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2013年03月09日

武祭(前編) 鹿嶋の武人と備後の武人

『誰か演武に出られる方おられませんか?』

こんなコメントをつけて、Facebookに『第36回日本古武道演武大会』のポスターの写真を載せたのは、NHK時代劇『塚原卜伝』に出演していた鹿島新當流剣術(かしましんとうりゅうけんじゅつ)継承者の「鹿嶋(茨城県鹿嶋市)の武人」。

「見に行かれる方」じゃなくて「出られる方」っているかなあ……。

日本古武道演武大会は日本武道館と日本古武道協会の主催で、年に一度行なわれるイベント。

明治維新の後に現れた柔道、剣道、合気道、空手、少林寺拳法などを「現代武道」。
江戸時代以前に成立した武道を「古武道」といいます。
全国各地で伝承されている「古武道」、それぞれの流派の「宗家」のトップレベルの演武が見られるのが日本古武道演武大会。

『日本武道館』サイトのプログラムによると、今年の日本古武道演武大会は姫路。
出場団体は34。
日本古武道協会加盟団体は79団体ですから、全部が毎年出るわけではないのですね。

最古の柔術・竹内流柔術腰廻小具足(たけのうちりゅうこしまわりこぐそく)、合気道の源流・大東流合気柔術(だいとうりゅうあいきじゅうじゅつ)も出てくるのか。
誰か知り合いが出てると、さらに楽しいのに……と思っていると。

『誰か日本古武道演武大会に出られる方おられませんか?』……Twitterで、鹿嶋の武人と同じことをつぶやいている方がいました。
武道フォロワーで、Facebookの「友達」でもある「いっきょう」さん。
備後(広島県福山市)の佐分利流槍術の伝承者。

『日本古武道協会』サイトによると、佐分利流槍術の開祖は佐分利猪之助重隆。
戦国時代に発祥した槍術です。掲載されている演武の写真によると、戦国時代の武将が身につけていた鎧武者姿で槍を振り回すらしい。
これは楽しみだ。

「古武道演武大会見に行きます」と返事のつぶやきをすると、「私も行きます。お目にかかるのが楽しみです」と、別の方からお返事をいただきました。
神戸の合気道家「しんのすけ」さんと、九州の柔道家「いなかじん」さん。

……ますます楽しみになってきました。

当日は、片道2時間かけて姫路市の兵庫県立武道館へ。
10年前にできた新しい建物です。

広大な演武場を囲むように東西南北4方向に観覧席。
天井には四面の巨大スクリーンがあり、他の角度から映した演武の画像を同時中継で見られるようになっています。
最新設備なのはいいけれども、床がツルツルしていて固そう。
私だったら、こういうところで合気道の演武はやりたくないなあ。

入場料は大人500円、子ども300円。
大会プログラムは500円。

このプログラムがすごい。
武術の由来、系譜、流儀の特徴、演武者紹介、演武内容の説明、大会への豊富などが書かれた56ページもある立派なもので、「プログラム」というよりも「一般向け古武道入門書」。
この演武大会のためだけに作られたところが贅沢です。

観客は7割ぐらいの入り。
家族連れが多く、若い女性や外国人の姿も見られました。
観覧席の正面側の前の方の席は空いてなかったので、向かって左側観覧席の一番前に陣取りました。
これで「いっきょう」さんの写真を撮って、FACEBOOKに載せられる。

開会式前になると、演武者全員が演武場に集合。
柔道や剣道のような道着姿の流派は少ない。
紋付袴姿の演武者が多く、どの人がどんな流派なのかよくわからない。

烏帽子直垂姿の男性は鎌倉時代に発祥した小笠原流弓馬術(おがさわらりゅうきゅうばじゅつ)、色鮮やかな振袖にタスキがけの若い女性たちが、筑後柳川藩の御殿女中の武芸だった楊心流薙刀術(ようしんりゅうなぎなたじゅつ)、鎧武者姿の人は佐分利流槍術の他に、初實劔理方一流甲冑抜刀術(しょじつけんりかたいちりゅうかっちゅうばっとうじゅつ)の人がいて、どちらがどちらかはわからない。

