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2017年01月12日

平成28年の武祭(前編)壁

昨年の話で申し訳ありません。

公益財団法人日本武道館から招待状をいただいたので、日本古武道演武大会に行ってきました。

大阪から飛行機で2時間半、日本武道館に到着。
撮影しやすい位置には、やっぱり人が多い。
なるべく前の方、なんとか最前列で場所を取りました。
隣から1.5メートル離れた席の風邪で具合悪そうな若い男性が気になりますが、とりあえず撮影の準備を。

去年はiPhoneの本体とバッテリーをつなぐケーブルが故障し、充電できなくなって、あやうく東京で遭難するところでしたが、今年のデジカメもiPhoneもバッテリーは万全。
きちんと撮影したいなあ。

大会プログラムを広げようとしている……大きな音が響きました。
演武の合図に使われる迫力ある太鼓の音。
いよいよ今年の演武大会がはじまります。
演武場を埋め尽くす各流派の武人の姿を見ると、わくわくしてきました。

開会式の後に古武道功労者の表彰式があり、立身流兵法の宗家と、鹿島新當流剣術宗家が表彰されました。
おめでとうございます。

去年は若い女性と家族連れが多かった観客席。
今年は時代小説ファンとおぼしき中高年が多いですね。

表彰が終わると演武がはじまりました。

最初は小笠原流弓馬術(おがさわらりゅうきゅうばじゅつ)。
一直線に並んだ烏帽子直垂姿の若者たちが、次々に的に矢を射かけていきます。
これが祝事・祭事の時に行われる「百々手式(ももてしき)」と呼ばれる儀式。
古武道演武大会の初めにふさわしい演武です。

続いて切れのいい動きで無刀取りを披露する立身流兵法(たつみりゅうへいほう)。
座った状態で飛び上がり、鮮やかな短刀取りの技を見せる竹内流柔術日下捕手開山(たけのうちりゅうじゅうじゅつひのしたとりてかいさん)。

前回はiPhoneしか持っていなくて、きれいな写真が撮れなかったので、今度はデジカメで撮影。
撮影の合間に、演武の印象をメモしなきゃいけないし、非常に忙しい。
撮影は順調だから、一昨年、大雪で飛行機が羽田に降りられず、見損なった鹿島新當流の動画も撮影できるかも。期待が胸に広がりました。……ところが。

天道流薙刀術(てんどうりゅうなぎなたじゅつ)を撮影中、異変が……
「楊心流薙刀術より回転が少なく、重く直線的な動き」とメモした後、デジカメを構えてファインダーをのぞきこんだ途端、「終了します」と表示が出て、そのまま画面は真っ黒に。
再起動させてみましたが、またしても「終了します」。
何度やっても終了され、最後には電源そのものが入らなくなりました。

なんでこんな時に……思わず天を仰ぎました。
前日にも大会直前にも動作チェックしていたのに。
去年も撮影中にケーブルが壊れたし、日本武道館には魔物がいるんでしょうかね。

デジカメは壊れましたが、まだiPhoneがあります。
不鮮明な画質で鹿島の武人には申し訳ないけど、なんとか撮影した動画を公開できそうです。

気を取り直して撮影続行。
演武は続いています。

4組に分かれて、それぞれが連続技をかけ続ける心月無想柳流柔術(しんげつむそうやなぎりゅうじゅうじゅつ)は、相手から短刀を取り上げた上に、さらに相手を踏んでとどめを刺したりするので驚きましたが、これが本来の武術の姿。

垂直に飛び上がる。
刀を持った相手を蹴る。
すれ違いざまに回って相手を斬る。
俊敏な動きを見せる兵法タイ捨流(へいほうたいしゃりゅう)。

関節技を多く見せる沖縄剛柔流武術(おきなわごうじゅうりゅうぶじゅつ)。
「お互いに掌を合わせて押し合う動き、何だろう」とつぶやいたら、横から何やら声がしました。
声の主はマスクをした若い男性。
さっきから咳をしながら、何事かつぶやいている。

日本武道館は古い建物で空調設備は万全じゃないので気温が低い。
しかし東京で見知らぬ男性に、「風邪が悪化するから帰った方がいい」と言うのもどうかなあ。
気になりつつも演武の撮影です。

右手で刀の柄を握り、左の掌で刀の峰を受け、頭の上で刀の橋を渡すような形で、上段から切りつけた相手の刀を制する神道無念流剣術(しんどうむねんりゅうけんじゅつ)。
膝行(膝をついたまま畳の上を移動する技術)で、床の上を縦横無尽に移動しながら切れのいい投げ技を披露する大東流合気柔術琢磨会(だいとうりゅうあいきじゅうじゅつたくまかい)。

居合に近い動きですが、重心はつま先でも踵でもなく、足の中ほどにあって、安定した動きの鐘捲流抜刀術(かねまきりゅうばっとうじゅつ)。
ヌンチャク、棒、鍬、サイなど、武器を巧みに使う金硬流唐手沖縄古武術(きんがいりゅうからておきなわこぶじゅつ)は軽快な動き。

真剣で鮮やかな青竹割りを見せる円心流居合据物斬剣法(えんしんりゅういあいすえものぎりけんぽう)の日本古武道演武大会公式ガイドブックの解説には、こう書かれています。

『居合修行のネックとなっているのが刀の入手困難である。初手から真刀を用いるか否かでは、その心構え、技ともに、その差は歴然であり、できる限り真刀使用の原則は崩したくない。最近の入門志願者には、居合刀、模擬刀使用もやむを得ぬかと許している』

武器、道具の入手困難……古流共通の悩みが表れています。

演武はまだまだ続きます。

分銅鎖の動きが速すぎて撮影が難しい二刀神影流鎖鎌術(にとうしんかげりゅうくさりがまじゅつ)。

紐と木製の錘(おもり)の演武では、錘が相手の眉間に命中。
悲鳴が上がる観客席。
鎖分銅で刀を奪われた相手が短刀で突いてきたのを鎌で切りつける。
どよめく観客席。

長さの違う2種類の刀をバランスよく使いこなす野田派二天一流剣術(のだはにてんいちりゅうけんじゅつ)。
棒で激しく打ち合い、素手の技では大人の男性の足を抱えて軽々と持ち上げて投げ捨てる。
豪快な柳生心眼流體術(やぎゅうしんがんりゅうたいじゅつ)。

重心を深く沈めて相手の足をなぎ払う。
珍しい動きを見せる初實剣理方一流剣術(しょじつけんりかたいちりゅうけんじゅつ)。

さっきから隣の男性、「寒い寒い」とつぶやいてるけど。
帰った方がいいんじゃないかなあ。
喘息でインフルエンザの予防接種にドクターストップがかかっていて、風邪気味の私としては、発熱伝染性呼吸器疾患の東京の見知らぬ人に、声をかけるのもためらわれる。
気にはなるんだけど。演武の方に集中しよう。

合気道にはない、相手と横に並んだ状態から関節技をかける長谷川流和術(はせがわりゅうやわらじゅつ)
他の流派に比べると木刀は少し細め、殺陣に近い鋭い動きを見せる雲弘流剣術(うんこうりゅうけんじゅつ)

ここで休憩。午後の演武の最初の演目が鹿島新當流剣術。
武道の神・武御甕槌(たけみかづち)ゆかりの武道ですが、普段は鹿島神宮で行われているため、東京でも見る機会がない珍しいもの。Facebook友達の「鹿島の武人」が出る予定なので楽しみです。

次回へ続く。
ラベル:武道 兵法
posted by ゆか at 00:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 武道系コラム | 更新情報をチェックする
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