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2007年02月20日

Gマーク鉛筆とJマーク鉛筆

Gマークはグッドデザイン賞。
Jマークは新日本様式。両方とも、日本の優れたものを選んで国内外に広めています。
(詳細は『グッドデザイン賞と新日本様式』にて)

ちょうど、それぞれの賞を受賞したものの中に、私たちにとって身近な鉛筆があったので、今回、それを例に、2つの賞(新日本様式は100選)について考えてみました。

まず、鉛筆の歴史から。

鉛筆の歴史は意外に古く、現存する最古の鉛筆原稿は、1565年、スイスのコンラート・ゲスナーが書いた原稿。
当時の鉛筆は現在とは違い、木の筒に黒鉛の塊をつめたものでした。

実はこの頃、すでに日本にも鉛筆が渡来していて、伊達政宗や徳川家康愛用の鉛筆も現存しています。

現代のように、削って使用する鉛筆は、ドイツのステッドラー社が1616年頃に発明。

日本では、1873年(明治6年)、欧米から帰国した小池卯八郎が、日本で初の鉛筆製作に成功。
1887年(明治20年)、東京新宿で、真崎仁六が真崎鉛筆製造所(現在の三菱鉛筆)を創業。

そして、1913年(大正2年)、小川春之助が東京浅草で、小川春之助商店(現在のトンボ鉛筆)を創業し、鉛筆は本格的に大量生産されていくのです。

『ウィキペディア(2007.2.13)』によると、鉛筆の木軸が6角形なのは、3本の指で持ちやすいことの他に、同量の木材(アメリカのインセンスシダー)から一番多くの鉛筆を作れるため。
6角の次に丸が経済的で、3角などは木材を多く消費する……ところが。

『日本鉛筆工業協同組合』サイトによると、今は3角どころか、ハート型や星型鉛筆もあります。
これは、木軸の廃材から鉛筆を作る技術が確立されたからでしょう。

この廃材を継ぎ合わせる技術を駆使して作られた鉛筆が、2005年グッドデザイン賞受賞の『トンボ鉛筆木物語・黒赤鉛筆』(2本セット155円)。

木軸を加工する時にできる端材の中で、使える部分を集め、「フィンガージョイント製法(指と指を組み合わせる形に似ていることからそう呼ばれる)」で繋ぎ合わせて作られた、6角木軸の鉛筆。
黒の部分の芯は、リサイクル黒鉛。

よく使うHB黒鉛筆と赤鉛筆を、7:3で組み合わせた美しいデザイン。
塗料も、わずかに木肌が透けて見える程度の濃さにとどめ、「環境にやさしい」をアピール。
エコマークつき。

使ってみると、書き心地、強度とも、普通の鉛筆と変わりません。
さすがです。

一方、新日本様式100選に選ばれた鉛筆は、『三菱uni・硬筆書写用鉛筆4B・6B』。
これは、6角と3角があるので、3角の6Bを選んでみました。(3本セット315円)

小豆色のつややかな3角の木軸に、緑と金の線が上品。
3角の鉛筆は初めてですが、丸や6角と違って回転させにくく、小型鉛筆削りでは削りにくい。
カッターナイフを使った方がいいでしょう。

特徴は「特殊な油を染み込ませた黒鉛使用。なめらかな書き味」「黒く太い芯は「トメ・ハネ・ハライ」などの筆タッチが表現できるので、硬筆書写に最適」……

確かに芯は黒々と太い。
「黒赤鉛筆」の芯の1.5倍の太さ。
手元にあった「三菱鉛筆uni・6B(6角)」とくらべて、書き味が驚くほどなめらか。
3角軸も意外と持ちやすい。

……なるほど。さすがに、どちらも異なる意味で「優れた鉛筆」です。

ただ、問題は、その優れた点を、国内外の人々に、どうアピールするか……

例えば、『トンボ鉛筆木物語・黒赤鉛筆』を外国人に紹介すると……
「エコロジカル・ペンシル、グッド!」と賞賛されるでしょう。
現在、環境問題は世界的な関心事ですから。

でも『三菱uni・硬筆書写用鉛筆』は……
「ナゼ、鉛筆ナノデスカ? 書道ナノニ筆デハナイノデスカ?」という反応が返ってきて、説明に苦しむことになるかもしれません。

海外の美術館は、日本の毛筆書画を所蔵していることが多く、海外の人にとっては「書道イコール毛筆」のイメージが強いでしょうから。

確かに、明治時代以前、寺子屋などで教えていた「読み書きそろばん」の「書き」は毛筆でした。
明治5年、学制(全国統一の教育制度)によって「習字」が独立教科に。

そして明治33年、小学校令改正で「習字」は「書き方」という名で国語科の中に。
おそらく、この頃から硬筆書写(鉛筆の書道)がはじまったものと思われます。

昭和16年の国民学校令で、「習字」は「書道」として独立。
硬筆(実用書道)と毛筆(芸術書道)に分かれて現在に至るのですが……

そこまで、海外の人に説明しないと、彼らは納得しないと思います。
(ちなみに、『上越教育大学押木研究室』サイトが、日本の書写教育について詳しい)

「日本発の優れたものを海外にアピール」……

グッドデザイン賞が、世界共通の関心事、「エコロジー」「ユニバーサルデザイン」などに重点を置いているのに対し、新日本様式は「日本の伝統の中から生まれた新しいもの」という制約があるわけです。

新日本様式の方が、「選んだものの歴史的背景」について、より詳しく説明しなければならないのに、その説明が、なおざりにされているような気がします。

国文科で、上代文学(古事記・万葉集など)を専攻していた私は、同世代の人よりも、日本の伝統文化について、多少知っているつもりです。
日本には優れた伝統文化があるのにも関わらず、それが、きちんと若い世代や外国人に伝わってはいない。
非常に残念です。

新日本様式100選は、残り47品目。
その点を考慮して選んでいただきたいものです。
posted by ゆか at 15:36| Comment(0) | TrackBack(1) | 日常コラム | 更新情報をチェックする
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