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2005年06月04日

『働くということ』

『働く人』には『日銭を稼ぐ人』、『仕事をする人』、『儲ける人』と色々いるが、この本は『仕事をする人』に焦点を当てたもの。

書かれている現実……海外に生産拠点を移したため、共通語の英語を使えなければ社員食堂さえ利用できなくなった企業。中国進出の工場には、猛烈な勢いで技術を吸収する若者たち。キャリアのために会社を積極的に利用するしたたかな日本の若者。さらにそれを逆手にとって年俸制で活性化をもくろむ企業。……読んでいるうちに、「こりゃ、私もうかうかしていられない」と、妙にあせってしまった。

一番印象に残ったのが、『伝達工学(コミュニケーション・エンジニアリング)』の問題。

国際競争を勝ち抜く合理化で、その企業独自の文化や技術を持った社員が減り、残った社員にも、「この先、会社がどうなるかわからないのに、若い社員に、今までのやり方を教えてもムダじゃないのか」との迷いがある。

特にJR貨物の30代の機関区長を取材した記事は、2005年4月25日のJR福知山線脱線事故を予感させるものだった。

若手はマニュアル世代。加速や減速のタイミングを体で覚える旧車両は苦手。しかし、ベテランから技術を学ぶどころか「古い作業」と拒む。時代の変化にとまどい、若手を厳しく指導することができない50代のベテラン社員。中堅層の30代は板ばさみで苦悩する。

このままでは、日本のあちらこちらで今回のような事故が多発するだろう。

JR西日本の経営体質を責めるだけでなく、他の企業にも気をつけた方がいい。

「今まで持っていた技術をどう次の世代に伝えるか」……JR西日本だけではなく、今、日本のあらゆる企業が直面している問題だからだ。

『働くということ』 日本経済新聞社 編  日本経済新聞社

(この記事は2005年6月3日時点の情報を元に書かれています)
posted by ゆか at 12:58| Comment(0) | TrackBack(2) | 本読みコラム | 更新情報をチェックする
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