その写真に、私は正直とまどった。
普通の美少女フィギアや、ポップなイラストに見える……
きっと私が凡人なので、そう見えるだけで、本当はすごいアートなのかもしれない……
著者の村上隆はアーティスト。
日本アニメなどのサブカルチャーをベースにしたポップな作品を発表。
ニューヨーク・ジャパン・ソサエティ文化芸術賞、ニューヨークAICA『ベスト展覧会』受賞、芸術選奨文部科学大臣新人賞など、国内海外の芸術賞を多数受賞。
ニューヨークと東京に拠点に、世界中で展覧会を開催。
ルイ・ヴィトンの鞄のモノグラムのデザイン。
若手作家のプロデュースなど、その八面六臂の活躍ぶりには圧倒される。
「世界で評価されない作品は、意味がない」
「価値を生むのは、才能よりサブタイトル」
「歴史の引き出しを開けると、未来が見える」
「芸術家の成長には、怒りが不可欠である」
……4年近くかかって完成したこの本は、一つ一つの言葉が鋭く磨かれ、熱く、粘っこい。
「金額は、評価の軸として最もわかりやすいものですよね」とうそぶきながら、彼は工房を経営し、儲けた資金を投入して優れた作品を作る。
欧米の芸術市場の動向のチェックも抜かりない。
潮流に合った作品を作り、価値を高めようと画策する一方で、「世界で唯一の自分の核心」を探求する……
自分の欲望にストイックなほど忠実な人だ。
もし、彼が本当に拝金主義者なら、「今の日本の知的芸術的資源は「かわいい」と「オタク」なのですから、そのへんを発展させていかなければなりません」とは言わないと思う。
今のうちに、日本が「オタク」「かわいい」の権威を握れば、イタリアのように、自国文化を輸出して金銭的に発展できるのに……
日本芸術の将来を真剣に案ずる村上隆。
「私は『美』ために働いていきたい」……
彼は、これからも、さらなる高みを目指す。
『芸術起業論』 村上隆 著 幻冬舎
ラベル:芸術
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