当時、中学生だった甥はベストセラー漫画本を私に見せた。
そして、机の引き出しから別の漫画本を取り出した。
「ユカ姉ちゃんだけに特別に見せたるわ。ほんまはこっちが好きねんけど。ツレには内緒にしてる」
中身を見せてもらったが、普通の漫画だった。
「バレるとネットで悪口書かれたり、学校でいじめられたりするんか?」
「そうやないけど「イタイ」って言われそうやねん。今流行ってるのは好きやないけど、押さえんと周りから浮くからなあ」
困惑の表情の甥。
この年齢の子どもにとって、学校の人間関係が世界のすべてだから仕方がないのかもしれない。
「周りに隠してもいいから、自分の好きな漫画は読み続けた方がいいよ」とアドバイスしたら納得していたようだ。
この本は、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダーの著者(団塊ジュニア世代)が、甥と同じ平成生まれの「さとり世代」61人と座談会形式で30時間以上議論して、「車もブランド品も恋人もほしくない。高級レストランでの食事や旅行もしたくない」という「さとり世代」の実態を明らかにしたもの。
座談会参加者が東京在住の有名大学の学生ばかりで、サンプルに偏りがあるが「さとり世代」の特性は大体わかる。
不景気な時代に育ったため「コスパ(費用対効果)」に敏感で高額消費には興味がない。
ネット情報で世界中のあらゆるものを「見た・体験した」気分になっている。
ソーシャルメディアの濃密な人間関係になじみ、「仲間うちで空気を読む能力」は高度。
「今の生活に満足。この先どんな状況にも順応できる」と豪語する「さとり世代」が、巻末の「バブル世代」との対談で、その認識を見事に覆されたのが興味深かった。
私も自戒しているが、ネット検索は自分に都合のよい情報だけを集めてしまいやすい。
「さとり世代」が本格的に社会に出てきた時に企業が受けるインパクトより、社会の現実に直面した「さとり世代」が受けるダメージの方が心配だ。
『さとり世代』 原田曜平 著 KADOKAWA
ラベル:世代
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