「ライティングアドバイザーなんか意味があるのか。ディレクターがいるじゃないか」と私を罵倒した人は、ヒントもくれました。
なるほど。出版企画で「新しいものは作っちゃダメだ。これまであるものの切り口を変えたものじゃないと売れない」と何度も言われたことにも通じますね。
世間の人の「新しいもの・よくわからないもの」への耐性がなくなってきているのかもしれません。
例えば、わかりやすい経歴の書き方。
「離婚してシングルマザーになって「貧乏のどん底」から根性で成功した」
たしかにわかりやすい。
「結婚3年目に義母が倒れて遠距離介護が始まり、介護歴22年。介護・医療の世界では「金の切れ目が命の切れ目」。介護している義母も喘息持ちの私も「貧乏のどん底」に陥るまでに死ぬ。そこで経理総務の知識を生かした緻密な家計管理、介護を支援する行政制度の活用など、あらゆる手段で破綻を防いでいる。特に夫が積極的に家事や介護をしてくれるのがありがたい」
難しいなあ。各方面からクレームがきそう。
「20代から20年介護するなんて無駄な人生」
「子育てを口実に介護断ればいいのに」
「血のつながらない親の介護なんか、離婚して夫ごと切り捨てれば」
前々から言われているけど。
「「金の切れ目が命の切れ目」なんてリアルな話すな!」
「経理総務はずるい!」
「男が家事や介護だと!」
……さらなる集中砲火を浴びるわけで。
ちなみに同じ家族の問題でも、離婚は「人災」。
介護は地震や津波のような「天災」。
倒れるのが本人じゃないから、タイミングや病状を予測できないものです。
同級生でも介護を抱える人が増えましたが、「両親」「祖父母」「兄弟」「子ども(事故)」と、パターンはさまざま。
しかも、ほとんどが「唐突に硫酸を頭から浴びて半死半生になる」タイプの介護。
我が家のように、医療技術の発展で無限に介護期間が延びていく「希硫酸のプールに何十年も年漬けられる」タイプで、なおかつ今でも生き残っているのは「非常に稀なケース」と介護関係者は驚いていました。
ちなみに介護には「勝利」はありません。
親が亡くなって「終わる」か、共倒れになって「破滅する」か。
と、ここまで書いていて「ケア・サバイバー」という言葉が浮かびました。
「介護歴22年・被害総額1000万円のケア・サバイバー夫婦」
うむ。わかりやすいキャッチフレーズだ。
たぶん、この文章を読んで、短期間の在宅介護経験者や施設介護経験者などの軽度な介護体験者が「ケア・サバイバー」を名乗って、「体験からアドバイス」みたいな商売をはじめるんでしょうが。
本当に介護に苦しんでいる人は、目の前の生活に手一杯で「介護について語る」余裕がないこと。
これだけは忘れないでください。
ラベル:介護