そんな気分が盛り上がってくる今日この頃ですが、皆さんは、何か新しいことをはじめられましたか?
私は、前々から、やりたい習い事があるのですが、それは……作法。
広辞苑によると、『作法:物事を行う正しい方法。起居・動作の正しい方式。きまり、しきたり。』
一方、『マナー』は『様子・態度。行儀・作法。風習・習慣』で、すこしニュアンスが違いますね。
近頃、自分が正しい作法を知らないので、かなり損をしているような気がするのです。
例えばディナーの席。
「フォークを取る順番は、これでよかったっけ?」
「フィンガーボールで手を洗うのは、この程度だっけ?」……
ほとんど外食せず、自宅で食前に手を洗って、箸で食事している身。
テーブルマナーが、ちゃんとできているのか、気になってしかたがない。
しかも、食事の相手とは、会話をはずませなければいけないし。
結局、料理の味がわからず、「よくわからなかったけど、高かったということは、おいしかったのか?」と首を傾げながら帰宅する……こんなことを繰り返してばかり。
『塩月弥栄子の冠婚葬祭事典(講談社)』によると、『スマートに、楽しくいただけるように正しい食事の作法を覚えておきましょう』とある。
……『スマート』『楽しくいただく』、どっちも失敗しているような気がします。
さて、作法といえば、茶道や華道を習っている人の優雅で無駄のない動作。
憧れますね。
本当は、華道と茶道の免状を持っている母に、教えてもらえればいいのでしょうが……
「子供に教えたって月謝取られへん」と言い放ち、「花なんて、花瓶に放り込んだら、それなりに形になるもんや」と断言。
「水中ウォーキングって、勝ち負けないから、張り合いないわ」とぼやきながら、スイミングスクールに通う……
そんな母なのです。
それに、茶道については、ちょっと嫌な思い出が……
昔、短大の校外学習で、「日本文化にふれる」というイベントがありました。
国文科らしく、京都の裏千家家元でお点前をいただくという、雅やかなもの。
お菓子をいただく時に使う懐紙、懐紙入れと扇子(立礼座礼をする時必要)を購入。
1ヶ月かけて、クラス全員が、作法室で、お点前のいただき方を特訓して、当日に臨みました。
畳の大広間に60人が座り、張りつめた雰囲気の中、一人ずつ、餡を使った生菓子を懐紙にいただき、めいめいに濃茶の入った抹茶茶碗が配られはじめます。
今考えると、比較的略式の茶席でした。
ところが、接待の女性から、一人ずつ順番に茶碗を受け取っているうちに、痛みだした私の腰。
実は私は、「長時間の正座」に、整形外科医のドクターストップがかかっています。
腰から背骨がぎしぎしと痛みはじめ、たまりかねた私は、お茶をたてている若い男性の亭主(たぶん家元の孫弟子)に、「失礼ですが、足を崩してもいいでしょうか?」と尋ねました。
もちろん、「なぜ長時間正座できないか」は説明するつもりでした。
亭主は、一瞬目が点になり、しばらくして「どうぞお楽に」と言いました。
その途端、クラス全員が足を崩して、ほっと一息つき、緊張した空気が和らぎました。
この時、一瞬亭主がとまどったのは、裏千家の作法マニュアルには「客人が「足を崩していいですか?」と訊いてきた時の対応」が載っていなかったからだと思います。
しかし、千利休の教え「一期一会。主は客人を最高のもてなしで」を思い出して、とっさに「どうぞお楽に」と言われたのでしょう。
結局、無事に、楽しくお点前をいただいた私たちですが……
「まずいよ。足崩した時、茶道の先生、顔真っ青で、こめかみぴくぴくしてたよ」
後で同級生に聞かされて、「しまった」と思いました。
この一件以降、茶道の先生は、卒業するまで口をきいてくださらなかったのですが……
今考えると、あの一言で、先生の寿命を3年ほど縮めてしまい、本当に申し訳ない。
ちなみに、表千家、裏千家、武者小路千家のサイトを確認しましたが、そのどこにも「客は茶室にいる時正座でなくてはならない。これにそむいたものは、禁固1年または30万円以下の罰金」とは書いていませんでした。
「正座の仕方」の解説はあっても、「正座しなきゃダメ」とは書いていなかったので、「茶道イコール正座」の根拠は、かなり曖昧なものかもしれない。
確かに正座は、相手にとって最大の礼を尽くした態度なのですが、主人が客人に「正座しろ」と強要するのは、また別問題でしょう。
最近、表千家では、「椅子とテーブルでできる茶道」というものも教えています。
膝や足腰が弱くなった高齢者や、車椅子の人でも茶道が楽しめる方向に進んでいるようです。
ところで、私が習っている合気道でも、正座をしますが、「正座をしている最中に、敵が襲いかかってくる」という想定なので、茶道や華道のように、1時間以上正座を続けるということはありません。
腰は大丈夫なのですよ。
でも、「いつかは習ってみたい作法」……
といううちに、今年の春も過ぎゆくのかしらん。
ラベル:茶道