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2017年05月26日

水と油

久しぶりに大阪市西区江戸堀に訪れました。15年ぶりですか。
四谷橋筋を一つ奥に入ったところにある江戸堀は、少し古風なビルが立ち並ぶ静かな街。
かつて私が手作り製本を学んだ工房「書祭」があったところ。

今回は書籍の制作ソフト「InDesign(インデザイン)」の研修。
開業した当初から、10年近く「何がどこまでできれば仕事を受けられますか?」と質問したけれども、誰も本当のことを教えてくれなかったソフト。

ところが、最近あっさりと答えてくれた人がいて、「少人数制で、初心者にも丁寧に教えてくれますから、大丈夫ですよ」と自分の会社が研修に使っている学校を教えてくれました。

実は、InDesignを学ぶにはいくつかの壁がありました。

まず、この世界のOSの基準はMacintosh。
長い間、DTPソフトのほとんどがWindowsに未対応で、WindowsでWordやExcelを使っている人にとってはハードルが高い代物。

特に介護費用や医療費や税金の減免申請書で使われるのは、申請書のWordと添付資料のExcel。
どんなに美しく、内容が優れていてもInDesignで申請書を作った段階で「開くことのできないファイル」として「申請不可」になります。
減免は生活がかかった問題なので、WordやExcelをやめてInDesignに転向することができませんでした。

それに私は長い間義母の介護をしていました。
中途半端に学んで仕事を請けても、急変した時「できませんでした」では、たくさんの人に迷惑がかかる……
そうためらっていたところがあります。

ところが「北摂叢書」を立ち上げると、チラシやパンフレットを用意しないといけない。
でも、Wordで作ったデータを印刷すると、かなりイメージの違うものができてしまう。
やっぱりInDesignかもしれない。

……そう思いはじめた時、「InDesign?簡単ですよ。2日の研修でマスターできます」と聞いたので、行ってみることにしました。

江戸堀にあるDTP・WebデザインスクールDesi大阪校は、デザイン・印刷・映像分野の画像処理機器を扱う株式会社Tooが運営する老舗の研修施設。
ここで丸1日、2日間でInDesign基本を全部覚える厳しい講座らしい。

初日は基礎講座。
教室にはデザイン会社を思わせるモノトーンのインテリアに、座り心地のいい椅子。
大きな画面のパソコンが整然と並んでいます。

基礎講座の出席者は8人。私より若い女性ばかり。
印刷会社やWEB制作会社から研修にきた新人社員たちです。
同じAdobeの画像処理ソフトIllustratorを使える人が多く、InDesignは少し知ってる人もいて、WindowsユーザーよりMacユーザーの数が多い。
Word・Excelの世界から来た私には、非常に不利なところ。

授業が始まると、いきなりキーボード操作で大苦戦。
キーボードには左右に「Shift」キーがあって、普段は左の「Shift」キーを頻繁に使うのですが、InDesignでは右の「Shift」キーしか使わない。
テンキーで数字を打ち込み「Enter」を押しても数字が入力できない。
入力するだけでも苦しむとは思いませんでしたが、授業は進みます。

「ビジネスの世界ではWordやExcelといったソフトが使われていますが、InDesignは違います。……選択ツールとダイレクト選択ツールの切り替えについて、Windowsの方は「Ctrl+Tab」、Macの方は「Command+Control+Tab」を使ってください」

こんな感じでWindowsとMacで全然操作が違う。

InDesignは、最初にミリ単位の細かい枠をたくさん作って、そこに素材や文章を正確にはめ込んでいく。
まずは文章を書いて、あとで書式を調整するWordやExcelを使っている人には戸惑うことが多いのです。
まるで水と油。

それでも、一番後ろに陣取って、それぞれの理解度を瞬間的に見抜き、的確に指導していくインストラクターはすごい。
2日目は素材を集めて雑誌の記事を構成する課題。
その日は6人。
WindowsユーザーとMacユーザーが半々。

少しInDesignを使える人、Illustratorのヘビーユーザー、InDesignを触ったことすらない私。
普段使うソフトも習熟度も違うのに、インストラクターの指導で確実に課題をこなしていきます。

休憩時間に資料をまとめていると、イントラクターがきました。

「大変そうですね」
「ええ、やっぱりWindowsとMacは全然別の世界ですよ。人に勧められてきたんですが、何が「簡単ですよ。2日あれば大丈夫」ですか。こんなにしんどいとは思いませんでしたよ」
「ははは。騙されましたね。たぶん、それ、毎日バリバリに使ってる人じゃないんですか」
「ええ、騙されましたね」

そう言ってる間にも騙した本人から『実践講座は、なかなかハードですが、得るものは大きかったです。書籍作りにも大いに役に立つと思います』とメールが来る始末。
確かに役に立ってるのは認めるけど、なんだか悔しい。

「でも、これで自分で自在にチラシやパンフレットや冊子が作れるじゃないですか」
「そうなんです。Wordで作成しても、印刷では全然違って出来上がってきますからね」
「これからは好き放題できるんじゃないですか」

明るく言ってくれるけど。ついていくだけで必死だったんですよ。

「今日使った教材のデータを送ります。質問があれば答えるから、がんばってくださいね」

すぐに家のパソコンに講習で使った素材データが届いていました。
半年間で2回、無料講習が受けられるというので、とりあえず申し込み。

自分のチラシやパンフレットを作りながら、冊子や書籍に……
だいぶ時間がかかりそうだけど、がんばりましょう。

ラベル:DTP
posted by ゆか at 23:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 日常コラム | 更新情報をチェックする
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