の清掃・消毒。
リサイクル品の売買。
不動産売却・解体。
リフォーム相談。
車やバイクの廃車手続きと、そのサービスは至れり尽くせり。

独居老人の孤独死の増加で、今後も需要が高まる遺品整理業。
この本は、キーパーズ社長の吉田太一氏が、自分の遺品整理業の体験を書き綴ったもの。

人が死んだ時に遺品が出るが、遺族が引き取らないものも多い。
不要な家財道具や衣類。
発見が遅れた孤独死の人の遺品は、死臭がついて、遺族が引き取りを拒む。
それらを処理し、場合によっては供養する。
遺体の片付けや部屋の消毒や清掃など、原状回復も仕事だ。

一人暮らしの人が死んだ時の、残された家族の悲しみ。
不動産会社からの賠償要求など、家族にふりかかる負債。
遺産分配の確執。
発見が遅れた腐乱死体のすさまじさ。
死臭に悩まされる近隣の人々。
次の入居者が見つからない大家の悩み……

孤独死は、色々な人に迷惑がかかる。
ほんの少し、近所の人や家族が様子をみていれば、避けられたケースも多い。
確かに、昔から「家族に看取られて自宅で死ぬ」のが理想とされているが……

以前、私と夫は、危篤になった知人を見舞ったことがある。

その人は、自宅で大勢の家族に囲まれて床についていた。
だが、苦しむ本人の周りでは、遺産分けの話が出たり、時計で引き潮(引き潮の時に人は死ぬ)の時間を見る人もいたり……
夫と私は、いたたまれぬ思いで逃げるように帰った。

その人は裕福な老人だったのだが……
本当に人の死にざまは難しい。

この本は、遺品整理業を「お客様の感謝の言葉が励み」と誠心誠意勤めている、著者本人の人柄のせいか、人の死にまつわる恐ろしい話を書き綴っているのに、やわらかい。
故人と家族に対する思いやりが、行間からあふれているからだろう。

『遺品整理屋は見た!』 吉田太一 著 扶桑社
ラベル:遺品
posted by ゆか at 09:46| Comment(1) | TrackBack(0) | 本読みコラム | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは。

今月のアクセス解析では、またもや拙ブログのご紹介を
いただき、ありがとうございました。

かなり恐縮です。

きちんと本に向き合うどころか、その本の中の「読みやすい」部分を
どこかでピックアップしている自分を、毎回感じているからです。

ある本について思ったことを、誤解をおそれず、正直に書くのは
難しいものです。

その点で、一貫して果敢な姿勢を取られている島村さんの書評には、
学ぶところがたくさんあります。

こちらの本も、興味深い内容だけに、
取り上げ方が大変難しい本のひとつだと思うのですが、
フィルターをかぶせることなく、全てをまっすぐに
紹介されている…そこがすごいと思います。

本はもちろん、書評にも、書かれた方の人柄が表れるのでしょう。
私はまだまだだなあ、と思います。
Posted by ふらら at 2007年01月28日 12:42
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
にほんブログ村ランキング
こちらには『ventus』で書かれている内容と同じ分野のブログがたくさんあります。
もし、よろしければご覧ください。

武術・武道ブログランキング

ステーショナリー雑貨ブログランキング