……まあ、演武になればわかるけど。

開会式の後、長年古武道の保存振興に寄与した方を表彰する「古武道功労者」表彰が行なわれ、熊本県の関口流抜刀術(せきぐちりゅうばっとうじゅつ)、岩手県の諸賞流和(しょしょうりゅうやわら)、二つの流派の宗家が表彰されました。

古武道は「発祥当時の姿のままであること」が非常に重視され、無形文化財に指定された流派も少なくありません。

演武始めは、京都府無形文化財・下鴨神社の「糺の森流鏑馬神事」を行なう小笠原流弓馬術。
小笠原流は武家の礼法として有名ですが、本来は弓馬の武術。

静まり返った演武場で、5人の烏帽子直垂姿の鎌倉武士が一列に並び、作法に従って片肌を脱いで、次々に的に矢を射かけます。
5本のうち4本が的に命中すると、感嘆の溜息が場内に満ちました。

続く演武は、宮本武蔵が創始した二刀流「二天一流剣術(にてんいちりゅうけんじゅつ)」。
武道13段の夫に「とにかく運足だけは見ておけ」と言われていたので、足に注目していると、間合いの詰め方が剣道とは全然違います。
腰をやや沈め、歩幅は小さく、床をすべるように静かに進む。
小太刀で相手の刀を押さえて太刀で相手を斬る。

古武道の演武者の袴は合気道ほどには長くなく、足袋を履いていることもあって、運足が見やすいです。

鎧武者姿の初實劔理方一流甲冑抜刀術の、飛び上がって藁束を斬る演武も衝撃でした。
普通に藁を斬るのにも、集中力がいるのですが、飛び上がって斬るのは、もっと難しいはず。
甲冑そのものも重いのに。
昔の人は体力あったなあ。

……それにしても忙しい。
写真は撮らなきゃいけないし、印象に残ったことはメモしなきゃならない。
10時半から15時半の5時間、休憩20分をはさんで34流派が演武するんだから、かなり忙しい。
合間にFacebookの武人「友達」のために、写真を載せなきゃならんし……

他の観客は固唾を飲んで演武を見守っているのに、私一人がバタバタしてる。

さて、佐分利流槍術の皆さんが演武場に入ってきました。
演武場の片隅で出番を待っています。
紋付袴姿の演武者が2人、鎧武者姿の演武者が2人。

「声かけてくださいね」と、「いっきょう」さんご本人には言われてますが。
袴姿のお二人は、Facebookに載ってる「いっきょう」さんの顔写真とは違う。
ということは、赤い鎧武者か黒い鎧武者か、どちらかが「いっきょう」さんのはず……。
でも、兜と面頬をつけて完全に顔が見えない状態では、どちらが「いっきょう」さんかわからない。

「ほら、そこで「いっきょうさぁん」と声をかけましょう」と、鹿嶋の武人がコメントでそそのかすけど。
ほとんど音がしない緊迫した演武場内で「いっきょうさぁん!」と黄色い声援を送る勇気がないです。
それに、私が声をかけてしまったために、「いっきょう」さんの集中力を乱して、演武が失敗するようなことがあったら大変だ。

しょうがない。できるかぎり写真を撮って、どれがご本人か後で聞いてみることにしよう。

佐分利流槍術で使われる槍の全長は9尺(約2.7メートル)、穂先の長さは2尺1寸(約64センチ)。
大きなカギがついていて、カギで相手の武器や体制をくずして、両刃の穂先で斬るのが基本。
「槍は切るもの、刀は突くもの」として、豪快に槍を振り回す力強い演武を見ることができました。

ちなみに「いっきょう」さんは赤い鎧武者の方だったそうで、私が撮った写真を大層喜んでくださいました。
演武者本人は写真を撮ることができないからです。 

とりあえず、お目当ての一つ、佐分利流槍術を見ることができたし、あとは、柔術8団体を見て、「しんのすけ」さんと「いなかじん」さんにお目にかかる……まだまだ忙しい。

……次回に続く……
ラベル:柔術 武道
posted by ゆか at 10:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 武道系コラム | 更新情報をチェックする
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