書かれている現実……海外に生産拠点を移したため、共通語の英語を使えなければ社員食堂さえ利用できなくなった企業。中国進出の工場には、猛烈な勢いで技術を吸収する若者たち。キャリアのために会社を積極的に利用するしたたかな日本の若者。さらにそれを逆手にとって年俸制で活性化をもくろむ企業。……読んでいるうちに、「こりゃ、私もうかうかしていられない」と、妙にあせってしまった。
一番印象に残ったのが、『伝達工学(コミュニケーション・エンジニアリング)』の問題。
国際競争を勝ち抜く合理化で、その企業独自の文化や技術を持った社員が減り、残った社員にも、「この先、会社がどうなるかわからないのに、若い社員に、今までのやり方を教えてもムダじゃないのか」との迷いがある。
特にJR貨物の30代の機関区長を取材した記事は、2005年4月25日のJR福知山線脱線事故を予感させるものだった。
若手はマニュアル世代。加速や減速のタイミングを体で覚える旧車両は苦手。しかし、ベテランから技術を学ぶどころか「古い作業」と拒む。時代の変化にとまどい、若手を厳しく指導することができない50代のベテラン社員。中堅層の30代は板ばさみで苦悩する。
このままでは、日本のあちらこちらで今回のような事故が多発するだろう。
JR西日本の経営体質を責めるだけでなく、他の企業にも気をつけた方がいい。
「今まで持っていた技術をどう次の世代に伝えるか」……JR西日本だけではなく、今、日本のあらゆる企業が直面している問題だからだ。
『働くということ』 日本経済新聞社 編 日本経済新聞社
(この記事は2005年6月3日時点の情報を元に書かれています)
【関連する記事】
- 『つくる仕事の一日』
- 『ずるい!ChatGPT仕事術』
- 『外資系コンサルが×AIのプロが教える 生成AI時代の「超」仕事術大全』
- 『ChatGPT攻略』
- 『実家スッキリ化』
- 『仕事でSNSを使いたいけど初心者の「やらかし」が怖いので弁護士さんに気になるこ..
- 『「AIクソ上司」の脅威』
- 『スピードも質も上がる!一生役立つ仕事術100』
- 『暮らしのヒント集3』
- 『インフレ・ニッポン』
- 『省エネのプロが教える みんなの節電生活』
- 『「国の借金は問題ない」って本当ですか?』
- 『ウクライナ・ショック 覚醒したヨーロッパの行方』
- 『すぐやる人のビジネス手帳術』
- 『最新版 定年までに知らないとヤバイお金の話』
- 『キーワードでまるごとわかる投資の教科書』
- 『人生が変わる紙片付け!』
- 『結局、老後2000万円問題ってどうなったんですか?』
- 『日経テクノロジー展望2022 世界を変える100の技術』
- 『2022年度版「コンサルティング力」がアップするFP資格を活かす150の話題』..