新着記事

2014年01月21日

一寸と三寸(後編) 中渚 

「自分で自分のツボを押してみれば、経絡や経穴のことがようわかるわ」


武道13段の夫の薦めで、WHO準拠、鍼灸師をめざす学生向けの本『ビジュアル版 東洋医学 経絡・ツボの教科書』を購入。
合気道の関節技で使うツボ(経穴)、持病の喘息や自律神経失調症に効くツボの研究をはじめたものの……

例えば、合気道の関節技「小手返し」。
相手の手の甲を押さえて制する技ですが、指を押し当てているのは、手の少陽三焦経(しょうようさんしょうけい)の「中渚(ちゅうしょ)」。
手の甲、小指と中指の骨の間、中指関節の骨付近のくぼみ。
むくみを取り、目の疲れや肩こりや背中の痛みを軽減する効果がありますが……

まいったなあ。
右手と左手でツボの位置にズレがあるとは。

左手の中渚は、右手の中渚よりも0.2mmほど手首に近いし、左手は右手よりも0.06mmほど深い場所にある。
つまり、左手のツボを押す時には、右手より強い力をかけなければツボに届かないのです。

でも、うまくツボを押せると痛いけど気持ちいい。
正確にツボをとらえられたら、経絡づたいに刺激が伝わり、次のツボの位置がわかる。

今、研究中なのが、喘息に効く手の太陰肺経(たいいんはいけい)。

親指の爪の付け根の「少商(しょうしょう)」のツボを押すと、掌の親指付け根付近の「魚際(ぎょさい)」へ。
手首と親指の分岐点「太淵(たいえん)」。
腕の外側、手首の一番上の横筋から7寸上の「孔最(こうさい)」。
肘の前部の骨のくぼみ「尺沢(しゃくたく)」。
腋の下の横皺から数えて3寸、上腕二頭筋外側の「天府(てんぷ)」。
鎖骨と肩胛骨の間「中府(ちゅうふ)」へと刺激がつながっていきます。

……いかんなあ。「経渠(けいきょ)」と「列欠(れつけつ」)」と「侠白(きょうはく)」と「雲門(うんもん)」が抜けてる。
まだ感覚が鈍いので、太陰肺経の経穴全部をとらえきれていません。

「ツボは急所やねんから、そないギュウギュウ押すもんやない。せいぜい3回程度にとどめとけよ。ツボは息を吐きながら押す。合気道の丹田呼吸法使ってもええかもしれん」

夫のアドバイス通り、加減しながら自分の経絡を調べていますが……自分の経絡をとらえるだけでも一苦労なのに、合気道の稽古中に、相手の経絡をとらえられるかなあ。
不安になってきた。

「ははは。やっぱり苦労してるか。そう簡単に経絡とれるわけないやろ」

私の話を聞いて、夫は大笑いしました。

「大東流でも時間がかかるのに」

夫の言葉で、私は出稽古先で出会った、元大東流合気柔術家で合気道有段者のことを思い出しました。

「そういえば、元大東流合気柔術家の有段者から、経絡の殺法と活法の取り方を習った」

夫はにやりと笑いました。

「そりゃええわ。殺法の方がピンポイントでツボをとらえられる。ええこと習ったな。殺法で自分のツボ押してみ」
「恐ろしいことを。めちゃめちゃ痛いやんか。あれ」

元大東流の有段者に手首の経絡を殺法でとられた時の衝撃と痛み。
思い出すだけで、ぞっとします。
大東流合気柔術の相手のツボを押さえ、一時的にダメージを与えて制する技術が「殺法」。
逆に「活法」でツボを押せば、痛いけど気持ちよくて健康にいい。

