新着記事

2013年10月15日

衝撃(前編)異質なもの

最近、出稽古先の道場にビジターで来られる有段者がおられます。

元大東流合気柔術家の方ですが、膝を悪くして合気道に転向されたとのこと。
大東流の膝行は合気道の膝行よりも動きが激しいですから、何か無理をされたのかもしれません。

先日、この有段者と合気道の「正面打ち入り身投げ」の稽古をしていました。

この技は、相手がまっすぐに手刀を打ち下ろしてくるのを、自分も下からすり上げるように手刀を打ち出して、相手の手刀をさばく。
相手の死角である側面に入り(入り身)、相手と同じ方向を向き、首をつかんで押さえながら回転する。
押し下げされた相手が苦しがって浮き上がってくるのを待ち、相手を抱き抱えるようにして、腕で喉をすりあげるようにしてのけぞらせ、投げる……。

「入り身投げ」と関節技の「一教」は、開祖が「奥義」として特に重視された技ですが、私はこの技が苦手。
ぎゅっと首をつかまれて痛かったり、力任せに叩きつけられて、顎を床で打ちそうになったり、浮き上がってくるまで執拗に押さえつけられたり、腕を首に強くぶつけられて咳き込んだり。

……なんで、こんな目にあってるんだろう?

大事な技の稽古の最中ですが、時々、疑問を抱いたりします。

ちなみに、自分が技をかける時は、間合いを調整して、相手の体勢が崩れるところまで誘い込んで、怪我をさせないように、ふんわりと投げることにしています。
合気道をはじめる時に、「組み手の相手は仲間やから、うっかり技をよけたり、反射的に迎撃して迷惑かけんなよ」と、夫に釘をさされてますから。

ところが、この時の稽古は、いつもの入り身投げと違ってました。

首と耳の下に軽く指を当てられた感触。
その直後、私の体は足元から崩れるように前のめりになり、すうっと、そのまま上方に体が伸び上がり、ふわりと投げられた……ような気がする。

……確かに「入り身投げ」だったはずなのに。
何か別の技をかけられたような気がする。

「今のはいったい……」
「……大東流の入り身投げですよ」

彼はいたずらっぽく笑いました。

「こう、大椎(だいつい)と翳風(えいふう)を取って……」

もう一度、後ろから首と耳の下に指を当てられ、軽く前方に押されただけで、勝手に膝が折れて、体全体が崩れました。
でも、力で押されている感じは全然しない。

……ひょっとしたら、とんでもないものと出会ったかもしれない。

合気道の稽古中に、大東流合気柔術の話をするのも、ちょっとまずいので、後で技の解説のメールを送ってもらうことにしました。

送られてきたメールによると、正面打ち入り身投げの術理は……

『@擦り上げ面からの合わせ技で体捌きと共に相手を誘導』
『A首を制す(大椎と翳風を取ることにより、骨盤内の重心が偏り人体は不安定(虚)になる)』

……「大椎」とは首の後ろ、うつむいた時に首の付け根に現れる骨(第7頚椎棘突起)の出っ張り下のくぼみ。
「翳風」とは耳たぶの後ろのくぼみで、両方ともツボです。

『B裏三角への入り身。人体の死角は135度なので、袴の名前の刺繍の位置。運足は直角三角形の先端へ30度の方向に入る』

……うーむ。大東流はロジカルだなあ。
「135度」とか「30度」とか具体的だ。

「裏三角」とは、合気道で半身に構えた時に安定を保つための足の配置。
例えば、右足を前に出した半身の構えの場合、右足の右側に三角形ができる位置に左足を置くと重心が安定します。
「裏三角への入り身」とは、具体的には相手の斜め後ろぐらいの位置に移動することじゃないかと。

『@ABの動きが全て同じタイミングで螺旋状に相手を巻き取り、首を制して、受けの頭を肩に呼び込みます』

……なんか、すごく難しい技術じゃないのか。

『@の掛け手の返しで擦過の合気をかけて擦り上げると、簡単に仰け反ります。上死点になった時に、掌を返して親指を下に切りおろしつつ、足を踏み込むと、りきみの無い柔らかい入り身投げとなります。理合は口訣で伝授されます』

車のエンジンのピストンが最も上昇する位置が「上死点」、最も下降する位置が「下死点」です。
これは相手が立ち上がってくるところを、腕で相手の喉を擦り上げるようにして、極限まで伸び上がらせて、のけぞらせ、投げる動作だと思います。

それにしても『擦過の合気』……また難しいことを。
大東流合気柔術にあって、合気道にない言葉が「合気をかける」で、この『擦過の合気』も謎の動作だなあ。
しかも理合は口伝らしい。
どんどん謎が増えていくなあ。

『入り身投げの原型は、小野派一刀流の妙剣、絶妙剣と伝えられるので、剣の理合が見事に生かされた合気道の奥義の技とされる所以ですね』

……さらに謎の言葉が出てきた。
小野派一刀流は柳生新陰流とともに、「徳川家の剣術」として知られていますが。
「妙剣」「絶妙剣」とは、どんな技なんだろう?

……ううう。説明を聞いたら、いっそう謎が深まってしまった。

……次回に続く……
posted by ゆか at 16:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 武道系コラム | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
にほんブログ村ランキング
こちらには『ventus』で書かれている内容と同じ分野のブログがたくさんあります。
もし、よろしければご覧ください。

武術・武道ブログランキング

ステーショナリー雑貨ブログランキング