民放テレビの広告市場は脅かされている。
著者は『日経ニューメディア』の記者。
民放テレビ局と周辺業界を取材した本……のはずなのだが、よくわからない。
難解な専門用語が出てくるわけでもないのに。
ピースの足りないパズルを組み立てているようで、もどかしい。
「よくわからん」と書くのは悔しいので、レポート用紙に「民放テレビ局」と書き、関係図を書きながら本を読みなおした。
序章で、民放局の仲間として出てくるのは、芸能界、家電メーカー、スポンサー、番組制作会社、政府……
それなのに、第1章がNTT、2章が地方局、3章がNHK……
混乱の原因は、本の構成にあるようだ。
まとめなおしてみよう。
まず、テレビ用電波を使うには放送免許が必要。
政府が免許を民放局に与える条件は、事故や災害時の緊急報道番組などを優先的に放映すること。
首都圏の民放局(キー局)は地方局とネットワークを作り、「全国放映」の名目で大企業から潤沢な広告費を得る。
番組は制作会社に発注。
制作会社は芸能人を使って番組を作るが、著作権はキー局のもの。
放送済みの番組は地方局が買い取り、地方企業のCMつきで再放送……
よくできた仕組みだ。
放送用電波を独占し、高い視聴率を武器に、企業から巨額の広告費を得ていた民放局。
だが、インターネットの登場で状況は一変。
「地上波デジタル放送をネットで」と、視聴者を有料放送契約へ誘うNTTなどの通信会社。
視聴者層の違いで、民放局と棲み分けしていたNHKも、有料ネット放映事業に参入。
番組制作会社は芸能界と組んでネットドラマを制作。
家電業界はネットテレビを製造。
通信業界と放送業界の融合政策を打ち出す政府……
視聴率の下がることばかり。
そして、テレビの宣伝効果に不信感を抱く企業……
丹念な取材で、激変する民放テレビ業界を描いた興味深い本なのだが。
惜しい。
『テレビはインターネットがなぜ嫌いなのか』 吉野次郎 著 日経BP社
ラベル:テレビ
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