突然後ろでと大きな音がしました。
あわててふりむくと……
システム手帳に携帯電話ケース、化粧ポーチ、財布、文庫本、ストール、水筒、A4書類が床に散乱していました。
何かの拍子に鞄がベッドの上から滑り落ち、その中身が床にぶちまけられたのです。
「しょうがないなあ」
とりあえず、床に落ちたものを一つずつ拾い上げて、机の上へ移動させることにしました。
手帳を持ち上げると……
手の中を何かがすり抜けるような異様な感触の後、足元で「バサリ」と音がして……
床を見た私は悲鳴をあげました。
手帳の中身がシステム手帳のリング金具で綴じられた状態で、まとまって床に落ちていたのです。
私の手の中に残っていたのは革の表紙だけ。
まさか、こんな壊れ方……
システム手帳のリング金具部分が、丸ごと台座から抜け落ちるなんて。
システム手帳の修理をてがける『デザインポート』によると……
システム手帳の故障は、リングがズレてかみ合わなくなる。
リングの爪部分が折れる。
金具の台座のバネの劣化。
表紙のベルト部分の破れや糸のほつれ。
ペンホルダー部分の破れやカード入れの破れ。
ファスナーの故障など、さまざまなものがありますが、私の手帳のような「リング金具が丸ごと台座から抜け落ちる」タイプの故障は載っていません。
私の愛用の手帳はブレイリオ「グレイスフルカーフ・システム手帳」。
手触りのいいドイツ製カーフの表紙。
黒に近い紺色の表紙と、裏表紙の鮮やかなアクアブルーの美しいコントラスト。
バイブルサイズのシステム手帳には珍しいリング径10mmの薄さと、本体140gの軽さが気に入っていたのになあ。
『デザインポート』によると、システム手帳の金具の台座を丸ごと交換するには所要期間20日、料金は6930円か。
往復の宅急便の時間も入れると、手帳が修理されて戻ってくるまで、1ヶ月近く。
それは辛い。
でも、いったん手帳を分解して、リング金具と台座の金具を交換して、もう一度縫い合わせるのは、素人にできることじゃないしなあ。
ため息をつきながら、リング金具がはずれた手帳の裏表紙を眺めました。
中央部分、縦に切り込みが入っていて、そこから金属製の台座がのぞいている。
革の裏表紙から上、中央、下の3箇所、リング金具を固定していたとおぼしき金属の爪のようなものが突き出ています。
もしかしたら……
ペンチで一番上の爪の部分を少し曲げて開き、リング金具を3つの爪にはめ込んだ後、ペンチで上の爪をグッと押すと……
リング金具は台座に固定できました。
応急処置完了。やっぱりなあ。
偶然手帳が小口を下にする形で垂直に落ちて、台座部分が床に激突。
その衝撃でリングと台座を固定していた金具の爪がわずかに開いて、台座からリング金具がはずれてしまったようです。
リング径15mmほどの標準的な厚みのシステム手帳は、革に穴を開け、リング金具と台座をネジできっちり固定して、さらに補強のための革を縫いつけることが多いのです。
強度は増すけれども必然的に重くなる。
この手帳は「薄さと軽さ」を優先したので、裏表紙に切り込みを入れて、台座を表紙の裏革部分に接着剤で貼り付け、3箇所の金属の爪でリング金具と台座を固定する単純な構造。
そのため、素人の私でも応急処置ができたわけですが。
それにしても、システム手帳は、いつが「寿命」なんでしょうか。
修理すると驚くほどもつものらしいんですが。
私は、先代の手帳、ミニ6つ穴サイズのファイロファックスを、当時のリフィルを綴じた状態で大切に保管しています。
角が擦り切れても日焼けしても、システム手帳はCDやMDと同じで「捨てられなくて増える一方のもの」なのかもしれません。
ラベル:手帳