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2015年10月28日

白い紙と黒い紙

「豊中の子どもたちのために、何かイベントを考えてください」

すべてはこの一言からはじまりました。

昨年11月に開かれた「とよなか産業フェア」説明会の席上、豊中市産業振興課(旧・地域経済課)の担当者からの依頼で考えたのは、日本の伝統製本技法「折り本」に色鉛筆で絵を描くワークショップ。

自分で文章を書いて、挿絵を描き、綴じて「世界で1冊の本を作りたい」。

昔、そんな夢があって、図書館の本を修復する職人が主催する手作り製本工房に通っていました。

夢がかなったのは10年後。
コスモス文学新人奨励賞を受賞した自分の小説の表紙を描き、四つ目綴じで製本した和本「私家版・玄象(げんじょう)」。
製本工房はなくなってしまったけれども、機会があればまた習いたいものです。

さて、イベント当日。
ワークショップは大盛況。

でも……なぜか子どもたちは「白」の色鉛筆を奪い合う。
白い紙に白い色鉛筆で絵を描いても見えません。
それでも描こうとするのが、ものすごく不思議でした。

「白」についで人気なのは「金」と「銀」。
これも白い紙に描いても美しく見えない色。
なんとかならんかなあ……

「白」「金」「銀」、そして紙の白さに負ける淡色(桜色や薄紫や象牙色や水色)の色鉛筆を引き立たせるものを作ってみたい。
半月ほど頭の片隅に引っかかっていたのですが、自宅で床にワックスがけしていて、突然ひらめきました。

蒔絵か!

蒔絵は漆器の伝統的な技法の一つ。
金銀で模様を描いたお椀や重箱を見かけたことがある方も多いと思います。
日本の伝統製本技法「ヘラ押し」「糊入れ」で作る「白と黒の絵本」。
なかなかいい感じ。

さまざまな紙を画材店で集め、文具店で色鉛筆を徹底的に試し書きして、発色のよい折りやすい紙と色鉛筆は見つけたものの、問題はガイド線。
どうしても線が大きくズレてしまい、組み立てても「本」にならない。
紙に何度も線を引き、折って模型を作りながら悩んでいると……

「それ、プロッタ(建築や機械などの図面データを出力する装置)やないと無理やで。プリンタとかコピー機やったら、紙が水平移動するから正確に線引かれへんし、断裁が難しい」

夫は元CAD講師。
機械製図の専門家です。

「それができるのは、ある程度の規模の印刷会社だけやろ」

印刷会社……姫路の小野高速印刷。

「それと意願出しとけよ。これまでなかったもの作るねんから」
「意匠登録って出願料かかるし、落ちたら丸損だし。受かると登録料いるやんか」
「そういうもんはダメ元やねん。よそのやつが、それ勝手に作って儲けてもええんか?」

それは嫌。
近畿弁理士会の無料相談に出かけて、意匠登録出願を決めました。
Illustratorの使い方がわからないので、Excelで図面を描いて、小野高速印刷に送ってみると……

「これは何ですか?」と返事がくる始末。

「それは子どもが紙を折って、絵を描いて、初めて絵本になるものです」
「絵本台紙というわけですね。面白い」
「たぶん、現時点では、この世に存在しないものですわ。私も実物は見たことがありません。自分でコピーやプリンタで散々試したけど、どうしても正確なガイド線が出せなかったんですが、御社ならなんとかできると思います」
「やってみましょう」

イメージ通りの実物が届いた時は、本当に驚きました。

1枚の紙から組み立てる小さな絵本。
子どもが親と一緒に自由に色鉛筆で絵を描いて楽しみ、記念に絵本を持ち帰ってもらう。

そんな単純なイベントですが、豊中市コミュニティ政策課から「豊中市共催」の決裁が下りて、今年の4月から「みんなで作ろう!ミニ絵本」ワークショップがスタート。

「これ、いいわね。うちの団体も、自分のところのロゴマークの入ったものがほしい」

そんな声を受けて、絵本台紙を「オリエンス(ラテン語の「日の昇るところ」・英語の「オリエント(東方)の語源)」と名づけて発売しました。
オーダーメードで名前を入れる形式で、色は白と黒。
小野高速印刷が持っているAR(拡張現実・印刷物とネットが融合した最新印刷技術)を組み込んだものをはじめ、さまざまな種類があります。

その一方、ワークショップでは、参加者の意見を取り入れながら、イベントの開き方に工夫を重ねています。
白紙に映える色は黒紙では見えず、黒紙で美しい色が白紙では精彩を欠く。
子ども好みの色鉛筆の芯と大人好みの色鉛筆の芯も全然違うので、ついに色鉛筆は200色に。

10月からイベント案内が豊中市内全戸配布(17万部)の『広報とよなか』に、定期的に無償で掲載されることになり、ボランティアも募集開始。

先日、大阪市内で開かれた「大阪勧業展2015」でも、「オリエンス」と200色の色鉛筆が大人気。
知り合った高槻市の事業者に「もし、イベントを企画したら、その色鉛筆を持ってきていただけるんですか?」ときかれました。
「台紙をお買い上げいただいたら、色鉛筆を持って出向きます。豊中と高槻は阪急電車でつながってますから、大丈夫ですよ」と答えておきました。

豊中でワークショップを重ねるうちに、どんどん色鉛筆が増えているので、高槻に出向く頃には300色になっているかもしれません。
楽しみな話です。
ラベル:絵本 色鉛筆
posted by ゆか at 11:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 日常コラム | 更新情報をチェックする
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