昨年10月のこと。
学校の担当キャリアカウンセラーが変わりました。
「僕は簿記と税理士担当してるんで、FPのことはわからないんですけど。年に3回も試験があるのか。いいなあ。税理士は年1回しかないんですよね……それにしても、退職金控除とか債券の応募者利回り計算とか建ぺい率計算とか民法とか、出題範囲広過ぎですよね」
結局、次の試験の1月まで、週3回学校で勉強することに。
2回試験に落ちたFP受講者と、FPのことは全然知らない簿記・税理士(簿記論・財務諸表論)講師と、東京本部のFP講師陣のオンラインサポート……
3度目のFP受験は無茶な組み合わせでスタートしました。
10月は過去の2回(9月と5月)失敗した試験問題をもう一度解く。
Excelで作った表に間違った箇所を箇条書きする。
自分の間違いを見直すのは辛い作業。
蘇る試験の時の悪夢をこらえながら、週に3回、学校に出かけました。
「よく週3回来れましたね。挫折するんじゃないかと思ってたんだけど。まずは自分との約束を守り、すべての予約日に出席できた。自分の弱いところを直視することもできた。今はこの段階でOK。間違いなく良い方向へ変われますよ」
「でも、ここまで間違うとは思いませんでした。よくこの理解度で試験受けましたね。私は」
「この理解度で合格点まであと2点って……強運ですね。受験はどうしても運不運があるから。しかし、ここでは、あえて自分の弱点をつぶす。リスト見てると法人税、所得税、消費税、贈与税、相続税……「税」弱いですね。これじゃ、税理士のテキスト見た方が早い」
「どんな手段を使ってもいいから合格を」ということで、学校のテキストだけでなく、本屋で買った大量の参考書で勉強。
自習室を無料で自由に使えるのがありがたかったです。
11月。
週3回学校に通うが習慣になりました。
1月向けオンライン答案練習授業がはじまり、いよいよ受験へ。
「社会保険や税に比べると法改正が少ない不動産と保険を暗記して点数を稼いでください」
「贈与税の計算は、まず特例を押さえましょう」
東京本部配信のオンライン授業では前回、前々回にはなかった合格アドバイスが盛り込まれていました。
12月。
「ライフプランニング(社会保険を主体にした資金設計)」「保険」「金融」「税」「不動産」「相続」の6つの分野の何が出題されるかわからないのがFP試験の怖いところ。
前々回は「相続」で落とし、「相続」に集中すると、前回は「金融」に足元をすくわれた。
法改正すれば、試験範囲そのものが変わるので急がなければ。
勉強すればするほどつのる不安。
「大丈夫ですよ。どうせダメだから」と、ひどい励ましの言葉を背に公開模試を受けて採点。
「……ケアレスミスが多い。1か所間違うと、それに引きずられる。メンタル弱いですねえ」
答案を写した模試の問題に、先生は情け容赦なく朱を入れていきます。
「ちぇっ。どんなにダメかと楽しみにしていたのに。案外できてるじゃないですか」
「いや。自己採点で、あと一歩まできているのに。これが本試験なら負けですよ」
「今回は模試ですから。ダメでも構わないんですよ。簿記でも税理士でも、試験直前の2週間が勝負時なんです。年末年始は軽めの勉強でも構わないでしょう。試験は22日なんですから、年明けからは死ぬ気でやってもらわないと」
「年末年始返上で勉強しないと」と言われると思っていたので、意外な気がしましたが、実際、年末年始はバタバタしてしまって、時間があればテキストをパラパラとめくるのが精一杯。
「軽めの勉強でよい」と言われていたので心理的に楽でした。
1月。
試験直前はひたすら過去問題を解く。
過去問題自体の数が多く、もしこれで新型の問題が出たら終わり。
勉強をすればするほど不安が増していく。
『今回は、前回、前々回よりも勉強されているとのことですので、最後は「自信」を持って試験に臨みましょう』
……東京本部からの激励メールを見た時、泣きそうになりました。
「いよいよ試験ですね。がんばってください。大丈夫。落ちたら僕が締め上げますんで」
キャリアカウンセラーは本当に締め上げそうな気迫。
「大丈夫」の使い方がおかしい気がしないでもないけれど。
たった一言で、全然大丈夫じゃない状態へ追い込まれました。
「説得力がある」を通り越して、独特な間合いの「破壊力抜群の言葉の使い手」。
考えてみれば、簿記は年々難しくなるし、税理士試験は1年に1度しかない。
受講生が試験に落ちた時、再挑戦できる意欲と精神力を維持させる「言葉のプロフェッショナル」かもしれません。
試験当日は風邪をこじらせて気管支炎を併発。
喘息薬と抗生物質と抗菌剤を総動員して、試験会場の大阪大学、寒い校舎の中で半日電卓を叩き続けました。
FPは試験直後にネットで解答が公開されるので、答えを控えた問題用紙で答え合わせ。
「ほぼ合格ですね。もうちょっと自分の頑張りをほめてあげてください」
「自分の頑張りをほめてあげてください」
文法的には何かおかしい日本語ですが、言いたいことはわかるような気がします。
自分が本屋で買った参考書で、試験に類似問題が出題されたものや、わかりやすかったテキストなどの話もしておきました。
おそらく、次のFPカリキュラムでは、私の経験が生かされて、さらに合格者がたくさん出るようになり、そのFPたちが多くの家計を救うでしょう。
3月1日、ついに合否発表。
日本FP協会のサイト上に現れたのは『完全合格』の4文字。
『勝訴!』と半紙に字を書いて掲げて走り回りたい心境でした。
『僕は何もしていませんよ。すべてあなたの努力の賜物です。この経験を生かして、さらなるキャリアアップを目指してください』
合格報告の返信にはそう書かれていました。
私の場合、家計でコントロールできない介護の費用や医療費で苦しんで、自分で自分のFPになった特殊なケース。
「書くこと」でキャリアを積んでいくことになるような気がします。
このところ「言葉の力」に自信を失っていましたが、もう大丈夫。
ちなみに、この学校には私が社会に出た時……円高不況で就職浪人していた時に通いました。
簿記の資格を取って経理としてのキャリアが始まり、豊中商工会議所会員になって大阪府の助成金「おおさか地域創造ファンド」支援採択事業者となり、「北摂叢書」を立ち上げ、ファイナンシャルプランナーとしても新たな道を進むことになるのですが。
20年以上介護していた義母の死、仕事上のトラブル、書けなくなるスランプなど、非常に厳しい状況の中で再び助けていただいたこと、大変感謝しております。
本当にありがとうございました。
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2017年03月09日
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