どんな武術にも「見せどころ」があって「どの方向に見せるか」が難しい。
本来は国旗が掲げられた「大会関係者席」が「正面」になるのですが、今回の演武者は右横にある「マスコミ関係者席」の方を向きがちなのです。
でも、せっかく用意された「マスコミ関係者席」は空っぽ。
みんな席を離れて正面や左右に散らばって、演武場に踏み込んで写真を撮っています。
これは難儀だな。
演武者側は「見せどころ」を、どこに見せていいのかわからない。
一昨年に姫路で見た「日本古武道演武大会」の時よりも、演武しにくそうな流派が多かったように感じました。
移動してみたものの、観覧席は最前列でも2階から演武を見下ろす形になるので、どうしても距離が遠い。
次は絶対にデジカメで撮ろう。
さて、演武再開。
新撰組の近藤勇が使ったことで有名な「天然理心流剣術」。
サイ・日本刀・中国刀・空手など、多彩な組み合わせの演武「琉球王家秘伝本部御殿手(もとぶうどうんでい)」。
泉州の武人が演武する「関口新心流柔術」では、武人は「受け(技をかけられる側)」ばかり。
写真をFacebookにアップすると「なんでやられっぱなしなんだ」と友人の武道家から苦情がきそう。
でも、演武の技の組み立ては工夫されていて、前半が柔術、後半は居合刀でメリハリがありました。
ちなみに今回は柔術が居合刀を使い、剣術が木刀を持った相手を素手で取り押さえる「無刀取り」を見せたりするので、ゲームの延長で演武を見に来た若い世代は混乱しそうです。
「演武の説明はいたしませんので、500円で販売しているプログラムをご購入ください」と場内アナウンスがありましたが、入場者の中でプログラムを買った人って、どのくらいいるのかなあ。
もちろん私は買いましたが。
これがないと、ただ「ゲームの実物は地味」という印象しか受けないかもしれない。
ちょっと心配です。
電池の消耗を気にしながら、演武を撮り続けます。
「水鷗流(すいおうりゅう)居合剣法・正木流鎖鎌術」の剛直な剣技と相手の首に絡ませる正確な鎖鎌術に、場内からわき上がる溜息。
そして私の地元・大阪府豊中市の「風傳流槍術」。
実は姫路の「日本古武道演武大会」まで、3.7mの長槍を自在に使うこの流派の存在を知りませんでした。
まったく広報されず、地元で演武会をしないからです。
一度、教育委員会や豊中市広報課と相談して、地元の神社で奉納演武をやってほしいですね。
奉納演武は多くの市民に見てもらえて入門者が増えるきっかけにもなりますから。
ぜひご検討ください。
ちなみにFacebook『北摂叢書』ページに、私の撮った演武の動画を載せていますから、興味のある方はどうぞ。
電源ケーブルが故障して充電できず、どんどん残りの電池が減っていきますが、演武は続きます。
実直な印象の「田宮流居合術」。
風格ある演武を見せる、毎度おなじみ姫路の「本體楊心流(ほんたいようじんりゅう)柔術」。
3年前、大東流合気柔術2段の夫に「姫路城で古武道の演武やってるから見てみ」と言われて姫路に行き、「姫路城古武道演武大会」で、この流派と出会いました。
以後、姫路で行なわれた「日本古武道演武大会」、「西日本古武道大会」、そして今回の演武大会。
古武道演武大会を見に行くたびに、この流派の同じ演武者の演武を見ているので、私にとっては「毎度おなじみ」ですが、先方はそんなことは知るよしもないでしょうね。
子どもが元気よく演武する「鞍馬流剣術」。
棒、乳切木(ちぎりぎ・棒に錘と鎖がついた武器)、鎖鎌を巧みに使う「荒木流拳法」。
垂直に飛び上がる動きが多い「無比無敵流杖術」。
大勢で息の合った動きを見せる「無雙直傳(むそうじきでん)英信流居合術」。
