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2015年09月13日

西の武神(後編)意外な一面

雨あがりの蒸し暑い大阪。

「四流派住吉大社古武道奉納演武会」を見に行きました。
演武プログラムは「小笠原流百々手式」「柳生新陰流剣術」「宝蔵院流槍術」「薩摩示現流剣術」「小笠原流騎射木馬」。

古武道の演武会は多くの流派が演武するので、各流派7分から10分程度で一番の見せ場だけが披露されるのですが、この奉納演武は4流派で2時間。
それぞれの流派の持ち時間が30分近くあるので、大きな古武道演武会では見られないタイプの演武が繰り広げられました。

まず、なんとか間に合った柳生新陰流剣術。
鍔のない赤い棒状の木刀のようなもので2人の演武者が打ち合っています。
何だろうと思っていると……「これは袋竹刀と呼ばれるもので、一本の竹を幾つかに割って、筒状の革を被せたものです。江戸時代半ばに、安全に稽古できるものとして作られました」と解説アナウンスが入りました。

大きな演武会では解説がないので、パンフレットの情報だけが頼りですが、この奉納演武は、さまざまな型を披露しながら、わかりやすい技の解説をしてくれます。
袋竹刀の演武の後に、木刀による型の演武も行われましたが、袋竹刀の演武よりも木刀の演武の方が直線的な動き。
しかし……この動き、新陰流以外で見たことあるような気がするなあ。

次は宝蔵院流槍術高田派。
戦国時代に奈良の興福寺の僧・宝蔵院覚禅房胤栄が創始した十文字槍を使った槍術です。
「現存する35の型、全部をご披露いたします」との大サービス。

この流派の特徴は「鎌槍」と呼ばれる穂先から左右に別の刃が突き出す「十文字」の形の槍を使うこと。
それまでの槍は「素槍」と呼ばれるもので、普通の刃がついているだけのものでした。

演武は「鎌槍」と「素槍」の組み合わせ。
まっすぐ突く槍に対して、鎌槍は相手の槍の穂先を巻き込んで地面に叩きつける、穂先の鎌を利用して相手に切りつけるなど、多彩な動きをします。
地面に叩きつけられた槍の穂先から砂煙が上がるほどの迫力ある演武。

「鎌槍は素槍に比べて圧倒的に有利だったので、宝蔵院流槍術は全国に広まりました」という解説には納得できますね。

そして、「薩摩藩・御流儀」の薩摩示現流剣術。
薩摩藩主・島津氏の始祖が住吉大社で誕生し、薩摩藩と住吉大社は深い縁があるため、演武が行われたようです。
 
「戦国時代に九州で盛んだったタイ捨流に打ち勝つために作られた型です」との解説がありましたが、『一の太刀を疑わず』、初太刀から勝負の全てをかけて斬りつける……新撰組が恐れた剣術。

この剣術の稽古がまた風変わりでした。
木刀ではなく、堅い柞(ユス)の木の枝を短めに切って、乾燥させたものを使うのです。
不思議に思っていると「木刀より短めなのは、相手の懐深く入り込み打ち込むためです」と絶妙な解説。

杭のような木が立てられ、「立木打ちの稽古」の披露。
演武者が「キィエーイ」という独特の掛け声を出しながら、右に左に立木にユスの枝を打ちつけると、みるみるうちに立木が削られていく。恐ろしい。
短刀対木刀(両方ともユスの木の枝)の演武では、「キィエーイ」と何度も叫びながら、執拗に相手に打ち込んでいくさまも恐ろしい。

最後にいっさい声を出さない木刀を使った演武。
「相手に気配を悟らせないために、気合を出さない型もあります」との解説。
そんな技もあるとは。さすがは「実戦型の剣術」。

同じ剣術でも、洗練された動きの柳生新陰流とは全然違っていましたが、その荒削りな部分に魅力がある剣術でした。

この示現流の演武を見ながら思い出したのですが、柳生新陰流の動きに似たもの……剣道です。
明治44年、文部省が柔道・剣道を中等学校の授業に取り入れた時に制定した「大日本帝国剣道形」の中に柳生新陰流の型が含まれているからでした。
ちなみに、その型は現在の剣道にも引き継がれています。

最後が謎の「小笠原流騎射木馬」。
この奉納演武の主催者『弓馬術礼法小笠原教場』サイトによると、小笠原流は武家の作法の礼法・弓術(弓道)・弓馬術(流鏑馬)の三つ。
「礼法が楷書で、弓術が行書、流鏑馬が草書である」といわれています。

最初に地上で弓を引く歩射(百々手式)と別に小笠原流の演武があるのは、馬の上から弓を引く流鏑馬が「神事」だからでしょうか。

的を準備するのに少々時間がかかりましたが、鎧直垂(よろいひたたれ)の裾と袖をくくり、物射沓(ものいぐつ)をはき、頭に綾藺笠(あやいがさ)被った鎌倉時代の狩装束の演武者と……鞍をつけた本物の木の馬が出てきたので驚きました。

流鏑馬は距離2町(約218m)の直線を、馬を全力疾走させながら3つの的を連続して射抜くもの。
非常に難しいものですが、「今回は普段の稽古に使う木馬での演武を披露します。生きている馬でも木馬でも、変らぬ状態で矢を射ることができるようにしています」という解説もすごい。

うーむ。最初の百々式から見ればよかったなあ。
各流派が工夫をこらして演武の解説をしているので、これまで知らなかったことが色々とわかったかもしれない。

黒い的が一つ用意され、最初に赤い鎧直垂の演武者が馬にまたがりました。
介添えの狩姿の従者が木馬を押すと……なんと木馬が回転しはじめました。
木馬と地面をつなぐ棒を軸に木馬が回転する仕組みだったのです。

木馬が右に回転する間、「インヨーイ」と独特な声を出しながら、弓に矢をつがえる射手。
そして、木馬と的が平行の位置になった瞬間、矢を放ち、矢は見事に的の中心を射抜きました。
すかさず「演武は陰陽と声をかけながら行います」との解説。本当に親切です。

次は緑の鎧直垂姿の演武者が馬に乗ります。
その間に木の的が3つ並べられました。
流鏑馬の基本形です。

「木馬が回転するのは、それぞれの的との距離と馬との間合いを同じにするためです」との解説。なるほど。

この演武者も3つの的を次々に射抜き、本当に見事な演武納めになりました。

これで奉納演武は終了。
夏の日中、2時間立ちっぱなしで写真を撮ったりメモをとったりするのは大変でしたが、「古流の稽古風景」という非常に珍しいものが見られたので楽しかったです。
写真はFacebookに載せていますので、興味がある方はどうぞ。

「午後から体験会がありますが、まだ空きがありますのでどうぞ」というアナウンスも流れましたが、熱中症になったらしく、頭が痛くなってきたので体験稽古は断念。

後で見た『宝蔵院流槍術』サイトに体験稽古の写真が載っていましたが、参加者は若者と家族連ればかり。
奉納演武にはいなかった人々でした。

「古武道演武に興味があるのは中高年。歴史や型には興味がないけど、体験したいのは若者世代」

このあたりが今後の課題でしょうね。
タグ:神社 剣術
posted by ゆか at 01:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 武道系コラム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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