確かに、私は去年の今頃、『VS税務署』を書いています。
我が家の医療費の確定申告は、世帯合算と介護保険医療費がからんでいる分、一般家庭の医療費確定申告より複雑で面倒。
介護保険サービスの中には、確定申告医療費として認められるものと、そうでないものが入り混じっています。
例えば、デイケアセンターに行って、リハビリ訓練を受けると医療費ですが、カラオケを楽しむと医療費の適用対象外。
今年の確定申告そのものは、スムーズにでき、還付金もきっちり振り込まれてきました。
税務署も、続出する介護保険がらみのトラブルに懸命に対応しているらしく、年ごとに申告方法が簡単にわかりやすくなっていくので、助かります。
税務署とのトラブルはなかったのですが……別な場所でトラブルが。
年が明けて、義母から送られてきた医療費のレシートの束。
中身を見た私は愕然としました。
「通院介助費」のレシートが2種類に増えている。
しかも、片方は1日当たり212円。
でも、6月分からある切符大の領収書の束。
これは1回当たり1000円。
しかも両方とも明細が「通院介助費」……???
義母が人工透析で病院に通うための送迎を、介護施設に依頼しているのですが、領収書の発行者は両方とも介護施設……????
私は途方に暮れました。
また、わかりにくい領収書を出して。
一度税務監査に入られた(詳細は『確定申告だぜよ』)だけでは、まだ懲りないのか。この施設は。
夫に相談すると「そう言えば、介護タクシーに変わって、交通費が上がった言うとったわ。そやけど、おふくろも「ようわからん」言うてるし、悪いけど、お前、問い合わせたってくれ」と言われました。
しかたがないので、介護施設に電話しました。
電話に出た経理担当者は中年男性。
「医療費の確定申告をしたいのですが、6月から突然、領収書が2種類になったのですが、どういうことでしょうか」
「あのね。ご本人にも、ちゃんと説明したじゃないですか! ちゃんと、本人から聞いてくださいよ! それでも家族ですかっ! いったい何をやってるんですかっ!」
怒鳴られましたが、この領収書では、下手をすると「書類不備」で申告不可。
還付金ゼロになってしまいかねない。
その方が「家族にとって大損害」。
「その本人が、よくわからないと言いますので、代理で私が電話しました」
「それはですね……」
担当者は、猛烈な早口で説明をはじめました。
でも、私には、担当者がまくしたてている話の内容が、ほとんど理解できなかった。
介護の世界の独特な専門用語だらけの説明。
こんな説明をされても、70代の義母には、なんのことやらわからないのも当然。
根負けした私は言いました。
「では、6月から介護タクシーを導入したので、領収書が2種類ある。ということでいいのですね。このまま確定申告しますよ」
担当者は舌打ちしました。
「だから、何度も言うてるけど、大丈夫ですっ!」
私は不承不承にお礼を言って電話を切りましたが、前に、この施設の領収書不備が原因で、還付金減額の憂き目にあっているので、担当者の言うことが信用できません。
税務署宛てに、介護タクシー代として別口の領収書が出ていること、疑問点は直接介護施設の担当者に問い合わせてほしい旨を書き添えて、提出しておきました。
もう一度、税務監査されてしまえ。
後で調べたところ、介護施設は、旅客自動車運送事業許可を受けた訪問介護事業所と契約するヘルパーが、訪問介護サービスとして輸送する場合に限り、自家用車での有償運送できる制度を利用。
自分の施設の車を、委託のヘルパーに運送させる形にしたらしい。
そうすると、していることは、今までと同じ「医療施設への送迎サービス」なのですが。
通院等乗降介助の介護保険料金、片道1回の送迎につき1060円(本人負担は1割で106円。残りは介護保険から施設に支払われる)。
そのほかに、介護輸送サービス業者として、「介護タクシー代、乗車地点から目的地まで最初の2qまで300円、以後1qごとに100円」を利用者に請求できる。
義母の自宅と病院までは、片道5キロで往復10キロ。
1回あたり1000円の増収となり、介護施設は大儲け……もとい、質の高いサービスを提供できるというわけです。
さて、『厚生労働省』サイトによると、介護保険申請の流れは「認定の申請」。
「要介護認定」。
「ケアプラン作成」。
「サービス利用」。
「要介護度の見直し」の順になります。
義母が2004年夏に倒れ、介護保険申請をしたのですが、予期せぬ落とし穴が……
実は、介護保険は自治体ごとに運営ルールが微妙に違う。
今回の場合、私たち夫婦、申請者の住む自治体と、かかりつけで義母が入院している病院(要介護度認定者)のある自治体。
義母の住む自治体が別。
介護保険課の担当者に「最悪のケース。認定の成功率は3割以下」と心配されました。
仕事の合間に、夫婦二人で関係者と折衝したのですが、申請は難航。
義母が別の自治体に住んでいるため、入院先の病院併設の介護施設を利用できず、途中で夫が過労で倒れるなどのトラブルもありましたが……なんとか認定が下りました。
ちなみに、サービスの地域格差も激しい。
当時の私の住む自治体の介護保険事業者のリストは、ケアハウス、有料老人ホーム、特別養護老人ホームなど、分野別に4冊あり、合わせると辞書ほどの厚み。
一方、義母の住む自治体は「介護事業者一覧表」。
A4の紙1枚。
義母の送迎する介護業者は、今も競合する施設が少ないので強気なのです。
なお、介護保険の財源、保険料は、第1号被保険者(65歳以上)は市町村からの個別徴収・年金からの天引き。
第2号被保険者の(40〜64歳)本人負担のほか、事業者負担。国庫負担など。
給付金の負担率は、被保険者50%。国25%。都道府県12.5%。市町村12.5%。
サービス利用者本人負担は1割ですが、残り9割は介護保険。
国民の保険料や多額の税金が使われています。
厚生労働省『平成19年1月審査分の介護給付費実態調査月報』によると、現在、介護予防サービス(軽度生活援助・生活改善指導など)利用者は547.8千人。
介護サービス利用者が3036.9千人。
受給者1人当たり費用、介護予防サービスが37.8千円。
介護サービスでは165.5千円。
ざっと1ヶ月5233億!
……これだけ巨額のお金が動いている。
それなのに、介護業界関係者以外には、制度の仕組みがわからない。
今後も制度改正がされるらしいのですが、ますます介護保険の世界は、わかりにくくなるしょうね。
ただ、どの自治体の介護保険を扱う窓口の担当者も、非常に親身になって相談に乗ってくれました。
もし、親が倒れた時には、一人で悩まず、とりあえず介護保険担当窓口に駆け込む。
これが鉄則です。
ラベル:確定申告