剣道の「胴」のような防具をつけて行なう「高木流柔術・九鬼神流棒術」。
畳に向かって手裏剣を投げる「根岸流手裏剣術」。
投げるのは時代劇で忍者が使う「十字手裏剣」ではなく、まっすぐな「棒手裏剣」なので命中させるのが難しい。
手裏剣が畳に刺さるたびに観客席から感嘆の声が上がります。
合気道の先祖「大東流合気柔術」は東京本部の演武。
夫が学んでいた大阪の「大東流合気柔術琢磨会」よりも直線的な動き。
合気道にもある「四方投げ」や「呼吸投げ」も登場しますが、居合刀も使うところが、やはり合気道とは違う。
サイ・棒・鎌で演武する「琉球古武術」の鎌は鎖鎌ではなく、普通の鎌を両手に持つ珍しい型。
正座の状態のまま飛び上がって敵を斬る「天真正伝香取神道流剣術」。
演武納めは女性家元による「陽流砲術」。
火花と轟音と白煙、観客の拍手の中、無事に第38回日本古武道演武大会は終了。
最期の演武を撮影し、一息ついた瞬間にメールが届きました。
『JAL搭乗便変更のお知らせ』。
何事かとメールを開こうとした途端、iPhoneの画面が真っ暗に。
充電切れらしいけど、充電池とケーブルをつないでも起動しないし、メールの「搭乗便変更」も不気味。
「遅れる」のか「欠航」なのか。
ここは全然土地勘のない東京の「九段下」。
iPhoneが起動しなければ地図を出せないし、連絡先データもiPhoneの中だから、誰にも連絡できない。
最大の問題は「帰りの飛行機に乗れない」こと。
スマホの画面に二次元コードを表示する「タッチ&ゴー」式チケットなので、搭乗手続きができない。
どうしよう。
ゆっくりと帰り支度をしながら考えました。
とりあえず来た時と逆のルートで羽田へ戻り、万一の時のために印刷した搭乗手続きの控えメールを見せて、JALお客様センターと交渉する。
予約席指定と料金支払い済みの証拠があるんだから、「タッチ&ゴー」が機能しなくても、私には搭乗する権利があるはず。
とにかく羽田へ。
武道館のある都営新宿線九段下駅→神保町駅で都営三田線に乗り換え、日比谷駅で降りて徒歩でJR有楽町駅に移動、山手線に乗り換え→浜松町駅で東京モノレールに乗り換えて羽田第一ビル駅へ。
来る時には東京駅を迂回するルートを使いました。
駅の構造が複雑すぎて、道に迷ったら演武大会に間に合わないかもしれなかったのです。
……待てよ。有楽町にはビックカメラがあった。
なんとかなるかもしれない。
武道館へ来る途中、有楽町駅の地下通路で日比谷駅に行くはずでしたが。
地図アプリを使っているのに、なぜか出口を間違えて地上に出てしまったのです。
それはビックカメラの前でした。
大型家電量販店ならケーブルを売ってるし、携帯電話ショップもあるから相談できる。
よし。まずは有楽町だ。
有楽町のビックカメラで買ったケーブルでiPhoneを充電器につなぐと無事に復旧。
やれやれ。これで大阪に帰れる。
東京にはネットで知り合った武道家が多いけれども、今回は誰とも会う約束をしていなくてよかった。
もし待ち合わせしていたら、大変なご迷惑をおかけするところでした。
羽田のJALお客様センターで「搭乗便変更」について聞くと、「運行便を大型機に変えたので座席番号が変わりました。座席は確保していますが、手続き上チケットを再発行します」とのこと。
というわけで、定刻通りに羽田を出発し、2時間後には自宅で「全然電話が通じんやんか。予備のケーブルぐらい持っとけ。あほ」と夫に叱られていました。
でも、また機会があれば、東京のさまざまな演武会を見に行きたいですね。
ラベル:武道
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