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2014年09月13日

白と黒(前編)天の声

……ココハホームカ?アウェイカ?……

あの時、身体の意思(自己防御本能)の問いに答えられなかった私。
久しぶりに戻った所属道場の合気道の稽古なのに。
稽古している他の人と自分との間に、ガラスの板がはさまっているような妙な感覚が続いて。
釈然としないうちに稽古の時間が終わってしまったけれども。

あれはなんだったのか。
ずっと、そればかり考えていました。

確かに在宅介護で所属道場を離れて、5年間出稽古先預かりで稽古していて、動きが少し変わっているかもしれないけど。
他道場で稽古することは「ガラスの壁」ができるほどよくないことだったのか。
わからない。

「最近、お前の言葉の中に「敵」とか「味方」とか、よう出てくるけど、そういう「白か黒か」の考え方は、下手すると「敵」を増やしかねんぞ」
「白か黒か一瞬で判断できなければ、命取りになりかねんでしょう」
「まあ、戦う時はそうやけど。人間関係にまで、それをあんまり持ち込むな」

夫にたしなめられて、先日の出来事を思い出しました。
9月初旬に参加した、NPO「とよなか・歴史と文化の会」主催の古文書講座での出来事を。

『信長公記』の原文(漢文)を一節ずつ参加者が順番に読み上げていく講座が終わって、NPOの代表者にご挨拶しようとしたら先客がいました。
白髪の老紳士。

断片的に聞こえた話では……去年、宮内庁御用達の店を息子に譲り、今は悠々自適の生活。
この近くに住む親戚の家で夕方から行事があるので、その時間つぶしに古文書講座に参加したとのこと。

「なぜ、これほど優れた建物を土日の短時間しか公開しないのですか? もったいない。立派な観光資源ですよ。これは」

同感です。実にもったいない。
室町時代に豊中市内にあった「原田城」。
その跡地の石垣を巧みに取り込んだ「昭和モダン」形式の家屋・国登録有形文化財「旧羽室家住宅」。
この建物の一室で古文書講座が行なわれていたのでした。

「ここは豊中市教育委員会の管轄でして……。文化財を活用するより保護する意識が強いものでして……」

代表者は困惑の表情。

老紳士が建物から出て行った後、私は代表者に簡単にご挨拶して、写真を撮るために庭に出ました。
「旧羽室家住宅」の庭は、四季折々に違う表情を見せる木々を巧みに組み合わせた美しい庭。
次の古文書講座は11月だから、今日は初秋の庭の写真を撮っておこう。
そう思ってカメラを取り出すと……

先程の老紳士が写真を撮っていました。
やっぱり目のつけどころは同じなんですね。
彼が一通り写真を撮り終わったタイミングを見計らって、声をかけてみました。

「今日はお天気が悪くて、あまりよい写真が撮れなくて残念でしたね」
「この庭は紅葉が多いから、秋になると、さぞ美しいでしょうね。本当に惜しい」
「私もそう思います。そこで土地の歴史や文化の文献を残す事業をはじめました」

彼の表情が変わりました。

「7月半ばにファンドを獲って事業をはじめたところですが。どうしていいやら、といった感じです」

彼は一瞬目を細めた後、苦笑しました。

「女の人は真面目すぎるからね」
「?」
「自分の思ったことに一直線……それで自滅していった女社長を私はたくさん見てきた。あなたの事業はこの土地にとって大事なものだから言っておくけど。女社長は三角定規だ」
「三角定規……ですか?」

私が問い返すと彼は笑いました。

「そう、三角定規。自分の信念に合わないものは全部切り捨ててしまう。がんばりすぎて肩肘張っちゃうからね。女の人は。その点、男は雲形定規だよ。白か黒か、じゃなくてグレー。必ず曖昧な部分をおいておきなさい」

……天の声か……

私が判断に迷った時、唐突に現れて適切な助言をして去っていく人々。
そして二度と会えない人々。
時々出会う不思議な人々を密かに「天の声」と呼んでいるのですが。
どうやら今回の「天の声」は、この方らしい。

「大変貴重なアドバイスをいただき、ありがとうございます。がんばります」
「まあ、がんばりなさいよ」

悠然と去っていく老紳士の後姿に、私は深々と頭を下げました。

……白か黒かではなく、グレーの部分を意識的に残す……
 
やたらに「戦う」局面が多かったために「白か黒か」「敵か味方」の判断基準しかない。
「いかなる手段をとってでも身を守ることが正義」の自己防御本能の方に「白か黒か」は任せておいて、私は「グレーゾーン」の範囲を考えるのが当面の課題ですね。
まずは稽古で試してみよう。

「明日、合気道の稽古に行ってくる」
「調子よくないのに無理すな」
「手の太陰肺経と少陰心経、大気拳でフォローできるところまで稽古して、あとは見学に回る。明日の稽古は「無料体験講習会」だから、初心者も多いだろうし。ハードな稽古をやらないと思う」
「肺と心臓と体温調節だけは自力で多少調整できるか。まあ大丈夫やろとは思うけどな」

そう言いながらも、少し心配そうな夫。

手の太陰肺経(呼吸器疾患に効くツボ)と、少陰心経(循環器系とストレスに効くツボ)は柔術の技術(経絡)。
発汗発作に即効性のある大気拳は、極真空手に型の一部が取り入れられているもの。
いずれも合気道にはない技術ですが、持病の自律神経失調症を調整したくて勉強しました。

前回の稽古で感じた「ガラスの壁」の正体を知りたい。
自分が作ったものなら、なんとかなるかもしれないけれども。
そうでない場合は……

……次回に続く……
ラベル:合気道
posted by ゆか at 23:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 武道系コラム | 更新情報をチェックする
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