この「ヤバい」は「危険」の方だ。
「リフレ」とは「人工的にインフレを起こすこと」。
安倍首相は物価上昇率年2%の目標を設定し、デフレと円高脱却を目指し景気を回復させるという。
著者は慶応義塾大学大学院経営管理研究学科準教授。
「リフレが実現すると日本はどうなるか」を予測したのがこの本だ。
「円高=悪」というイメージは、1985年のプラザ合意が発端の「円高不況」の時にできた。
1985年初めに1ドル250円台だった円相場が、1986年末には160円、1987年には120円。
3年で130円、ドルは半値近くまで安くなった。
その極端さは現在の円高の比ではない。
多くの輸出企業が対応できずに倒産が相次いだ。
1995年にも1ドル100円台から80円台になる超円高と企業の大量倒産が起きたが、これは阪神大震災やバブル崩壊後の銀行の不良債権処理が主な原因で、円高が原因ではないらしい。
不景気の原因を全部円高のせいにする。
人の記憶は曖昧なものだ。
現在、リフレに対する期待から円安と株高が進み、企業によっては昇給も始まっているが、このままうまくいくのだろうか。
バブルの最中「今後日本の景気は拡大する」という夢と希望が、日本国民全員のコンセンサスになっていたため、物が多く売れ、企業の利益も雇用も増えた。
この時がインフレだったので、「よいインフレ」を起こすことになったようだが、企業は非正規雇用者にまで利益を分配するだろうか。
将来に不安を抱える年金暮らしの高齢者が、積極的にお金を使うだろうか。
需要がなければ雇用も増えず、本当の意味で景気はよくならない。
著者は、リフレを起こしても政府がめざす「よいインフレ」は起きず、円安が原因の輸入品高「悪いインフレ」と、ドルベースの日本国債の値下がり、暴落による銀行危機、日本全体の経済危機を招くという最悪の展開を懸念している。
実現しなければいいが。
『リフレはヤバい』 小畑 績 著 ディスカバー・トゥエンティワン
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