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2014年08月19日

武と医(後編) 驚異の技術

柔術家で整体師でもあるFacebookの「友達」のつぶやきの中で、時々「腱引き」という鶏をさばくようなニュアンスの言葉や、「筋肉の癒着を剥がす」という物騒な言葉が出てきます。
特に「筋肉の癒着を剥がす」のは「かなり痛い」らしい。
「腱引き」は柔術に由来する治療法らしいけど「痛い」のはかなわなんなあ。

さて、ここで柔術と柔道整復の関係をおさらいしておきましょう。
 
柔術の稽古では、関節の脱臼・骨折・筋肉の断裂などのケガが多く、その応急処置として人間の体の仕組みを「活法」が発達します。

『実践 武術医療 身体を識り、身体を治す!(月刊秘伝編 BABジャパン)』によると、江戸時代、町道場を開いていた柔術師は副業として「ほねつぎ屋(医者)」を営んでいましたが、明治時代になり西洋医学が入ってくると、「接骨術」は「古い科学的根拠のないもの」として軽視され、同時に柔術を習う武士もいなくなり、多くの柔術の流派が失われてしまいました。

生活の糧を失った柔術師を救ったのが明治7年の医制公布。
医師として開業を希望する人は試験合格後、開業することができるようになったのですが、本格的に柔術の「活法」が医療「柔道整復」として公認されるのは大正9年。
しかし、この時、公認された技術は接骨・経絡で、「筋絡(筋肉のつながりを利用した医術)」は公認されませんでした。
 
「腱引き」は、この「筋絡」を使った技術。
現在、この技術を引き継いでいる『筋整流法(古式腱引き)』の創始者・小口昭宣氏によると、「あまりにも短時間で治癒するために、患者がいなくなってしまい、生計を立てられなくなって絶滅した技術」。
小口氏が東北の古流柔術家から伝承した技術に独自の工夫を加えて作ったのが、「筋整流法(古式腱引き)」です。

なお、興味深いことに、小口氏とほぼ同じ技法を使って人の体を癒しているのが、柳生心眼流兵法の島津兼治師範。
島津師範は、揚心古流柔術を極めた父が、筋絡を使った治療をしているのを幼い頃から日常的に目にしていて、その後、柳生心眼流を学んだそうです。

……この部分だけ読むと、「武術を学んでいた」というより「医術を学んでいた」ような感じがしますが。
柳生心眼流兵法は江戸時代初期に竹永隼人に創始された体術、剣術、棒術、槍術などの武器術を含む総合武道です。

戦場での応急処置の技術「活法」を最初に体系化したのは、室町時代に現れた岡山の竹内流柔術。
江戸時代に長崎の医師・三浦揚心が健康を考えて作り出したのが揚心古流柔術。
つまり長い間「武」と「医」の境界線はなかったのです。

ちなみに、小口氏が創始した筋整流法は、筋肉維持を基本に血管・リンパ管などの流れを重視します。
筋肉のゆがみを除去する施術方法を用い、筋肉や腱を調整する医術。

『筋整流法で改善した事例は、「腰痛、ギックリ腰・肩こり・肘・膝の屈伸不全・四十肩・五十肩、額関節の開放不全・股関節開放不全・坐骨神経痛、顔面神経痛、肋間神経痛など神経痛・バネ指等の関節不全・生理不順・生理痛・全身倦怠・寝違え・むちうち症・自律神経失調症・拒食症・うつ病・便秘」などです』

……なんと魅力的な話でしょう。
でも、サイトの文章を読んでいると『部位によっては激痛を伴う』とも書いてある。
痛いのは嫌だなあ。

実際、腱引きとはどんなものなんでしょうか。
家にいる柔術家に訊いてみましょう。

「腱引きって、どんなもの?」
「腱引き?」

不審そうな表情を見せる夫。
そういえば、大東流合気柔術は経絡を重視する武術だった。

「なんか、筋肉を引っ張って調整したり、筋肉の癒着を剥がしたりもするらしい」
「ああ、療術の方か。あれは効くけど痛いで」
「なんで」
「不自然な状態で固まってる筋肉をほぐしたり、運動不足やケガとかで、筋肉を包んでる筋膜同士が脂肪や繊維で引っついてるのを、力づくで剥がすわけやから、痛いの当たり前やんか。マッサージや整体とはわけが違うんやぞ」

「そうか。やっぱり痛いのはしょうがないのか。……私にやらなくてもいいからね」
「あほ。俺は武道家やから医療行為はでけへんのや。せいぜい意識して姿勢を正す。満遍なく筋肉を動かすよう軽い運動をする。その程度で、あとは真面目に医者へ行け」

叱られてしまいましたが、まあ、仕方がないか。

それにしても謎だらけの合気道の祖先「柔術」。
まだまだ調べる必要がありそうですね。
ラベル:整体 柔術 合気道
posted by ゆか at 22:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 武道系コラム | 更新情報をチェックする
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