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2013年11月12日

可視と不可視(前編) 達人

「黒田鉄山先生の講習会に出てみませんか」


この思わぬ話を持ち込んできたのは、広島の合気道家の方でした。
最近の武道系コラムを読んでいて、「自分の合気道の形」について悩んでいる私に、「何か参考になれば」と情報をくださったのです。

会場は西宮だから行けない距離じゃない。
振武館第15代宗家の黒田鉄山先生は「古武術の達人」として名高い方ですが、そういう偉い先生の講習会に、合気道初段の私なんかが参加していいものかねえ。
もし古武術のハードな稽古だったりしたら、喘息発作を起こして、救急車を呼んでいただくはめになってご迷惑がかかるし。

『黒田鉄山先生の講習会ってどうなんでしょう?』

とりあえず、Facebookに書き込んでみると、さっそく『鉄山先生の講習会は、楽しいですよ。そんなにハードじゃないし』と、お返事をくださったのが、竹内流柔術の備中の武人。

「黒田鉄山先生の講習会? ぜひ行かれるといいでしょう。女性の合気道家の方もたくさん参加されてますよ」

そう言ったのは、出稽古先に来ている元大東流合気柔術家の有段者。

「古武術の講習会? 行ってこいや」

武道十三段の夫にとどめを刺されました。

そんなにすごい講習会なのか。

こうなると引くに引けません。
おそるおそる「喘息持ちなので、当日の体調によっては途中で見学することになるかもしれませんが、それでも失礼でなければ参加したいです」と、主催者の振武館に問い合わせメールを送ると「それほど体に負担になるものではありません」という丁寧なお返事をいただきました。

「黒田鉄山先生の講習会に出ることにしたよ」

そう言うと、夫は笑いました。

「講習会嫌いのお前にしては、妙に積極的やな。それで稽古は何やねん?」
「「無足の法」と案内にあったところをみると、たぶん運足の系統じゃないかな」
「運足は大事やで。柔術では「相手が押してくれば引く」、これが基本や。ただし引くにも、いろんな運足の方法がある。合気道も柔術の系統やから、何かの役に立つかもしれへんで」

実は、事前に黒田鉄山先生の著書を読んだり、動画を見たりしなかったのです。
先入観を持つことなく、自分の目で「達人」と呼ばれる方の姿を見たかったので。

さて、当日は西宮の甲子園駅からバスで会場の兵庫県立総合体育館へ。
座席に座ると、後から刀袋を背中に担いだ若者たちが乗り込んできました。
しまった。木刀持ってくればよかった。
『各種道着やジャージ等の運動しやすい服装でご参加いただけます』と案内に書かれていたので、油断してましたね。

体育館の女子更衣室で、道着袴姿に着替えたのはいいけれども、私のほかに誰もいない。
嫌だなあ。紅一点かもしれない。

講習会の会場は、柔道用の畳が敷き詰められた格闘技室。
集まったのは40人ほど。
ジャージや作務衣姿の人、柔道着や居合の袴姿の人、合気道着姿の人も混じっていますが、いずれも男性ばかり。
大丈夫か私。
 
『振武館黒田道場』サイトによると、創設は嘉永元年(1848年)。
駒川改心流剣術、四心多久間流柔術、民弥流居合術、椿木小天狗流棒術を稽古しています。
 
刺し子の道着に白袴姿の黒田鉄山先生は、還暦を過ぎているとは思えない若々しい姿です。
意外に気さくな雰囲気を漂わせていますが、時々眼光が鋭く光る。
そのイメージは「虎」。

「今日は、この振武館で、いつもやっている稽古を、皆さんに体験していただきます」

……えっ、大丈夫か。私。

……次回に続く……
ラベル:柔術 合気道
posted by ゆか at 16:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 武道系コラム | 更新情報をチェックする
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