「あほ。殺法は人にかけられるから痛いんやろが。自分で押す時は加減できるやろ」

そういえばそうでした。

「合気道で関節を極めてるツボは、ほとんど腕だけなんやから、数は知れとるわ。言うておくが、稽古の時は、殺法じゃなくて活法使えよ」
「わかってる」

大東流は合気道の直系の先祖にあたる武術で、似た関節技がたくさんあります。
確かに、合気道の関節技で極めるために押さえる部分は相手の腕ばかり。
でも、経絡を理解した上で、稽古相手の健康にいい稽古をするには、時間がかかりそうです。

……それにしても経絡やツボは難しい。

ツボは背骨付近に多いけど、自分では見えないから、自分で正確に押すのは難しい。
背中や腰のツボの部分付近を、蒸しタオルやカイロで温める程度がいいでしょう。

たまに私も腰が痛いことがありますが、腰痛のツボとして、自分で押しやすいのは、経絡から独立している経穴、奇穴(きけつ)の「腰痛点(ようつうてん)」。
これは手の甲側、手首の骨から指の骨が分岐する部分、骨のくぼみに2カ所あります。
一つは 手の甲側、人差し指と中指の間。
もう一つが小指と薬指の間。

そして、手の太陽小腸経(たいようしょうちょうけい)の「養老(ようろう)」。
手の甲側、手関節の皺から一寸(親指幅一つ分)上、手首の骨の上のくぼみ。
位置は個人差があるので、ご自分の目で見て触って確かめてください。

奇穴の「腰眼(ようがん)」は、背中側の骨盤のくぼみですが、自分では見えない部分。
正確に押すのは難しい。

腰痛には、椎間板ヘルニアのような骨の異常、膵臓ガンの初期症状、筋肉疲労など、いろいろな原因があります。
まずは検査を受け、診断に応じて、医師、柔道整復師、整体師や鍼灸師などとご相談ください。

それから、正月の集まりの席上で、更年期障害を心配していた妹の検査結果は「自律神経失調症」。
妹に教えた更年期に効くツボ、足首の「三陰交(さんいんこう)」は、胃腸を整え、むくみや冷えにも効くので、女性におすすめですが。

「ツボに頼りすぎるな。あんまり肩こりひどいんやったら、ちゃんと整体に行け。ただし、下手にそこらへんの整体行ったら、えらい目みるで」

こんなふうに夫は無茶なことを言います。

「いや、ご主人の言われることは、ごもっともです。整体の世界では、500人の体に触れられて、ようやく本格的なスタートですわ。評判ええ整体師でも、腕がええんか、サービストークがうまいだけなんか、そこを見極めんと。多少の遍歴はいたしかたありません」

昨年春に開かれた「Twitter西の武人の集い」で、京都の整体師にアドバイスされました。
この集まりは、席の関係で「武道武術グループ」と「整体グループ」に分かれ、私は整体師の皆さんと同じテーブルへ。

「なんで武道家の集まりに整体師がおるねん?」と思われる方もおられるでしょうが、整体の技術は柔術が源流。
武道武術に興味がある整体師、武術家の整体師が多いのです。
結局、整体の話ばかりしていて、武道武術の話は全然しなかったけど、有意義な時間でした。

経絡の勉強をはじめて、あの時の整体師の皆さんの言葉の重さを痛感しています。
体のメンテナンスは、自分自身で調整できる部分が多くない……

「なに、また首が痛い? パソコンに向かう姿勢が悪いんやろ。そないツボに頼るな。湿布でも貼って寝とれ。病気治すには体休めるのが一番。さっさと寝ろ!」

最近、夫に叱られつつ、早めに就寝することが多くなりました。
でも、合気道に使うツボと、持病の喘息と自律神経失調症のツボだけは、なんとかマスターしたいですね。
ラベル:整体 柔術 合気道
posted by ゆか at 19:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 武道系コラム | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
にほんブログ村ランキング
こちらには『ventus』で書かれている内容と同じ分野のブログがたくさんあります。
もし、よろしければご覧ください。

武術・武道ブログランキング

ステーショナリー雑貨ブログランキング