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2013年09月21日

想念の力(後編)イメージと動き

「入り身(相手の側面、死角に入る動き)」がうまくできない……。

どうしても教わったイメージ通りの動きができない。
長い間、私は悩んでいました。

……私には合気道、向いてないのかなあ。

「喘息の子どもは心が弱い」という偏見が強かった時代に子どもだった私は、懸命に護身術の本を勉強しては、学校でケンカする毎日を過ごしていました。
自分の間合いに入ってくるものは「敵」……
30年たっても、相手が自分の間合いに入ると反射的に退く癖は、なかなか抜けない。

思いあまった私は、夫に相談してみました。
夫は空手4段剣道3段少林寺拳法3段大東流合気柔術2段柔道初段。
大東流合気柔術は合気道の先祖にあたる古武道で、共通する技がたくさんあります。

「イメージ通りの入り身ができん? 相変わらず人が怖いんか……しゃあないやつやな」

夫は溜息をついた後、言いました。

「何も難しいこと考えんと「30度」と念じながら、相手の側面に入ればええやんか」
「それだけ?」

夫は苦笑いしました。

「そもそも入り身の目的は、臆することなく相手の死角に入ることやろ。実戦で、そこに位置取りでけへんかったら、なんぼ自分のイメージ通りに動けてもしゃあないやんか。相手かて動いてるんやし」

……まあ、確かにそうだけど。

「別に相手のことは気にせんでええから、とにかく死角に入る。相手に対して30度の位置に立つ。これだけ考えてやってみ。お前は実戦の場数ふんどるから、位置取り得意やろ。たぶん、それでうまくいくはずや」

不思議なことですが、夫の言う通り「30度」だけを考えるようになると、「入り身」がうまくできるようになりました。

……ひょっとして、目標にしていたイメージが私に合っていなかったのかな。

ところで、昔の人は「技のイメージ」をどう教えていたのでしょうか。

例えば、室町時代末、林崎甚助が集大成した抜刀術(居合)。
その流派の一つ、新田宮流の伝書『所存之巻』などによると……。

『弥和羅(やわら、柔術)と兵法(剣術)との間今一段剣術有る可しと工夫して、刀を鞘より抜くと打つとの間髪を入れざる事を仕出し、是を居合と号して三尺三寸の刀を以て、敵の九寸五分の小刀にて突く前を切止る修業也』

……うーむ。わかりやすい。
居合の目的を「敵が九寸五分(約30センチ弱)の小刀で突いてくるのを、三尺三寸(約1メートル)の刀で、突かれる前に斬り止める修行」と、はっきり定義している。

この伝書に限らず、武術を他人に伝える昔の書物の表現は簡単明瞭です。
合気道の祖先にあたる柔術。
「最古の柔術」と呼ばれる竹内流。

『J−Stage』の論文『竹内流の成立過程に見る流派成立の条件について(武道学研究29−{1〜7,1996} 藤堂良明・新出隆共著)では、『竹内流目録 捕手腰の廻(小具足組討)表二十五ケ条』の中から代表的なものが抜粋されています。

『一、忽離之事 双方小太刀を構え、敵の打っ手をとり、腹ばいにして、敵の首を切る』
『一、清見之事 敵小太刀を構えた時、敵の首を切ろうと踏み込み、我左足で払って、腹ばいにし、足で敵の腕付け根を捕え、肩を切る』

小具足とは脇差しを使った柔術の技です。
それにしても、身も蓋もないほど具体的な表現ですね。

最近、古武道大会で柔術の演武を見るようになったのですが、柔術は合気道より動きが早い。
流派によっては、空手並みの速度で突きや蹴りが繰り出されてますから、「今の動きは自分のイメージ通りだった。よしよし」とか考える余裕がないかもしれない。

では、「イメージを描いて動くこと」はいけないのか……そうとも言えないのですね。

先日Twitterで、柔術家や整体師の皆さんと「肩こりに効く筋膜マッサージ」の話をしていました。

柔術には敵を傷つける「殺法」と、けがをした時の応急処置にあたる「活法」があります。
柔術の「殺法」から発展したものが柔道や合気道。
「活法」から発展したものが整体。
柔術家には整体に詳しい方が多いのです。

持病の喘息を軽くする丹田呼吸法を修得するために合気道をはじめ、「武道と健康」をテーマにしている私には勉強になる話ばかり。

「筋肉と関節の構造がわかると、身体の使い方がより効果的になりますし、関節技とかも強くなりますよ」
「あと筋トレする時、動かす筋肉に意識を持っていくとだいぶ違いますよ。腹筋運動なら腹筋を意識するとか」

……うーむ。動かす筋肉を意識する。
イメージするためには解剖学的な知識が必要か。
合気道では教えられていない考え方だけど。
筋肉を鍛えたら、今よりも合気道の技も上達するでしょう。

今年の春に開かれた「Twitter関西武人オフ会」。
参加されていた京都在住の整体師の方から「初心者が体系的に経絡を学ぶのは、カイロプラティックの本が入りやすいと思いますよ」とのアドバイスをいただいているので、謎を解く鍵はある。

合気道の場合でも、体の一点に意識を集中して動いた方が、スムーズに動けることはわかっています。
経験的に、「入り身」の時は「相手に対して最初に出る足の膝頭」にソフトボール大の球体をイメージし、そこに意識を置くと、スムーズに動けるようです。
ところが、相手に手首をつかまれた状態での「体の転換(相手の側面に入って反転し相手と同じ方を向く動作)」は、意識を膝頭に置くとスムーズに回れない。
むしろ「つかまれた手の反対側の肘」に意識を置いた方が、スムーズに転換できるようです。

どうやら自分のしたい動きによって「意識を置くポイント」が違うらしい。
今、このポイントを探し出すのが稽古の課題になっています。

ただ、たまたま私は「体のある部位に意識を置くとうまく動ける」のであって、「理想の動きをイメージして、それをめざす」という稽古を否定するわけではありません。
でも、あまりうまくいかない時は、他の方法を試してみるのと、よけいなストレスが減って、楽しい稽古ができると思います。
ラベル:柔術 合気道
posted by ゆか at 10:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 武道系コラム | 更新情報をチェックする
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